処方情報や患者情報の電子化を検討・実証実験の事業を行うこの会議については、どのような内容なのか興味があったのですが、会議が非公開ということで様子についてはこれまであまり伝えられていませんでした。改めてチェックをしたら、知らない間に総務省のウェブサイトに資料等がアップされていたので、まとめてみました。
第1回日本版EHR事業推進委員会(2011.07.19)
資料→リンク 議事要旨→リンク(内容的には技術的が多いが興味深い)
この事業は厚生労働省と経済産業省が連携し、複数の基礎自治体の参画・連携の下、各地域が保有する医療情報(例:診療情報、調剤情報、健診情報)を安全かつ円滑に流通させるための広域共同利用型のEHR(Electronic Health Record、個人が自らの医療・健康情報(診療情報・健診情報等)を「生涯にわたって」電子的に管理・活用できる仕組み)システムの確立・普及に向けた実証実験を実施するというものです。
具体的な効果としては、下記のようなものがあるそうです。
- 過去の診療内容に基づいた医療機関間における継続的な医療の実施、重複検査の回避
- 生活習慣病予防等、医療費適正化への寄与
- 匿名化された健康情報の疫学的活用
- 日々の健康管理による、個人の健康増進への貢献
「健康情報活用基盤構築事業」 (日本版EHR) の概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000130475.pdf
現在下記の3つの実証実験が行われていて、いずれ地元薬剤師・地域薬局が協力・参加している点で注目です。(厚労省の医療連携となると、地域薬局は外れがちだが、こちらは情報の共有ということでしっかり入っている)
名称 | 実証参加主体 | 事業概要 |
---|---|---|
処方情報の電子化・医薬連携事業 (処方情報の電子化・医薬連携)香川県高松市、三木町、さぬき市 (→ヘルスケア・イノベーションフォーラム ) |
地方公共団体2団体、医療機関10機関、薬局50施設 | ○地域全体で診療情報、調剤情報、健診情報等の広域的情報流通基盤を構築し、効果的な処方、投薬等の実現を図るため、 ①病院・診療所において交付される処方箋に記載されている情報を電子化し、処方情報として薬局に提供 ②患者が、必要な時に自身の薬歴情報を活用できる「Web お薬手帱」を提供 ③患者が、自身の日々の服薬・服用状況を、かかりつけ医、薬剤師等にフィードバックできる環境を構築する。 ※本事業については、現行制度において求められている書面での交付を実施しつつ、処方箋の電磁的な交付について、その技術的側面及び運用面の検討を行うものとする。 (→さらに詳しく) |
「天かける」医療・介護連携事業 (医療・介護連携)広島県尾道市、福山市、三原市 |
地方公共団体2団体、中核病院1施設、診療所10施設、薬局30施設、介護施設・在宅医療/介護支援施設各3~4機関 | ○地域全体で診療情報、調剤情報、介護情報等の広域的情報流通基盤を構築し、 ①多業種間で、患者の診療情報、調剤情報、介護情報等を効率的に参照・共有する医療・介護連携モデルを確立(医療・介護間で共有すべき情報のあり方に関する検討を含む) ②在宅医療・介護に係る往診医師・訪問看護師、介護ヘルパー等が患者情報を安全に登録できる仕組みを構築。 (→さらに詳しく) |
共通診察券事業 (共通診察券・救急連携)島根県出雲市、太田市、斐川町 |
地方公共団体3団体、医療機関10機関、救急医療機関3機関、薬局20施設 | ○地域全体で、共通診察券(仮称)を通じた、ワンストップの医療サービスを実現するため、 ①個人の健康情報(特定健診情報)、診療情報、調剤情報などを関係者間で登録・共有するとともに、住民が診療予約をできる ②救急医療機関が、地域の医療機関の空床情報及び、救急患者の診療歴・薬歴等を参照できる環境を構築する。 ※厚生労働省「社会保障カード(仮称)実証事業」の成果を活用 (→さらに詳しく) |
これらは、H20~H22に行われた「健康情報活用基盤実証事業」(沖縄県浦添市)の成果が活用されているとのこと。
浦添地域健康情報活用基盤構築実証事業プロジェクト
(2010.09.30開催の「第3回沖縄ウェルネス産業研究会」配布の資料らしい・内閣府沖縄総合事務局HP)
http://ogb.go.jp/move/100809wellnesskenkyukai/wellness_siryou2.pdf
「総務省による電子処方せんプロジェクト」
(HCIF第5回治験IT化部会 2011.06.27)
http://www.kms.ac.jp/~hospinfo/Medinfo/hi_forum/exclusive/pdf/20110627_chiken_01.pdf
健康情報活用基盤構築のための標準化及び実証事業
http://www.accenture.com/microsites/hpsv-meti/Pages/default.aspx
来年春には報告書がまとまるそうなので注目です。
関連情報:TOPICS 2011.05.27 医療情報化に関するタスクフォース報告書(IT戦略本部)
参考:
デジタルヘルスOnline 2011.09.28)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/dho/20110928/285465/
日経メディカルオンライン
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/it/report/201108/521319.html
2011年10月24日 00:56 投稿
ツイッターを見ていて初めて知ったのですが、大阪府でも独自の事業計画があるそうです。
医療連携に係る服薬情報管理活用
(『大阪府地域医療再生計画「三次医療圏」(案)基礎額計画』p31-34)
http://www.pref.osaka.jp/hodo/attach/hodo-07262_4.pdf
簡単に言うと、携帯電話を「お薬手帳」として活用し、「お薬手帳」の普及率を54.2%から80%まで高め、活用率を39.4%から60%まで高めて、府域全域で患者の服薬情報を確認・共有できる体制を整備し、医療連携機能の強化を図るというものです。
・患者の服薬情報等を携帯電話に登録するシステムの開発
・府内の薬局へ、ICリーダライター(コンピューターから携帯電話へデータを取り込む装置)の設置、及び新システムの導入
ただ残念ながらこの事業は、平成23年度の府の当初予算・補正予算の査定で予算がつかず、先送りとなっています。
平成23年度補正(第4号) 大阪府地域医療再生基金事業(薬務対策)
http://www.pref.osaka.jp/yosan/cover/index.php?year=2011&acc=1&form=10&proc=0&ykst=2&bizcd=20112506&seq=1
ITを活用した患者さんの服薬情報の共有は近い将来現実のものとなりそうですね。
確かに便利で、こう言う流れは避けられないんでしょうけど、アナログ人間からしたら、情報がもれる可能性に不安ですし、便利がゆえに、事務的な処理に対しても、mm単位のミスも許されない感じで・・・・
(すみません、これは愚痴です)
電子カルテに対応できない小規模クリニックはどうなるのでしょうか?
また、全ての健康情報を国や地方自治体に管理(統制???)されると言うのが、気分的に嫌な感じです。
第三者機関?か、情報管理するところを、客観的に監視できる体制も必要のような気がします。
大阪府の電子版お薬手帳の件、2012年度の大阪府の予算案に計上(5082.6万円)され、実現に向け動き出すようです。
平成24年度当初予算(政策的経費) 大阪府地域医療再生基金事業(薬務対策(大阪府)→リンク