仏・独の処方一時停止(アナウンスを見るとフランスは停止、ドイツは新規処方の停止勧告になっている)を受け、米FDAがピオグリタゾン(アクトス他)についてのコメントを出しています。
FDA Drug Safety Communication:
Update to ongoing safety review of Actos (pioglitazone) and increased risk of bladder cancer
(Drug Safety and Availability 2011.06.15)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm259150.htm
内容的には、2010年9月におけるFDAとしての見解(TOPICS 2010.09.18)を改めて示し、膀胱がんの発症リスクについてのレビューは現在も進行中であること、今回のフランスでのコホート研究の結果(→ コホート研究 →スライド(特に14ページから))を詳しく紹介(日本ではここまでしていない)したうえで、次のような勧告を行っています。
- 進行膀胱がんの患者には使用しないこと
- 膀胱がんの既往歴がある患者には慎重に使用し、ピオグリタゾンによる血糖コントロールのベネフィットは、がん再発リスクと比較して考慮されるべきである
- 患者にピオグリタゾンについての Medication Guide を読むよう勧めなさい
今のところ、膀胱がん患者または既往歴に対してのアナウンスに留まっていますが、一方で、一般向け(患者向け)には次のようにもアナウンスしています。
- ピオグリタゾンを服用した場合、膀胱癌になる可能性が高まるかもしれません。
(There may be an increased chance of having bladder cancer when you take pioglitazone.) - ピオグリタゾンがどのようなものであるかについては、Medication Guideをよく読んで下さい。Medication Guide には関連するリスクについての説明があります。
(Read the Medication Guide you get along with your pioglitazone medicine. It explains the risks associated with the use of pioglitazone.) - ピオグリタゾンついての質問または心配があるならば、あなたの医療専門職に相談しなさい。
(Talk to your healthcare professional if you have questions or concerns about pioglitazone medicines.)
となっており、患者・医師は潜在的なリスクをよく考えてこの薬を使って下さいとも読み取れます。
Medication Guide といえば、日本でいう「患者向医薬品ガイド」に相当します。
アクトス錠の患者向医薬品ガイド(PMDA)
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/400256_3969007F1024_1_23G.pdf
ちなみに、米国 MEDICATION GUIDE は下記の通りです。
MEDICATION GUIDE Actos
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM183833.pdf
ご存じのように、患者向医薬品ガイド(→Keywords)は日本でも最近の新薬や警告欄がある医薬品のほとんどで作成されていますが、あまり活用されていないように思われます。(抗がん剤や免疫抑制剤など、実際には見せづらい内容もあり、ストレートに渡すことは処方医からクレームがきそうですが)
厚労省やPMDAは、メーカーからの情報を単に伝えて、「今やっています」「今はじめました」というだけではなく、どこにいけば最新の関連情報が入手できるかということを明示し、医師や患者さんが使用することのリスクとベネフィットについて自分自身できちんと考えられる機会を与える必要があるのではないでしょうか?
何か一連の原発報道を彷彿させますね。
それと、掲示板をなどを見ていると、アバンディアの撤退によってアクトスの独壇場になっている、海外による武田バッシングと考えている人が一部の医師の間にはいるようで、これには驚きですね。
関連ブログ:
FDA安全性ステートメント :アクトスの膀胱癌との関連リスク
(内科開業医のお勉強日記6月16日)
http://intmed.exblog.jp/12894602/
関連記事:
朝日新聞6月16日(ロイター配信)
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201106160043.html
FDA Warns of Bladder Cancer Risk With Actos
(Medpage TODAY 2011.06.15 要登録)
http://www.medpagetoday.com/PrimaryCare/Diabetes/27091
関連情報:TOPICS
2010.06.11 仏ピオグリタゾン製剤の使用制限についての国内コメント
2010.06.10 仏当局、ピオグリタゾン製剤の一時使用停止を発表
2011.04.30 ピオグリタゾンの膀胱がんリスクへの懸念(フランス)
2010.09.18 ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスク(米FDA)
6月16日 11:40リンク追加
2011年06月16日 10:44 投稿
米国販社からはFDAの発表に対するコメントが出ています。
Takeda Responds to U.S. Food and Drug Administration Update to Safety Review of ACTOS (pioglitazone HCl)
(Takeda Pharmaceuticals North America 2011.6.15)
http://www.tpna.com/newsroom/press_release_detail.aspx?year=2011&id=202
2002から疫学調査を実施中で、FDAやEMAにデータを提供していることや2012年には結果を公表できるなどとしています。
15日の米FDAのコメント発表に伴い10日掲載のPMDAの情報が更新されています。
ピオグリタゾン塩酸塩製剤のフランス等における使用制限について
(PMDA 2011.06.16 Update)
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_3.pdf
製造販売業者である武田薬品工業(株)から、以下のお知らせ文書が配布されたとのことです。
医療従事者向け
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_3_mfda.pdf
―——————————————————————————————–
平成23年6月15日に米国食品医薬品庁FDAは、KPNC疫学研究の中間成績(5年時点)等に基づき、米国においてピオグリタゾンの1年以上の投与が膀胱癌のリスクを高める可能性について、医療関係者、患者さんに対する注意喚起(別紙参照)を含む声明を発表しました。
この声明の中では、「現在、治療中の膀胱癌患者には、ピオグリタゾンを使用しないこと。」等の注意喚起について、医療関係者向けの添付文書の項を改訂予定であること、さらに、患者さん向けの説明文書も改訂予定であることも発表しています。
また、FDAは、KPNC疫学研究の評価を今後も継続し、フランスの疫学研究*2の結果の評価も進めていき、さらなる情報が得られれば、医療関係者、患者さんに対して追加の情報提供を行うとしています。
なお、弊社では、アメリカ、フランス等の行政当局によるピオグリタゾン製剤に対する措置や、KPNC疫学研究の結果等を踏まえ、現在、厚生労働省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構と国内における対策(添付文書への追記等)について協議し、検討を進めていますので、決まり次第ご案内申しあげます。
患者向け
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_3_pfda.pdf
—————————————————————————————————-
患者様に服用いただいております糖尿病治療薬「アクトス」、「メタクト」、「ソニアス」に含まれる成分(ピオグリタゾン塩酸塩)につきまして、このたび、米国食品医薬品庁FDAは、患者様向けの注意喚起を下記のとおり発表いたしました。
現在、弊社においてもこれらの薬と膀胱癌との関連性について検討しており、日本国内における注意喚起につき規制当局と検討しています。
つきましては、今後の治療方針に関しては、主治医の先生とご相談いただき、くれぐれもご自身の判断で薬の使用を中止しないようお願い申しあげます。
<米国における患者さんへの注意喚起>
・ピオグリタゾンを服用する場合には膀胱癌になる可能性が上昇するかもしれない。
・膀胱癌の治療を受けている場合は、ピオグリタゾンは服用すべきではない。
・膀胱癌を疑わせる症状(尿が赤くなった場合、急な尿意や排尿痛、背部痛あるいは下腹部痛)がみられた場合は速やかに医師に連絡すること。
・ピオグリタゾンによる治療に関して質問や不安がある場合は、医療関係者に連絡すること。等
23日開催の医薬品等安全対策部会安全対策調査会で議題となっています。
平成23年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の開催について
(厚労省2011年6月21日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001eq90.html
1.ニフェジピン製剤の使用上の注意の改訂について
2.ラベタロール塩酸塩製剤の使用上の注意の改訂について
3.ニカルジピン塩酸塩製剤の使用上の注意の改訂について
4.イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について
5.ピオグリタゾン塩酸塩製剤の安全対策について
個人的には、1~4 も気になりますが。