小児用OTC風邪薬、添付文書の変更に踏み込まず

 各国で、子どもへの使用制限が打ち出されている小児用OTC風邪薬・咳止め薬の問題ですが、厚労省の医薬食品局安全対策課は2日、日本製薬団体連合会と日薬に対し、下記のような事務連絡を行っていることが明らかになりました。

平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会(2009年11月6日開催)

資料2-8 小児用かぜ薬・鎮咳去痰薬等の安全対策について
 厚労省資料(11月13日掲載) WAM NET 資料(WAMNET 11月10日掲載)

日本製薬団体連合会 御中    

厚生労働省医薬食品局安全対策課

一般用医薬品(かぜ薬(内用)、鎮咳去疾薬(内用)、鼻炎用内服薬のうち、
小児の用法を有する製剤)の小児への使用に関する注意喚起について

 一般用医薬品(かぜ薬(内用)、鎮咳去疾薬(内用)及び鼻炎用内服薬)(以下「かぜ薬等」という。)のうち、小児の用法を有する製剤は、平成14年8月29目付医薬審発第0829001号・医薬安発第0829001号厚生労働省医薬局安全対策課長・審査管理課長通知「かぜ薬等の添付文書等に記載する使用上の注意について」により、使用上の注意の[用法及び用量に関連する注意の項]に「小児に服用させる場合には、保護者の指導監督の下に服用させること」と記載し、注意喚起を行っています。さらに、かぜ薬等のうち、2歳未満の用法を有する製剤については、米国を含む諸外国において2歳未満にはかぜ薬や咳止め薬等を使用すべきではない旨の注意喚起がなされたことを受け、平成20年7月4日付厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡「「使用上の注意」の改訂について」により、使用上の注意の[用法及び用量に関連する注意]の項に「2歳末満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。」と記載する等、注意喚起を行ってきたところです。
 その後、かぜ薬等の小児への使用に関して、使用するべきではない年齢の範囲をさらに拡大する等の措置がとられている国もありますが、当該国においても明確な根拠が示されていない状況であるため、2歳未満の乳幼児に対する上記の注意喚起に加え、我が国においては当分の間、15歳未満の小児全体に対して、服用させる場合には、保護者の指導監督の下に服用させること等、幅広く適正使用に関する情報提供を行うことが適当と考えています。
 つきましては、貴会下関係団体に対し、薬局、店舗販売業又は配置販売業における小児の適正使用に関する円滑な情報提供に協力するよう、周知方ご協力お願いいたします。

 どうやら日本では今後も、添付文書の改訂などの措置は行わないようですね。その理由として、「当該国においても明確な根拠が示されていない状況であるため」としていますが、豪州やニュージーランドなどでは、詳細な検証を行っていることは本サイトで示した通りです。

 そして、「15歳未満の小児全体に対して、服用させる場合には、保護者の指導監督の下に服用させること等、幅広く適正使用に感する円滑な情報提供」をとしていますが、何を根拠にどのようなことを情報提供するのかこれではさっぱりわかりませんね。

 日本ではOTCの安全性や有用性というのを独自に検証する気は全くないのでしょうか。

資料:平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会(2009年11月6日開催)
  厚労省資料(11月13日掲載)  WAMNET資料(11月11日掲載)

関連情報:TOPICS
 2009.10.23 OTC子ども用風邪薬、薬剤師の管理下での販売が必要(豪州)
 2009.10.08 6歳未満に風邪薬・咳止め薬は与えられるべきではない(NZ)
 2009.05.12 OTC小児用風邪薬・咳止め薬のさらなる注意喚起は見送りへ
 2008.07.05 2歳未満はOTC風邪薬は使用せず受診を
 2008.04.09 抗ヒスタミン剤、2歳未満は処方せんが必要(豪州)
 2009.03.01 英国当局も6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告
 2008.12.19 カナダ当局、6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告
 2008.10.08 小児用OTC風邪薬は4歳未満に与えてはいけない(米国)


2009年11月11日 13:50 投稿

コメントが3つあります

  1. サリドマイドや血液製剤のときと 同じ形態 同じ認識で 判断していますよね。
    薬害の反省が 全く生かされていない。弱小製薬メーカーを守りたいのでしょうか?
    販売会社はかなりの大手ばかりですが。しかも 赤字だそうですよ。小売販売ニーズがあるから納入していると聞いています。
    そもそもの医療根拠も薄いのに なぜでしょうか?不思議です。

  2. アポネット 小嶋

    同日の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、配布された資料3-5「外国における新たな措置の報告状況」をみると、ケニアでもニュージーランド、英国などと同様の措置がとられていますね。

    外国における新たな措置の報告状況
    (平成21年3月1日から平成21年8月31日までの報告受付分)
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-11y.pdf

    ケニアPPBは、6歳未満の小児に対して、以下のOTC風邪薬は推奨しないと
    述べた(鎮咳薬、去痰薬、鼻充血除去薬、抗ヒスタミン薬)。これら成分
    を含む風邪薬は6-12歳の子どもにおいては、薬局でのみ入手可能とする。
    これらの薬は症状治療に対してのみ使われるものであり、本当の効果につ
    いての情報はない。これらの薬を不適切に使うことにより、重篤、場合に
    よっては生命危機の事象(死、痙攣、心拍増加、意識低下を含む)が起こ
    ることもある。

    日本はケニアよりも対応が遅れているんですね。 これをまとめた厚労省はどう考えているんでしょうね。

    3ヶ月後にも出される記事録を見てみないとわかりませんが、委員から意見は出なかったのでしょうかね?

  3. アポネット 小嶋

    薬害オンブズパースン会議ウェブサイト(http://www.yakugai.gr.jp/) の最新情報のページに、オーストラリアの医師・薬剤師を対象とした医薬情報誌 Australian Prescriber(http://www.australianprescriber.com/)2009年10月号に掲載された、小児用風邪薬・咳止め薬に関する論説が紹介されています。

    子ども用の咳止めと風邪薬、効果に根拠無く副作用からも推奨できず
     (薬害オンブズパースン会議 注目情報 2009年11月18日掲載)
    http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=269

    Cough and cold remedies for children
    (Aust Prescr 2009;32:122-124)
    http://www.australianprescriber.com/upload/pdf/articles/1047.pdf

    日本でのこの問題に対する関心の薄さを考えさせられますね。