専門薬剤師 vs 専門看護師

 TOPICS 2008.09.22 で、「看護職の役割拡大が安全と安心の医療を支える」 とした、日本学術会議の健康・生活科学委員会看護学分科会の提言を紹介しましたが、去年11月27日から開始されている「看護の質の向上と確保に関する懇談会」でも、具体的事例が示されています。

 この懇談会は、今後の医療の高度化や医療提供の場の多様化といった変化に対応するためには、チーム医療を担う一員として看護職員の賀の向上と確保、将来を見据えた改革が必要であるとして開催されたもので、「看護職員の確保」「新人看護職員の質の向上」「チーム医療の推進」「看護教育のあり方」などの具体的な課題の把握と基本的な方向性についての検討が行われています。

 この第3回懇談会では、坂本すが委員(東京医療保健大・医療保健学部看護学科学科長)がチーム医療の推進について、「救急外来における役割分担」「がん化学療法外来における役割分担」「緩和ケア病棟における役割分担」「lCUにおける役割分担」「外来における役割分担(糖尿病外来)」「助産外来における役割分担」の先進事例を挙げて、意見を述べているのですが、提出資料(資料3-1:PDF334KB)をみると、このチーム医療の中に病院薬剤師は登場していません。

 救急外来(取り組んでいる国もあったかと思いますが)や助産外来は別としても、他の事例では当然薬剤師が関わってもよいのではないのかと思うのですが、教育を受けた看護師であれば、「薬剤投与と予測」ということができ、またすぐにの対応が可能だとして、専門性を発揮できるとの考えのようです。

 看護師に関する検討会で示された意見であるということを割り引いたとしても、看護師には応急処置などの対応ができるという強みがあり、分野によっては看護師の出番が多いのかもしれません。そして看護師がもし薬の知識をここまで身につけたら、果たして病院薬剤師(専門薬剤師)との違いはどこにあるのだろうかと思いました。

 ちなみに、同懇談会の資料2-2(PDF820KB)によれば、2008年12月1日現在、304名の専門看護師(がん看護129人、小児看護27人、精神看護53人、地域看護9人、母性看護17人、老人看護14人、感染症看護1人、急性・重症患者看護26人、慢性疾患看護25人、家族支援看護3人)と、4458名の認定看護師(がん化学療法看護268人、がん性療病看護323人、感染管理769人、救急看護360人、手術看護116人、小児救急看護62人、新生児集中ケア113人、摂食・瞭下障害看護108人、透析看護74人、糖尿病看護175人、乳がん看護79人、訪問看護65人、緩和ケア573人、集中ケア421人、認知症看護61人、皮膚・排泄ケア818人、不妊症看護73人)が登録されていて、その数は年々増加しているそうです。

 日病薬が、各病院に対して現況調査を緊急で行った(TOPICS 2008.12.28)理由もわかるような気がします。専門看護師と専門薬剤師がどう役割分担しているのか、すべきなのか、病院薬剤師さんのコメントが聞ければと思っています。

関連情報:TOPICS
 2008.09.22 看護師による薬剤の処方は有用(日本学術会議提言)
 2008.09.17 専門薬剤師の必要性と今後の発展(日本学術会議提言)
 2008.09.08 処方権の獲得より、薬剤師の職能を全うすることが重要
 2008.12.28 「新しい業務」の展開には、まず現況調査が必要

資料:
 第1回看護の質の向上と確保に関する懇談会(2008年11月27日開催)
   厚労省資料 WAMNET資料
 第2回看護の質の向上と確保に関する検討会(2008年12月8日開催)
   厚労省資料 WAMNET資料
 第3回看護の質の向上と確保に関する検討会(2008年12月25日開催)
           WAMNET資料

参考:チーム医療と看護教育の在り方でヒアリング
 (Excite ニュース 12月25日 医療介護CBニュース配信)
  http://www.excite.co.jp/News/society/20081225/Cabrain_19861.html


2009年01月07日 01:45 投稿

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