内服薬処方せんの記載方法の在り方についてのパブコメ開始

 厚労省は、4回にわたって行われた「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会」での議論を踏まえ、正式な報告書の骨子案を、19日に開始したパブリックコメントで公示しています。

「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書骨子案」に対する意見募集について(意見・情報受付開始日 2009年10月19日 意見・情報受付締切日 2009年11月17日)

 第4回の検討会での「報告書骨子案(論点整理)」(第4回資料3→リンク)に、若干の修正(太字部分)が加えられています。(下記は抜粋したものです。パブコメで示された報告書骨子案でご確認下さい)

内服薬処方せん記載の在るべき姿
  • 医療安全の観点から、患者、医療者を含め、誰がみても理解できるような処方せんの記載方法を標準化し、医師法、歯科医師法、健康保険法等の関連法規との整合性を含め、我が国のあらゆる医療機関において統一的な記載による処方せんが発行されることが望ましい。
  • 最も望ましいのは、薬名、1回内服量、1日内服量、1日の服用回数、服用時期、服用日数等の必要事項をすべて記載することであるが、現状では限られた時間で全体について全て記載することは困難であるとの指摘もある。
  • また、用法の記載ルールは標準化されておらず、多様な記載ルールが併存しているのが現状である。
  • 薬価基準に記載されている製剤名を記載する
  • 医薬品を実際に内服する患者の解りやすさの観点から、最小単位である1回の内服量を処方せん記載の基本とする。また、散剤、液剤の分量は製剤量(薬剤としての重量)で記載する。
用法
  • 医療事故防止の観点から、これまで「分3」、 「×3」、「3×」等の情報伝達エラーを惹起する可能性のある表現方法で記載してきたものを、「1日3回均等に分けて」のように日本語で明確に記載すること等により、紛らわしい記載を速やかに是正する。 日本語で明確に記載する「朝昼夕 1日3回均等に分けて」、「1日1回 朝2錠」といった記載を標準にする。
散剤、液剤
  • 「g(mL)記載は製剤量、mg記載は有効成分量」といった重量(容量)単位により記載してきたものを、薬名を販売名で記載し、分量は製剤量を記載することを標準にする。
  • 例外的に、一般名(原薬名)で記載した場合には、分量は有効成分量を記載し、必ず 原薬量と明示する。
  • 院内調剤において賦形が行われた場合には、看護師等の他職種に賦形後の調剤量が確実に伝達される統一的な仕組みを作る必要がある。
その他
  • 標準用法マスタの作成・配布を行う。なお、医療情報システムには、原則として標準用法マスタを使用することとする。
  • 処方オーダリングシステム等の処方入力画面については、1回量を基本とした入力、1日量を基本とした入力のいずれの入力方法であっても、1回内服量と1日内服量が同一画面で確認できるようにする。
  • 出力された処方せんの記載事項については、処方オーダリングシステム等が、1回量を基本とした入力、1日量を基本とした入力のいすれの入力方法であっても、出力された処方せんには、1回内服量と1日内服量と1日内服量が併記されるようにする。
  • 手書き処方せんの場合、薬名、分量、用法・用量について上記の対応を関係者に依頼し、調剤においては、必要に応じて疑義照会を徹底する。
  • 処方せんによる投薬指示が患者に確実に実施されるために、投薬実施記録としての看護システムにおいては、服用の最小基本単位である1回の服用量を基本単位とすることを推進する。
  • 保険薬局調剤薬局において処方内容を再入力することによる情報伝達エラーを防止し、院外処方せんの利便性の向上に資するような、二次元情報技術(バーコードやQRコード等)の導入について検討する。
教育等
  • 医師、歯科医師、薬剤師等の医療従事者の養成機関における、内服薬処方せんの標準的な 記載方法に関する教育、共用試験や国家試験への出題について留意が必要である。
  • 医師、歯科医師、看護師等の臨床研修等の卒後教育においても、上記養成機関における対応を踏まえ、内服薬処方せんの標準的な記載方法に関する教育について留意が必要である。
  • 薬剤に関する書籍や医薬品の添付文書の記載については、本検討会の議を踏まえ、分量、用法・用量等の記載方法について留意する必要がある。
移行期間における対応
  • 本検討会の意見に基づき、関係者は可及的速やかに各方策に着手するよう周知を図る。移行期間の終了は、「内服薬処方せん記載のあるべき姿」が我が国に定着したときであり、5年程度を目標とする。
  • (財)医療機能評価機構が実施している、医療事故情報収集等事業や薬局ヒヤリハット事例収集・分析事業の情報等を用いて、2〜3年のうちに中間評価を行う。
  • 遅くとも5年後に、実施状況について把握し、対策について再検討する。

 下記リンクから、これまでの検討会の資料・議事録を参考に是非皆さんもパブリックコメントで意見を伝えましょう。

関連情報:TOPICS
 2009.09.15 第4回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会
 2009.07.30 第3回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会
 2009.06.22 第2回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会
 2009.06.02 第1回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会
 2009.09.23 処方せん、国際基準に変更するなら「食後・食前」の明記は必要か?


2009年10月20日 01:22 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    ざっと見て、現時点でのコメントを。

    今回の記載方法の在り方についての検討は医療安全の観点からすすめられているものです。

    IT技術は進んでいますので、医療システム的にはおそらく報告書骨子案通りに簡単に対応が可能でしょう。でも、院内で臨時に処方されるものや、院外処方で散発的に出される手書きの処方せんに対し、いかに誤りなく調剤されることへの対応は不十分ではないかと思います。
     
    冒頭の「薬価基準に記載されている製剤名を記載する」ということひとつとっても大変だと思います。これを厳格に適用すれば、ベニジピン塩酸塩錠4mg「○○」と正確に書く必要がありますし、またそのように書かれていなければ、疑義照会も求められることになるでしょう。

    これでは後発医薬品の使用促進にもつながらないようにも思います。私は、販売名または一般名+剤型(1回量で判読がつけば省略も可)+含有量(例:ベニジピン4mg)などの簡略も認めてもいいのではないかと思います。

    また、「薬名を販売名で記載し、分量は製剤量を記載することを標準にする」というのも、手書きの場合は危険をはらんでいると思います。

    というのは、アスベリンやムコダイン、メプチンなど散剤で複数の規格がある場合に、ドライシロップを散と思いこんで調剤してしまうという可能性があるからで、有効成分量(「原薬量」と明示)も可能(手書きはむしろ標準に)とすべきではないかと思います。

    薬剤師の勉強不足と言ってしまえばそれまでですが、「必要に応じて疑義照会を徹底」するというひとことで解決されるとなってしまうと、「では、今までとどこが違うの?」という気がしてなりません。

    また、たびたび指摘していますが、用法指示(飲む時間、食後・食前、使用部位など)の簡略を一定の範囲で認めるべきだと思います。(疑義照会も省略可とする)

    服用してもらうことを意図として、「1日1回いつでもいいからきちんと飲んでね」という意味で、分1やX1とだけしか書かないケースもあると思います。保険適応の承認上明記は必要かもしれませんが、もっとシンプルかつ柔軟に対応できるような仕組み(健康保険法との関連法規の見直し)も必要ではないかと考えます。