日本でもOTC鼻炎薬の成分として広く配合されているプソイドエフェドリン(PSE),またエフェドリン(EPH)はメタンフェタミンの密造の温床になるとして各国で厳しい規制が行われていることは,本サイトでも度々紹介していますが,英国医薬品庁(MHRA)は29日,これら成分が含まれるOTCの販売状況をまとめた『PUBLIC ASSESSMENT REPORT』を公表し,さらなる販売規制は行わないと発表しました。
Tighter controls on cold and flu remedies help fight against Class A drugs(Mhra Press Release 2009.7.29)
Pseudoephedrine and ephedrine: Controlling the risk of misuse of medicines(MHRA 2009.7.30 Update)
英国では2007年に行われた public Cosultaion (TOPICS 2007.03.08)後,2008年4月よりPSE720mg,EPH180mgを超えない製品については薬局用医薬品(P)としての販売を認める一方,適正な販売が行われなかった場合には2009年7月からこれら成分を処方せん医薬品に再分類するという方針を打ち出していました。
公表された PUBLIC ASSESSMENT REPORT によれば,この間,英国王立薬剤師会,全国薬局協会などの職能団体による自主的な対応が行われていると判断し,今回の発表となったようです。関係団体からは歓迎の声も示されています。
Controlling the risk of misuse of medicines containing pseudoephedrine and ephedrine (MHRA PUBLIC ASSESSMENT REPORT PDF:151KB)
上記 PUBLIC ASSESSMENT REPORT には,下記のような各国の最近の取り組み(p9-10)も紹介されています。
チェコ | PSEについて,新たな販売に関するカテゴリーを設けて,下記のような販売規制を行う。また,全てのPSE配合品について,処方せん医薬品について再分類することを政府が検討中である。とともに, 1.一人に対し,一週間について最大PSE720mgが配合された一製品に制限する 2.一人に対し,1ヶ月につきPSE1800mgまでに制限する 3.一週間につき,同一の人にPSE配合品を販売しないよう中央レジで管理する 4.インターネットなどの通信販売を禁止する |
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フランス | 2008年4月の International Narcotics Control Board の勧告に従い,PSE,EPH配合品について,直接手にとれない場所に置くなどの予防策が講じられている |
スウェーデン フィンランド ノルウェー |
PSE,EPHは処方せん医薬品に分類 |
豪州 | PSEについて,要薬剤師薬(Schedule pharmacist only)に分類,一製品あたりPSE720mgを超えるものについては処方せん医薬品に分類。 販売にあたっては,写真付きの身分証明で本人確認を行うと共に,リアルタイムオンラインデータベースを使用して,はしご購入ができないようにする |
米国 | PSE製品はカウンターの後ろの場所か鍵のかかる場所で保管する 購入者の身分確認をする 卸は販売記録を保持する 一回の販売は1.8g1パックまでとし,一日3.6g,一ヶ月9gまでとする 現在政府では薬局のみの販売に制限することを検討している オレゴン州ではPSE,EPHは処方せん薬に指定されている |
国際的には政府による規制の勧告も示されているようですが,日本では濫用や悪用への対策は行われているのでしょうか?
Recommendations to Governments, the United Nations and other relevant international and regional organizations
(Report of the International Narcotics Control Board for 2008)
http://www.incb.org/pdf/annual-report/2008/en/AR2008_Chapter_IV.pdf
関連情報:TOPICS
2007.03.08 英国、プソイドエフェドリンの販売規制を検討
2005.12.12 プソイドエフェドリン配合剤、全米で販売規制へ
2005.11.03 カナダ州政府がプソイドエフェドエリンの販売を規制
参考:No further restrictions on pseudoephedrine drugs
(The Pharmaceutical Journal 2009;283:117 一定期間すぎるとログイン必要)
http://www.pjonline.com/news/no_further_restrictions_on_pseudoephedrine_drugs
2009年07月30日 15:16 投稿