1日、経口ステロイドによるドーピング違反について相次いで報じられています。
一つ目は、6月に行われた重量挙げの全日本選手権の女子48キロ級で優勝した伊藤奈央選手の問題で、ドーピング検査でデキサメタゾンに陽性反応を示して優勝を取り消されたというものです。
原因は花粉症治療で医師から処方されたヒスタブロック(セレスタミンのGE)中のデキサメタゾンによるものらしく、競技力を向上を目的としたものではないとされたものの、本人の注意不足として、優勝の取り消しと2か月の資格停止処分を受けています。
日本ドーピング防止規律パネル決定(2011.07.17)
http://www.playtruejapan.org/downloads/disciplinary_panel/dopingcontravention110717.pdf
もう一つは、プロ野球中日ドラゴンズの井端弘和選手のアンチ・ドーピング規則違反で、こちらはレドニゾロン、プレドニゾン、20β-ジヒドロプレドニゾロンが検出されていたというものですが、こちらは治療目的でプレドニン錠を定期的に服用しているというTUEの申請が適切に行われていなかった(TUE更新をしていれば、問題はなかったい)ことから、今回井端選手には始末書、中日ドラゴンズ球団には300万円の制裁金が科せられました。
アンチ・ドーピング規則違反に対する制裁の通知
(日本プロフェッショナル野球組織 アンチ・ドーピング調査裁定委員会 2011.09.01)
http://www.npb.or.jp/anti-doping/doc_20110901.html
ステロイドというと蛋白同化ステロイドを想像しがちですが、プレロニゾロンなどの糖質コルチコイドも禁止物質です。(但し、塗り薬や吸入などは対象外)
禁止される理由は、抗炎症作用によりけがをしても競技が続行が可能となり、けがをさらに悪化させる可能性があること、また精神神経系に作用して高揚感や陶酔感をもたらす可能性が指摘されていること、糖質やたんぱく質の代謝、脂質代謝などのエネルギー代謝に影響を与えるためです。
伊藤選手はおそらく症状のひどいときにヒスタブロックを使われていたと思いますが、不用意だったですね。(うっかりによる1回目は2か月の処分ですむみたいだけど、これからは十分気を付けないと)
関連情報:TOPICS
2011.08.10 ラクビー元代表候補が市販塗り薬で2年間の資格停止処分に
2010.06.14 ドーピングの話題を3つ
2011.06.14 薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2011年版
参考:
47NEWS 9月2日
http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011090201000255.html
産経新聞9月1日
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/110901/bbl11090119310007-n1.htm
スポニチ 9月2日
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/09/02/kiji/K20110902001535160.html
2011年09月02日 14:18 投稿
中日球団のHPに今のところ掲載はありませんが、11日の各紙によれば、井端選手の件について、改善策の報告書と井端選手の始末書を日本プロフェッショナル組織(NPB)提出したそうです。
デイリースポーツオンライン 2011.09.11
http://www.daily.co.jp/baseball/2011/09/13/0004462272.shtml
報告書には、(1)ドーピング対策の意識向上(2)責任の明確化(3)治療薬の情報共有(4)薬剤使用など関係文書の適切な保管 が記されているとのことで、球団はおそらくスポーツファーマシストなどの専門の担当者置く必要があるかもしれませんね。