チアゾリジン系糖尿病治療薬というと、副作用として浮腫が有名ですが、その発症のメカニズムはこれまではっきりとしていませんでした。6日東京大学は、同大学の研究チームがこのメカニズムを同定したと発表しています。
経口糖尿病薬の副作用による浮腫発症のメカニズムを同定
(東大病院プレスリリース 2011年5月6日)
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20110504.html
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20110504.pdf
チアゾリジン誘導体による浮腫発症のメカニズムは、腎臓の遠位尿細管ナトリウム輸送体遺伝子の発現が増加することが原因の一つと考えられてきましたが、研究チームではPPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ)に結合したチアゾリジン誘導体が、近位尿細管で遺伝子転写の調節を介さずに速やかに腎臓のナトリウム再吸収を亢進させることにより発現するとしています。
Thiazolidinediones Enhance Sodium-Coupled Bicarbonate Absorption from Renal Proximal Tubules via PPAR-Dependent Nongenomic Signaling
(Cell Metabolism 13(5), 550-561)
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(11)00137-9
研究者らは、チアゾリジン誘導体が遠位尿細管だけでなく近位尿細管のナトリウム輸送を亢進させることが明らかになったとして、より慎重な浮腫の早期対策が必要であるとする一方、PPARγが遺伝子転写調節を介さないシグナルを伝達することが明らかになったことで、浮腫を起こさない新しい糖尿病薬の開発につながることが期待されるとしています。
2011年05月06日 13:58 投稿