日本でも,サーバリックス(Cervarix)が年内の正式承認の見通し(8月31日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過)となっているHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンですが,米国FDAでは9日に開催されたワクチンと関連生物学的製剤に関する諮問委員会(Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee)で,このサーバリックスの承認と TOPICS 2009.8.22 でも紹介したガーダシル(Gardasil)の適応拡大の審議が行われました。
Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting Announcement(FDA 2009.9.9)
http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/Calendar/ucm178920.htm
まず,サーバリックスについてですが,既に世界98か国で以上が承認されているにもかかわらず,米国ではまだ承認はされていませんでした。今回の委員会では,いくつかのウイルスのタイプに有効だとして,10〜25歳の女子を対象とした予防ワクチンとして承認を勧告する評決が行われました。GSK社がFDAに提出した資料は以下の通りです。
承認にあたっては,精神神経系の副作用や流産の増加などの報告があるとして,さらに調査を行う必要があるとしています。
なお,このサーバリックスについては,英医薬品庁(MHRA)が先日,イエローカード副作用報告システムなどを通じて寄せられた有害事象のまとめが発表されています。
Human papillomavirus (HPV) vaccine(MHRA)
Cervarix Human papillomavirus (HPV) vaccine (372Kb)
(Suspected adverse reactions received by the MHRA 2009.9.3)
一方,ガーダシルの方ですが,今回の適応拡大はHPVによって起こるGenital warts(生殖器のいぼ)予防で,こちらは9〜26歳の男子が対象となっています。諮問委員会では,こちらも承認を勧告する評決が行われています。メルク社がFDAに提出した資料は以下の通りです。
各紙によれば,Genital Warts の罹患率は1%程度であること,3回で390ドルがかかる費用がかかること,Genital Warts は子宮頸がんのように致死的ではないということ(男性が接種することで女性の感染リスクを低くするということはありますが),性活動が活発でない人は必ずしも必要ではないことを考えると,接種を希望する人(保護者)がどれだけいるだろうかと疑問視する向きもあります。
なお日本では,日医が新政権発足後,HPVワクチンの定期接種化を求める要望書を提出するようです。日医では定期接種に組み込むことにより,接種者の経済負担を軽減して接種率を高めたいとの考えのようです。日本でも今後広く接種の勧奨が勧められるのでしょうか?
日医 Hib・HPVワクチン定期接種化、新政権に要望へ
(日刊薬業 WEB フリーサイト 9月10日)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/dantai/article/1226551789733.html?pageKind=outline
【薬食審医薬品第二部会】子宮頸癌ワクチン登場へ
(薬事日報 HEADLINE NEWS 9月4日)
http://www.yakuji.co.jp/entry16097.html
関連情報:TOPICS 2009.08.22 子宮頸がん予防ワクチンと有害事象
参考:
Two Giants Vie for Billions in S.T.D. Vaccine Market
(New York Times 2009.9.9)
http://www.nytimes.com/2009/09/10/business/10drug.html
FDA Panel Votes to Approve Second HPV Vaccine
(Medpage TODAY 2009.9.9)
http://www.medpagetoday.com/PrimaryCare/Vaccines/15894
2009年09月11日 14:17 投稿