英国グラスゴー大学の研究グループは、メタボリックシンドロームの診断基準について、糖尿病リスクは関連付けられるものの心臓血管病リスクの予測には有用でないとする研究結果をまとめ、Lancet 誌のオンライン版で発表しました。
Can metabolic syndrome usefully predict cardiovascular disease and diabetes? Outcome data from two prospective studies(The Lancet Early Online Publication, 22 May 2008)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673608606029/abstract?iseop=true
この研究は、PROSPER(Prospective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk : 70〜82歳の男女)及びBRHS(the British Regional Heart Study : 60〜79歳の男性)のデータのうち糖尿病ではない人のデータを解析したもので、PROSPERでは約28%、BRHSでは27%がメタボリックシンドロームの診断基準(高血糖・高血圧・ウエストサイズ・低HDL・高TGのうち3つ以上。日本と基準値は異なりますが)を満たしていました。
その結果、PROSPERではメタボリックシンドロームは糖尿病のリスクを4.41倍になるとして関連づけられるとしたものの、心臓血管病のリスクは1.07倍に留まり、関連付けられないとしています。
同様に、BRHSでも糖尿病リスクは7.47倍で関連付けられるとしたものの、心臓血管病のリスクは1.27倍(ウエストサイズ102cm超:1.08倍、高TG:1.17倍、低HDL-C:1.46倍、空腹時血糖:1.05倍、高血圧:1.68倍)で関連性は少ないとしています。
研究者らは、高齢者のメタボリックシンドロームの診断が心臓血管病のリスク予測に有用ではないと結論づけた他、糖尿病のリスク予測についても疑問を投げかけています。
まだまだ更なる検証が必要ではありますが、日本で開始されたいわゆるメタボ健診について、生活習慣病予防に有用なのかどうかますます疑問が深まります。
参考:Metabolic syndrome: Another nail in the coffin?
(the Heart org. 2008.5.21)
http://beta.theheart.org/article/868721.do
Diabetes, Not Cardiovascular Disease, Linked To Metabolic Syndrome
(Medical News Today 2008.5.22)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/108493.php
Metabolic Syndrome Not Useful in Predicting Cardiovascular Risk
(Medpage TODAY 2008.5.23)
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/MetabolicSyndrome/tb/9595
5月24日 18:10掲載
2008年05月24日 18:10 投稿