地元の話題ですみません。 栃木県では、TOPICS 2011.07.20 で紹介したように、医師会主導で脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の地域連携クリティカルパス(連携パス)について県内統一のものができましたが、今のところ県のHP等にはまだ掲載されていません。
そこで保健所や県に問い合わせて、ようやく最近内容を知る機会がありました。また、30日宇都宮で行われた下記学会で実物が見れるということなので、足を運んで、お邪魔させて頂き、中身を確認しました。
第11回日本医療マネジメント学会栃木地方会学術集会(栃木県済生会宇都宮病院HP)
http://www.saimiya.com/content/11_iryou_management_p.pdf
1.がん
TOPICS 2011.07.20 でご紹介したように、東京都作成の医療連携手帳と基本的に同じ内容です。(→都道府県統一パス)
サイズは手帳という割には大きくA5版でした。メモ欄があるので、薬剤師が気づいたことを書こうと思えばできるのですが、「診療メモ」となっているので書けるかどうか。
2.脳卒中
紙で、患者向けパスはイラストなどもあり、見やすくなっています。
くすりの名前を書く欄も一応ありますが、それほど大きくはありません。
3.急性心筋梗塞
患者向けパスは、がんと同じA5版の手帳方式です。
加療や薬物療法のポイントなども記されている他、薬剤名を貼る欄が広くとられており、ここに薬局で気づいたことを記入することができるかもしれません。
4.糖尿病
患者向けパスはなく、皆さんもご存じの「糖尿病連携手帳」(→リンク・日本糖尿病協会)が情報共有のツールとして用いられます。
薬局できちんと確認で情報の共有が可能となりますが、薬局で気づいた点をここに記してよいかどうかを確認した方がいいかもしません。
本運用は来年2月から春にかけてとなるようなので、患者向けの講演が行われる前に、地元向けには何らかの勉強会が必要かと考えています。
今後の運用については、下記に情報があります。
栃木県医師会クリティカルパス推進委員会
(がん情報とちぎ・栃木県の取組)
http://www.ganjoho-tochigi.jp/work/data/4_cp_suisiniinkai_200110715.pdf
ところで、この学会では連携パスの記事でしばしば紹介している武藤正樹氏と、東京都のがん地域連携の実務に携わっている下村裕見子氏が講演を行っています。結構おもしろかったです。
武藤氏の講演スライドは例によって、ブログにアップされています。(117枚もスライドがあったんだ)
「2012年診療報酬改定と地域連携」
http://masaki.muto.net/lecture/20111030a.pdf
次回改定では在宅医療関連に注目が集まることや、サービス付高齢者向け住宅(p96、これでいくと薬局はテナントで入るのかなあ)の話題、今後は自宅で亡くなることが増えることを想定して、「お看取りパス」(p85)も必要になってくるだろうといった話が印象に残った他、「12万人?もいる(調剤)薬局の薬剤師を活用しない手はない」とまたまたリップサービスをしてくれました。(学会には全部でおそらく200人くらいは来ていたけど、薬剤師は何人くらいいただろう?)
一方、下村氏はがんパスの実施状況について調査した結果を話されています。がんパスについては県統一のものが運用の傾向があるものの、実際の運用状況となると県による格差も大きいそうです。
運用がすすんでいるのは、長野や岐阜・岡山といった方面だったと思いますが、共通の特徴としては
- もともと独自の連携パスが運用されていた
- 県単位で協議会があった
- コーディネーター役の看護師の存在
- 高齢化率が高く、かかりつけ医を持っている人が多い
一方で、肺がんや肝がんなどは運用の事例はなかなか少ないそうです。
東京都の取組みはすでにテレビ朝日放送の都広報番組の「東京サイト」で昨年7月に紹介され、結構反響もあったとのことで、下村氏は診療報酬の算定の有無にかかわらず、情報の共通のツールとしてどんどん活用すべきだと話されました。(都内の薬局の方はもう目にされていますか?)
がん対策最前線(東京サイト・バックナンバー)
http://www.tv-asahi.co.jp/t-site/bk/20100712/index.html
関連情報:TOPICS
2011.10.06 認知症連携パスと地域薬局
2011.07.20 栃木県医療連携手帳
2010.09.21 港区がん連携パス研究会公開シンポ.
2010.01.15 地域連携クリティカルパス「東京都医療連携手帳」
2009.03.18 「地域連携パス」における地域薬局の役割
参考:
下野新聞2011年8月4日
http://www.shimotsuke.co.jp/town/life/medical/news/20110804/580290
2011年10月31日 00:36 投稿
武藤先生のブログでリンクが貼られていました。(恥ずかしい)
医療マネジメント学会栃木支部会
(武藤正樹のWeblog 2011年10月30日)
http://mutoma.asablo.jp/blog/2011/10/30/6178213
シンポウムの紹介をしませんでしたが、内容的には患者情報についての共有や、IT、ICT(Informationand Communication technology)の利活用のありかたが討論になりました。
改めて気づいた点としては、医療連携と在宅連携における共有データ(患者情報)は若干異なるという点です。
医療連携においては、血液データや検査結果など定量化できるものが主であり、電子データ化するのは容易である一方、介護連携では看護記録・リハビリ記録などの細かなもの(といってもこれらは重要)が多く、現状ではスキャナで読み込むなどが限界のようです。
いずれにしても、これらの枠の中に地域薬局の存在が含まれるかどうかが大きな鍵であり、地元で作成されているパスの中に地域薬剤師がどう関わるかをはっきりとさせていくことは重要です。
まずは少なくとも私たちは患者向けのパスの存在を知ること、地域薬剤師の役割が明確化されているものについては、その経験を他地区のパスに広げていくことが重要でしょう。
(追記)
下野新聞で記事が出ています。
顔が見える関係、医師間で構築を 宇都宮、地域医療連携でシンポ
(下野新聞10月31日)
http://www.shimotsuke.co.jp/town/life/medical/news/20111031/647997
日本糖尿病協会ウェブサイトの糖尿病連携手帳を早速、見ました。手製の手帳を作り自己管理に努めます。京都府の連携パスは遅れているようですので、参考になります。