各紙が報じているので既にご存知と思いますが、25日、患者ら計11人が、国とアストラゼネカ社に計1億450万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁で言い渡され、同社に患者と遺族計9人へ総額6050万円の支払いを命じた一方、国への請求は棄却しています。
薬害イレッサ弁護団HP(http://iressabengodan.com/)に裁判所が作成した判決要旨と企業の製造物責任と国の国家賠償責任について触れた第五分冊が公表されています。
大阪地裁判決要旨(薬害イレッサ弁護団)
http://iressabengodan.com/doc/000142.html
大阪地裁判決第五分冊(薬害イレッサ弁護団)
http://iressabengodan.com/doc/000141.html
第五分冊には、イレッサの認可と市販後の国や製薬会社の対応などの経緯が記されており、重篤な副作用の発見と迅速かつ適切な処置が行われるために薬剤師が何ができるかを考えるうえでも一読をおすすめします。
今回の判決について弁護団は、「抗がん剤の副作用についての注意喚起のあり方について、製薬企業の製造物責任法上の責任を明確に認めた点において、判決には大きな歴史的意義がある。他方、判決は国の法的な責任を否定したが、アストラゼネカ社の責任で判断された事実関係は、ほとんどそのまま国にも当てはまるのであり、国の責任を否定したことは極めて不当である。」などとした声明を発表しています。
薬害イレッサ訴訟大阪判決に対する原告・弁護団声明(2011年2月25日)
http://iressabengodan.com/topics/2011/000138.html
各紙とも社説や解説記事を掲載しており、考えさせられることが少なくありませんが、個人的には毎日新聞の解説記事と週刊ダイアモンドが掲載した記事(おそらく、ログインが必要になる)は薬学関係者に突きつけられた課題といえましょう。
クローズアップ2011:イレッサ大阪訴訟 薬害責任、割れた結論
(毎日新聞 2月26日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110226ddm003040147000c.html
“勝訴”したイレッサの副作用訴訟が突きつける薬事行政の課題
(週刊ダイアモンド Inside 2月26日)
http://diamond.jp/articles/-/11305
特に週刊ダイアモンドが厚労省関係者の話として伝えた、「副作用が重いか軽いかを分ける基準や、副作用が発生する確率を評価する基準が非常に曖昧。副作用情報をいかに伝えるか、といったことも含めて、理念や方法論を議論したことがない」という現状は事実であり、私たちが行っている副作用情報の伝え方も含めて改めて考えていく必要に迫られています。
抗がん剤の問題もそうですが、個人的には自己免疫疾患などで投与されている免疫抑制剤(特に皮膚科領域)の発がんリスクや易感染性、抗うつ剤による自殺リスクについて、処方時に患者さんにどの程度伝えられているかも気がかりです。
これらの処方を初めて処方せんの調剤を受けるときは必ず、患者さんに「薬について医師に詳しい説明を受けていますか」と尋ねますが、十分な説明を受けていない場合も少なくありません。患者向医薬品ガイドやくすりのしおりを活用するということも考えますが、やはりどの程度リスクとベネフィットについて医師から患者さんに伝えられているかがわからないと、ただポンと渡して、参考にしてくださいというわけにもいきません。
製薬会社の情報伝達は一昔と比べれば格段に早くなりました。もし、こういった分野での訴訟が起きた時、医師だけではなく説明義務を果たさなかったという理由で薬剤師が罪を問われないかが頭をよぎります。
関連ブログ:イレッサ判決に関わる社説 ;自ら夢の新薬として煽った反省なし!
(内科開業医のお勉強日記2月26日)
http://intmed.exblog.jp/12182869/
関連情報:TOPICS
2011.01.29 イレッサ訴訟を考える
2011.02.24 医学会イレッサ声明文、国が声明文案を提供
参考:
47News 2月25日(共同通信配信)
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022501000524.html
しんぶん赤旗2月25日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2011-02-26/2011022601_01_1.html
2011年02月26日 12:49 投稿