後発医薬品推進は、院内処方に後戻りさせないか?

 すでに業界紙では伝えられていますが、新潟県の厚生連三条総合病院では、今年の4月から院外処方から院内処方に戻す動きがあるそうです。31日の地元紙の新潟日報(http://www.niigata-nippo.co.jp/)もこれを伝えています。

三条の病院で院内処方復活検討(新潟日報1月31日)
 http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=156995

 記事によれば、厚生連から直接話を聞いたわけではありませんが、収入増や患者の自己負担軽減を理由に挙げているそうで、他の病院(全国の厚生連の病院か?)に広げる意向もあるとしています。

 表向きは“患者さんの自己負担の軽減”や“利便性”なのでしょうが、DPCや後発医薬品の使用促進とスケールメリットで十分薬価差益が見込めるという計算が働いたことは容易に想像できます。

 海外のように、外来は原則医薬分業(院外処方せん発行)にしないと、これに追従する病院が続出するような気がしてなりません。同様の懸念を持つのは私だけではないようです。

関連ブログ;
医薬分業は後戻りするか(2)
(何かをすれば何かは変わる 2009年1月31日)
http://blog.goo.ne.jp/suke03_tam24/e/2db744c69de53882d65d75c37717cc72

マルゼン薬局-社長のブログ(2009年1月21日)
http://www.e938.com/blog/blog/shachonoblog_files/
418d2617ac4d9d5398769d0a28fe906e-50.html


2009年02月03日 00:48 投稿

コメントが3つあります

  1. 今回のようなケースは、明らかに政治の失策によるものです。

    新潟日報の記事にもあるようにこれまでの医薬分業の進展は、院内処方より院外の方が収入が多くなるよう政策誘導を行ったからですが、これはそもそも患者側の負担はさておき、病院側の経済的な利益を優先したものです。
    院内処方にかかる保険点数が、薬品在庫スペースや投薬を行うスタッフの人件費等にかかる費用であるとすれば(これは本来医師自らが行うはずですが)、処方箋の発行料はそもそも大幅に減額されるべきです。
    医師側に利益を供与しないと制度は動かず、義務とすれば大きな反発を買う。そんな思惑が透けるような分業ですが、歪んだ政策からは歪んだ情勢が生まれているように思います。
    医薬分業が高くつくというならば、改善すべきは処方箋の発行料ではないでしょうか。

    医師の恣意性によって院内・院外が決まり、薬剤師の権限がなくゾロ新の多い日本の医療では下請け的なマンツーマン分業が一般的で、いまだに医師の機嫌を損ねて処方箋を止められたとか、門前
    医師の処方批判は御法度などという話を聞きます。

    もはや医師にあらねば人にあらずといった雰囲気ですが、何より我々が忘れてはならないのは、すべての医療行為の対象は患者であるということです。
    他国と比べると、日本では多剤の併用が一般的であるのにも関わらず副作用事例の収集・分析などでは力不足と言わざるをえず、医療情報は製薬会社の提供するものに偏っています。
    医師に都合のよい制度を作るあまり、薬剤師が機能せず十分に分業のメリットが出ていないように思います。

  2. アポネット 小嶋

    コメントありがとうございます。

    日経DIの2月号の記事でこのことが取り上げられていますね。

    やはり薬価差益によるメリットが大きいようです。また、他の厚生連の病院にも広がる動きがあるようですね。

    ただその一方で、病棟での服薬指導を切り捨てたり、丁寧な服薬指導ができないとしても、最低限の薬剤師数で外来調剤をこなすことで、病院の経営改善をしなければという現実もあるようです。言葉は悪いですが、病院にとっての薬剤師は単なる調剤マシーンくらいにしか思っていないのかもしれませんね。

    「便利」で「安い」となれば、患者さんが院内処方を選択するのは当然の流れです。院内処方でもらっても、まず、院外処方でもらっても払う金額(一部負担金)は同じにする仕組みが必要ではないかと思います。そういった意味で、院外処方せん料の引き下げは必要かと思います。

    また、院内調剤をする医療機関については、服薬指導はもちろんのこと、おくすり手帳の交付や他院処方薬やOTCなどとの相互作用のチェックを義務づけるなど、保険薬局並みの業務を義務づけるべきではないでしょうか? 

    このままでは、昔の病院薬剤師に戻ってしまうことになりかねず、病院薬剤師としての職能が発揮できないままとなってしまうのではないでしょうか。

  3. アポネット 小嶋

    4月22日の衆院厚生労働委員会で、高鳥修一氏(自民・比例北陸信越ブロック)がこの問題を取り上げています。舛添厚労相は「医薬分業のプラスの面を考えると、薬価差益を得るためだけに院内処方をやることは果たしていいことなのか。本末転倒だと思う」と答弁しています。

    舛添厚労相、薬価差目的の院内処方は本末転倒
     (日刊薬業フリーサイト 2009年4月22日)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551207535.html?pageKind=outline

    衆議院TV厚生労働委員会4月22日(全31分中、27分頃からです)
    http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=39769&media_type=