東北大学大学院薬学研究科 医薬開発構想講座の今井 潤 教授らの研究チームは18日、東日本大震災発生時の高血圧患者では急激な血圧上昇みられ、その上昇が4週間震災に亘るとした研究結果を発表したことを明らかにするとともに、震災後の閖上地区における保健活動の経験から、被災者の医療情報の欠損が大変深刻であったとして、今後発生が予想される関東、東海の大震災に備えた提言を行っています。
東日本大震災に伴う血圧の上昇は4週間持続「大震災被災者における慢性疾患への対応に関する提言」(東北大学プレスリリース 2011.11.18)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/11/press20111118-1.html
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20111118_1.pdf
- 国民は、医療情報の含まれるIC タグ的情報手段(軍隊の認識票のようなもの)を常時有するべきである(携帯電話、運転免許証、保険証等に情報を付加するのもその一つとなるだろう)。
- その際には、国が速やかに統一規格の情報伝達手段(携帯にIC タグを装着させる。IC タグ読み取り、書き込みの規格統一)を整備する必要がある。
- 上記の対応には時間がかかると思われることから、市民は、自らの医療情報を常に身につけておき、自衛することが勧められる。例えば「お薬手帳」の常備携帯などである。
- 食品、水などの備蓄とともに、治療薬を避難所に備蓄するべきである。降圧薬に関しては、Ca拮抗薬や利尿薬のような、安全域の高い薬品の備蓄が望まれる。
- 緊急時の処方権に関する特例を整備するべきである(ある特定の薬物に関しては、避難所にいる看護師、保健師、薬剤師が自らの判断で、安全な薬物を処方できるようにするなどの特例が必要になるだろう)。
- 各避難所に、家庭血圧計を備蓄すべきである。その際、開発途上国で用いられるようになった太陽電池で駆動し得るような装置が望ましい。
薬歴手帳の有用性が再認識される一方で、災害時における慢性疾患の管理や治療の継続については、ボランティアに行かれた方のレポートを見てもさまざまな意見がありますが、特に継続処方であれば処方せんなしでも必要なくすりを提供する仕組みをつくるべきだというのは、おそらく支援に行かれた多くの方が感じたのではないかと思います。
今回の災害時でも、特別の事情がある場合処方なしでの供給が一部認められましたが、海外ではこういった災害時には緊急処方やリフィルを認めるケースがあります。
Emergency Pharmacy Response: Christchurch Earthquake, 2011
(第21回日本医療薬学会シンポジウムスライド、p13)
http://21jsphcs.jtbcom.co.jp/pdf/symposium/76.pdf
「処方権は医師のみである」と言われそうですが、薬学系大学の研究者が批判を恐れず、こういった提言を行うことは意味深いものがあります。
資料:
Acute and Subacute Effects of the Great East Japan Earthquake on Home Blood Pressure Values
(Hypertension. 2011; 58: e193-e194 Online First Oct 31,2011 抜粋だけです)
http://hyper.ahajournals.org/content/58/6/e193.extract
2011年11月18日 14:15 投稿