くすりについての相談というと、薬局や医療機関などの現場や健康まつりといったイベントなどで行うことを想像しがちですが、患者さんやその家族(医療消費者)が直接製薬企業のくすり相談窓口を利用することも少なくないようです。
製薬協(http://www.jpma.or.jp/)では毎年、くすり相談対応検討会が企業で行うくすり相談窓口のあり方について、シンポジウムを行い、あるべき姿について検討を行っていますが、製薬協の News Letter No.130 には、今年1月に開催されたシンポジウムの様子が紹介されています。
「消費者くすり相談のあり方に関するシンポジウム」開催される
(JPMA News Letter No.130 p16-18)
http://www.jpma-newsletter.net/PDF/2009_130_07.pdf
このシンポジウムでは、同検討会の情報提供のあり方小委員会が、患者満足度向上の観点から2008年1月に行った調査の集計・分析結果が報告されています。
それによれば、企業のくすり相談窓口を利用した医療消費者のうち、「事前に医師、薬剤師等に相談した」割合は約半数で、その相談動機として、「さらに詳しく情報入手したい」、「医師、薬剤師の説明が不満足」などを理由をあげた人が多かったそうです。
また 「事前に相談をしていない」で相談窓口を利用した医療消費者では、「まず先に企業に聞こうと思った」、「医師や薬剤師には聞きにくい」、「くすりのことは企業の方が詳しいと思った」などを理由に挙げる人が多かったそうです。
つまりこのことは、私たち薬剤師など現場で行われているくすり相談には、医療消費者が満足していないということを示しており、医療消費者がどのような情報を求めているのかについて、医療消費者・製薬企業と共に私たちが考えることを求められているといえます。
また、上記レポートをみると、くすり相談窓口におけるメール利用のメリット・デメリット、医療消費者への医療用医薬品情報の提供可能な範囲と添付文書内情報との関連に対する考え方、承認外事項に関する質問への対応など興味ある事項についてのやりとりもあったようです。詳しい議事録があれば、目を通してみたいものです。
過去に行われたシンポジウムの記録と併せてみると、企業・薬剤師会などの薬事情報センター・薬局などの現場それぞれのくすり相談の役割は異なり、それぞれの役割分担・連携について、今後検討する必要性を感じさせられました。
シンポジウム「くすり相談窓口のよりよい連携を求めて」開催される
(JPMA News Letter No.112 p22-23)
http://www.jpma-newsletter.net/PDF/2006_112_10.pdf
シンポジウム「くすり相談窓口のよりよい連携を求めて」開催される
(JPMA News Letter No.118 p14-15)
http://www.jpma-newsletter.net/PDF/2007_118_07.pdf
シンポジウム「今後のくすり相談窓口のあり方を考える」開催される
(JPMA News Letter No.125 p14-16)
http://www.jpma-newsletter.net/PDF/2008_125_06.pdf
関連リンク:メーカーのお薬相談室も大変ですねー
(旭川の薬剤師道場(ブログ) 2009年3月5日)
http://chuopharm.dtiblog.com/blog-entry-253.html
3月5日 14:40リンク追加
2009年03月04日 01:49 投稿
いつも、興味深い情報ありがとうございます。勉強させていただいています。2008年1月に行った調査の集計・分析結果に対する児島さんのご意見に対してですが、企業の相談窓口を利用する方々は、そもそも医療機関で満足が得られなかった患者さんが多く存在するはずで、「私たち薬剤師など現場で行われているくすり相談には、医療消費者が満足していないということを示しており…」という患者さん全般を指すような解釈に至るのは、少々いつものこのサイトのサイエンティフィックな記事の内容と異なるような気がします。不満を抱く患者さんもいらっしゃることは事実だと思いますが、これまで見たその他のアンケート結果とも異なるような気がします。「医療消費者・製薬企業と共に私たちが考えること」が求められているかどうかは分かりませんが、そういう場は必要かもしれませんね。こういったシンポジウムがあることその興味深い内容を教えてくださり、ありがとうございました。今後とも、有用な情報を教えてください。
旭川の薬剤師道場
http://chuopharm.dtiblog.com
ご指摘ありがとうございます。いつもサイトを拝見させて頂いています。
私も、このようなシンポジウムが毎年開かれていたとは知らなかったことから、今回過去の記事もさかのぼって紹介させて頂きました。
情報提供のあり方小委員会が具体的にどのように調査したかがわからなかったので、今回の記事は少し推察の部分があったかもしれません。皆さんがそれぞれに解釈して頂ければと思います。
ただ言えることは、私たちが日頃提供している医薬品情報に対して、患者さんの中には不満をもっている人たちが少なくないという現実です。
くすりのプラスの面、マイナスの面を患者さんにわかりやすく伝えられるのは、やはり患者さんのことをよりよく知っている現場の医師や薬剤師である思うのですが、そこを飛び越えて、医療消費者の一部(調査では半分となっていますが、実際はどうなのでしょう?)は直接企業のくすり相談窓口を利用されているのです。やはりくすりや医療への不信や不満がまだあるということなのでしょう。
とりわけ副作用に関する情報については、医師の治療方針に影響が出ない範囲の提供になりがちではないでしょうか。かといって、全ての薬剤について「くすりのしおり」や「患者向医薬品ガイド」を渡すというのも現実的ではありません。
個人的には日薬なり病薬なりで、それぞれの薬剤について、どこまで副作用情報を伝えるかといったガイドラインを作ってもいいのではないかと思っています。
それと、開局ではどうしても弱いのですが、日本では未承認の海外の新薬についての情報を、現場の薬剤師はもっとアンテナをはっておくべきではないかと考えています。(本サイトでも関連ページがあるのですが、最近は更新しておらずすみません)
患者さんの中には従来の治療法ではうまくいかず、新薬や新しい治療法(適応外の使用)に期待する人もいます。そういった人がインターネットや一部のメディアの情報に惑わされないように、アドバイスをするのが現場の薬剤師の役割だと考えるのですが、いかがでしょうか?(自分は無理ですが・・・)
「調査では半分」というのは、相談窓口を利用した人数が分母ですよね?
児島さんがおっしゃるような「現場の医師や薬剤師」に対して日常的に薬に関して直接質問する回数や、医療機関への直接の電話相談ををプラスして分母にして考えられた文章なのか伺いたかったのです。「そこを飛び越えて、医療消費者の一部…」以降の文章は、本来なら後者を分母にしたときに見えてくる文章かと思いまして…(~_~;) 私がデータを誤解していたら、申し訳ありません。
我々の対応に問題があるときは、その一部がメーカー等の相談窓口に流れていっていることについて、おかげで、この記事から数値データとして知ることができました。
ありがとうございます
旭川の薬剤師道場
http://chuopharm.dtiblog.com