月刊薬事に本会の紹介記事が掲載されました

 7月に行われた第100回の記念講演会にあわせて,日経DI,PharmaNext4月号に続き,じほう社のメイン雑誌の月刊薬事から取材を受けました。月刊薬事9月号のフロントページで,私と本会世話人の小暮先生のインタビュー記事が掲載されています。

月刊薬事2009年9月号(VOL.51 No.9)
 http://www.jiho.co.jp/shop/goods/goods.asp?goods=93408
  (商品紹介ページで,今のところ記事を読むことができます。書籍も買って下さいね)

 記事にあるように,本会は開局・病薬・卸など現場で働く薬剤師が,それぞれの立場の垣根を越え,交流をする集まりにしたいと考え始め,参加者の皆さんの熱意に支えられ,第1回の開催から15年が経過しました。この場を借りて,参加して頂いている皆さんに感謝をいたします。

 実は,10周年を迎えた時期に何かの機会で発表しようと思い,その当時の思いを原稿として残してありました。ちょっと恥ずかしいですが,紹介します。

アポネットR研究会10年を振り返る 2005.1.30

 アポネットRとは、両毛アポテーカーネットワークの略です。アポという名前から、当時私の知人などは「脳卒中の勉強会かい」という人もいましたが、本会は、当時FIPやWHOで提唱され、世界の薬剤師の共通の言葉となったファーマシューティカル・ケアという概念を、日本でもいかに実現させるかという目的で始めた会です。

 10年前の、平成6年(1994)年というと、両毛地区でも医薬分業が一気に進みだそうとした頃です。しかし、栃木県の端ということもあり、それらに対応する為の勉強会をする機会にはあまり恵まれませんでした。そこで、まずくすりと病気の知識を習得し、服薬指導など、現場に役立つことを学んでいこうということを主眼に、自分たちの手ではじめたのが、アポネットR研究会であります。

 今回でアポネットR研究会も75回を重ね、いろいろなテーマを試行錯誤で続けてきましたが、この10年で大きく時代が変わったということを、私は実感していて、研究会の内容やスタイルもそれに沿っていかなければならないのではないかと最近は考えています。特に次にあげる3点は、現場の薬剤師は常に心に留めていてもらいたいこととして、特に強調したいと思います。

1. 医療やクスリに関する情報が溢れて、患者さんや国民はそれらに左右されている

 今まで、医療や病気、クスリや健康に関する情報といえば、書籍や新聞などが主でしたが、最近は雑誌やTVの健康番組といったメディアや、インターネットの発達によって、飛躍的に増えました。特にインターネットというツールは、医療従事者でなくとも、最新・最良の治療法、クスリに関する情報を容易に入手することを可能にしました。

 その結果、病気を治したい、健康でありたいという一心で、日本で発売されていない医薬品を個人輸入したり、サプリメントへの信仰といった現象となって現れています。最近、厚労省が容認した未承認抗がん剤の混合診療なども、こういった時代の流れに沿ったものと考えるべきでしょう。

  しかし、冷静に考えてみると、現場の薬剤師の知らないところで、日本にはないクスリや、評価の定まっていないサプリメントがどんどんと使われてしまっていることも事実です。薬剤師は、こういったことに目を向け、自らの視点で評価し、発言することが求められていると考えています。

2.効率や利便性が最優先される時代となってしまった

 国際化、競争社会の宿命なのかもしれませんが、まず、薬局自身がこの10年で効率を求めて、いわゆるドラッグストア、調剤薬局に二極化してしまいました。それとともに、ドラッグでのセルフ化、調剤特化という形で、OTCの販売が薬剤師の手を委ねなくてもよいとする販売形態を私たち自身が容認してしまったのです。

 さらに、24時間営業があたりまえになってしまったスーパーやコンビニなどの出現により、なぜ大衆薬が深夜など必要なときにすぐに手が入らないのかという声が出され、本当に大衆薬を深夜に自由に買えることが必要なのかという議論がされないまま、安全性よりも利便性を優先する時代の流れに従わざるを得ない状況になっています。

 厚労省と日薬では、薬局機能評価という取り組みを始めたのは、こういった危機感もあってのことなのでしょうが、こういった効率や利便性を優先される時代の中で、果たして可能なのかどうかは、今後、現場では大きな課題になることでしょう。

3.電子カルデや電子薬歴など、患者情報も急速にIT化が進んでおり、それらの活用が求められている

 先に述べた、効率化や利便性は医療の現場でも求められていて、電子カルテや電子薬歴も急速に進むと考えています。しかしさらなる効率性を考えると、検査データや服用薬といった患者情報の入ったICカードの普及が、それほど近くない将来に普及する可能性もあります。そうなると、今躍起になって私たちが行っている、相互作用や副作用、アレルギーチェックなどは不要になるかもしれません。今後は、むしろ、房総地区で試験的に行われているような、患者情報を医療従事者が共有し、それぞれの立場で評価し治療に活用していくという時代が近づいているような気がしてなりません。

 こう考えてみると、今のままでは間違いなく、社会は薬剤師がいてもいなくてもよいのではないかという人たちも出てしまうのは当然なことかもしれません。厳しいことをいうなら、添付文書や教科書にのっていることをやるだけでは、社会は薬剤師を評価してもらえないのです。では、どうしたらよいのでしょう?

 具体的には、

  • 医師に対しては、エビデンスに基づいた処方設計を薬剤師が提案する。
  • 他の医療従事者に対しては、日常的に使われているクスリが、常に日常生活や生活機能に影響を及ぼす可能性が常にあることを伝える。(日薬作成のものを活用したい)
  • 患者さんに対しては、医師から提案される治療法の選択の際に、的確なアドバイスをする。
  • 一般国民に対しては、健康食品やクスリに過剰な期待を抱かせず、リスクも存在することを伝える。
  • また、薬物やタバコの害といった、化学物質の身体への影響などの啓蒙活動行う。

といったことが、考えられます。

 即ち、薬剤師が薬剤師の視点で収集した情報をどう整理・評価して、独自の情報として発信することが求められているのではないでしょうか。

 アポネットR研究会では、こういった時代のニーズにあわせて、これからも、最新のクスリ・治療法といったありきたりの勉強会だけではなく、クスリや医療、健康をとりまく背景についても掘り下げ、その中で薬剤師がどう関わり、何ができるか、何をすべきかといったことを常に考えながら、取り組んでいきたいと考えています。これからもみなさんの、積極的な参加を期待しております。

 読み返してみると,「薬局機能評価」以外は,5年たった今でもほとんど私たちを取りまく状況はあまり変わらないように思いました。改めて,目指すところは変わらないのだと感じています。

 こういった理想を掲げている本会ですが,実際の所は仕事の合間に企画・運営をしている状況で,なかなか研究会らしい活動ができないのが現状です。どうか,両毛地区周辺の薬剤師の皆さんの積極的な参加を期待しています。(世話人募集中です!) 

 最後に,本会の目指すところをまとめて下さった,月刊薬事の記者さんに感謝を申し上げます。


2009年09月02日 00:41 投稿

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