IT活用、まずは電子版「お薬手帳」と「糖尿病連携手帳」を

 TOPICS 2010.05.11TOPICS 2010.09.15 で、おくすり手帳の電子化について政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)で議論が行われているという記事を掲載しましたが、28日開催された医療情報化に関するタスクフォースの第8回会合で事務局から、どこでもMY病院のサービスとして、「電子版お薬手帳」のスタートしてはどうかとの提案が事務当局から示されています。

第8回高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
医療情報化に関するタスクフォース(2011年2月28日開催)
資料:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryoujyouhou/dai8/gijisidai.html

資料5:「どこでもMY病院」構想の具体的なイメージ
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryoujyouhou/dai8/siryou5.pdf

 会合の様子はほとんど報じられていないので、資料を見て想像するしかないのですが、医療機関に対するメリットがはっきりとしている調剤情報をベースとした電子版「お薬手帳」を2013年をめどに、また、検査データ、健診データ、健康データを用いた個人参加型疾病管理のサービスとして、「糖尿病連携手帳」を2014年めどにスタートすることが提案されています。(下記図は上記資料5より引用)


 上記のように、電子版「お薬手帳/カード」のイメージとしては、

  • 患者が服用している薬の内容を過去に処方された薬を含めて把握することで、重複投与の防止やアレルギーへの注意喚起などの医療安全の向上に資する
  • 患者が自分が受診した診療について日時、医療機関名等を把握することで、問診時の参考とすることができる

など、必要時に参考となる医療情報が提示できるとしています。

 一方、電子版「糖尿病連携手帳/カード」については、

  • 患者が、体重,血圧などを記録することで、医師は診療時に検査したデータだけではわからない患者の情報も診療に役立てることができる
  • 患者が記録した健康情報と診療時の検査情報がまとめて管理されていることで、病診連携など地域連携医療へ役立てることができる
  • 地域において、未受診の慢性疾患患者(例えば糖尿病患者)の掘り起しのためのツールとして役立てることができる

として、個人参加型疾病管理への活用が期待されています。



 この2つが実現するだけで、私たちの仕事は大きく変わることになりますが、ICカードにするか2次元バーコードなどを活用するか、またソフト改修などの費用の問題など、まださらに議論は必要のようです。果たして、構想通りにうまく実現するでしょうか?

 なお、第8回のタスクフォースでは、これまでの議論を踏まえたタスクフォースとしての報告書骨子案が示され、これまでの議論の概要を知ることできます。

資料9: 医療情報化に関するタスクフォース報告書骨子案
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryoujyouhou/dai8/siryou9.pdf

資料:医療情報化に関するタスクフォース
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryoujyouhou/

関連情報:TOPICS
 2010.09.15 第1回医療情報化に関するタスクフォース
 2010.05.11 2013年にもおくすり手帳は電子化される?
 2010.08.05 「地域医療連携体制の構築と評価に関する研究事業」報告書
 2010.10.20 糖尿病診断アクセス革命~地域薬局でHbA1c測定

3月2日 13:50 画像追加


2011年03月02日 12:11 投稿

コメントが4つあります

  1. いばらき診療所みと

    地域医療にとって、大切なシステムになると考えられます。あくまでも薬の情報ですから、薬剤師がアイデンティティを持ってやっていく事が重要なのではないでしょうか。

  2. いばらき診療所みと

    先ほどのコメントの趣旨は、地域の薬剤師さん達が主導的にシステムを作り上げていけば、地域医療にとってこれほどありがたいことはないという意味です。我々の地域の薬剤師さん達は、非常に熱心に服薬指導や薬剤管理指導を行っていただいており、大変助かっています。「餅は餅屋」ではないですが、やはり薬の情報は、薬剤師さんが主導的に管理していただけると、医師も患者も安心します。

  3. アポネット 小嶋

    応援のメッセージありがとうございます。

    私は、医療におけるIT活用はこの5年で大きく前進すると確信しています。

    ただ、上記のようなイメージが現実となるにはかなりハードルがあるようにも思います。

    このタスクホースの資料などを見ても、もしかすると薬剤師はこういったイメージから取り残されるのではないかと思うこともあります。

    私たち薬剤師は何ができるのか、どのような役割を果たすことができるのか、他の医療専門職や生活者・患者の方々と共に共通の認識を持てるよう、私たちはもっと試行と実践、そして社会へのアピールを重ねていくしかないのかもしれません。

  4. いばらき診療所みと

    地域連携医療の中心を薬剤師が担うシステムは、極めて現実的で、実現可能だと思います。今後こういった医療情報のIT化分野で、薬剤師の存在感が増すといいですね。