TOPICS 2009.05.28 で紹介しましたが、米FDAは6月29日・30日の2日にわたって、35人の専門家を集めて、アセトアミノフェンの安全対策に関する諮問委員会を開催しました。(諮問委員会のスケジュール→PDF)
30日には、FDAの提案した安全対策案(Options Paper and Memo→PDF・21ページ)に基づき9つの項目についての評決を行い、諮問委員会としての勧告をまとめました。(左側の数値が使用について支持。右側の数字が不支持)
勧告事項 | 評決結果 |
---|---|
OTC製品は1日量の上限を4000mgとする | 21-16 |
OTC製品は1回量を650mgまでとする | 24-13 |
OTC製品の用量を引き下げにあわせて、現在の1回あたりの最大用量(500mg錠×2)は処方せん医薬品に分類変更する | 26-11 |
パッケージのサイズを制限する | 17-20 |
他の成分を配合したOTC製品はやめる | 13-24 |
液体製品の含有濃度は一つだけにする | 36-1 |
他の成分を配合した処方せん製品はやめる | 20-17 |
他の成分を配合した処方せん製品の販売を継続するならば、“unit-of-use”のパッケージにする | 27-10 |
他の成分を配合した処方せん製品には、 box warning が必要である | 36-1 |
評決の詳しい結果は、下記ページに掲載されています。
Questions and Vote Results for the June 29-30, 2009 Joint Meeting of the Drug Safety and Risk Management Advisory Committee with the Anesthetic and Life Support Drugs Advisory Committee and the Nonprescription Drugs Advisory Committee (PDF – 747KB)(FDA Committees & Meeting Materials)
今回最も注目されたのは、トラマドール塩酸塩との合剤「Urtracet」と、ヒドロコドンとの合剤「Vicodin」の事実上の販売禁止を求めた、アセトアミノフェンと他剤との配合剤禁止(処方薬のみ)の勧告です。米国では、この2剤はいずれもオピオイドを含むことからかねてより濫用が問題となっており、このことがアセトアミノフェンによる肝不全を招いているとの指摘がありました。(Vicodinからアセトアミノフェンが抜けると、管理が厳しくなるという問題もある)
一方、OTCの配合剤については、危険性が少ないとして、またパックサイズの制限についても肝不全の発症にはあまり影響せず、また貧困層や田舎に住んでいる人に不自由を招くとして反対意見が多数を占めました。
ただABC記事によれば、対策が不十分だとして、OTC製品についても“unit-of-use”の導入やパッケージサイズ制限も考慮すべきとした肝臓の専門家の話も伝えています。(米国では325錠入りのタイレノール、1000錠入りのディスカウント品も販売されているそうです。専門家は1000錠1瓶で25人を十分殺せると批判しています。)
なおFDAでは、この諮問委員会に合わせて、下記の様な資料をBriefing Information (→リンク)のページに掲載しています。
- 討議事項(Options Paper and Memo)→PDF・21ページ
- FDAの作業部会がまとめたレポート(Working Group Report)→PDF・249ページ
- 英国のパックサイズの制限に関するstudyについてまとめた追加資料(Addendum)→PDF・15ページ
- 40年にわたり、アセトアミノフェンの研究を行っている Rocky Mountain Poison and Drug Center がまとめたレポート→PDF(13ページ)
- 業界団体(CHPA:Consumer Healthcare Products Association)の見解や取り組みをまとめたもの→PDF(46ページ)
- tramadol 塩酸塩とアセトアミノフェンの合剤「ULTRACET」を販売するJohnson & Johnson社の発表資料→PDF(29ページ)
- Tylenol ブランドを販売するMcNeil Consumer Health Care社の発表資料→PDF(249ページ)
今回の評決について、業界団体のCHPAは「アセトアミノフェン過量服用と関連がある有害事象は処方薬によるものが大部分であり、成人が通常に使用する場合には安全である。(用量の引き下げには不満) 私たちは、過量服用防止のために、ラベルの変更とともに教育による介入が適切だと考えている。」としたステートメントを発表すると共に、適正使用のための包括的な教育プログラムの開発を行っていることを明らかにしています。
Statement from the Consumer Healthcare Products Association on Today’s Joint FDA Advisory Committee Recommendations on Over-the-Counter Medicines Containing Acetaminophen
(CHPA 2009.6.30)
http://www.chpa-info.org/06_30_09_acetaminophen.aspx
日本では米国と比べ、用量は少ないですが、総合感冒薬がかなり使用されている現状を考えると、うっかり他のアセトアミノフェン配合の痛み止めと同時に使ってしまうという可能性がないわけではありません。
「長く使われているからといって、安全であるとは限らない」という姿勢で、さまざまな角度から分析をおこなった米FDAやOTCメーカーのとりくみには、日本も学ぶ必要がありそうです。
関連情報:TOPICS
2009.05.28 アセトアミノフェンの安全対策(肝障害)が示される(米国)
2009.04.29 OTC解熱鎮痛剤に潜在的リスクの明示を求める(米国)
2005.12.04 アセトアミノフェンと肝不全(米国研究)
参考:
FDA Panel Urges Cuts in Acetaminophen Dosage
(ABC NEWS 2009.630)
http://abcnews.go.com/Health/PainManagement/story?id=7965902
FDA Panel Backs ‘Black Box’ Warning for Acetaminophen Prescription Combos
(Medpage TODAY 2009.6.30)
http://www.medpagetoday.com/Washington-Watch/Washington-Watch/14922
FDA Panel Urges Ban on Vicodin, Percocet
(Health Day 2009.6.30)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=628586
Panel Recommends Ban on 2 Popular Painkillers
(New York Times 2009.6.30)
http://www.nytimes.com/2009/07/01/health/01fda.html?hp
Experts urge stronger limits for some pain drugs
(Reuter 2009.6.30)
http://www.reuters.com/article/domesticNews/idUSTRE55S62120090630
7月1日 19:30、3日 16:20更新
2009年07月01日 13:29 投稿