薬の有効な使用策に提言(提言型政策仕分け結果)

 22日、内閣府・行政刷新会議の「提言型政策仕分け」(http://sasshin.go.jp/)で、社会保障分野として、「後発医薬品の使用促進など薬の有効な使用策」が取り上げられています。

社会保障:後発医薬品の使用促進など薬の有効な使用策
 http://sasshin.go.jp/shiwake/detail/2011-11-22.html#B5-3

 評価結果もアップされています。→ PDFファイル

とりまとめ(提言)

  • 先発品の薬価は後発医薬品(ジェネリック)の薬価を目指して大幅に引き下げ、医療費の支出と国民の負担を最小限にすべき。
  • 併せて、先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担とすることについて検討すべき。
  • 加えて、医師・薬剤師から主な先発品・後発品のリストを患者に提示する義務を課すことについても検討すべき。
  • 後発医薬品の推進のロードマップを作成 し、行政刷新会議に報告すること。
  • ビタミン剤など市販品類似薬については、自己負担割合の引き上げを試行するべき。
  • さらに、一部医療保険の対象から外すことについても検検討すること。
 論点 財政当局提案 仕分け人の評価
後発医薬品の使用を進めるための方策は何 先発品薬価については、後発品薬価を目指して大幅に引き下げるべきではないか
→先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担とするなど、中期的には医療保険上の取扱いを統一化することを目指すべきではないか
先発品の薬価は、後発品の薬価を目指して大幅に引き下げるべき(5名)
先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担とすべき(7名)
後発品についての周知・啓発をもっと進めるべき(6名)
その他 (2名) (注:重複あり)
病院でも薬局でも買うことのできる薬の負担はどうあるべきか。 市販品類似薬(ビタミン剤など)については、医療保険上の取扱いを見直し、半額は自己負担とすべきではないか 市販品類似薬は医療保険の対象から外すべき (4名)
市販品類似薬について自己負担割合の引上げを試行すべき (6名)
市販品類似薬は現状のまま保険適用を続けるべき (0名)
その他 (1名)  (注:重複あり)

主な意見

論点1について

  • (「先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担とすべき」について)中期的に検討
  •  医師、薬剤師から先発品・後発品の主なリストを患者さんに提示する義務を課すことについて検討すべき
  • 診療報酬(薬価等)は後発品薬価に合わせて設定(一物一価の原則)
  • 先発品薬価との差額は自己負担。必要であればこの自己負担をカバーする民間医療保険の普及を計る。
  • 保険者(健保等)に後発医薬品の使用を加入者に促す(指導する)ようにさせる。
  • 後発医薬品のシェアの目標値(H24年度まで30%)が達成できなかったときの措置(例:診療報酬の見直し)を予め明らかにしておく。
  • 必要であれば先発品に係る情報提供コストは別途“手当て化”する(情報提供料を設ける)。
  • 新薬(後発品のない先発品)は下げるべきでない。(後発品のある)先発品については、価格を下げる方法ではなく、患者に対して後発品に関する情報(患者が選択できるような情報)を十分に与えるように医療機関、薬局に義務づける。(一覧表として説明する等)
  • 上記の情報を提供した上で先発品を求めた人には差額の一部を自己負担とすべきである。これにより先発品の価格を下げる圧力が高まる。ただし、中期的には、薬価を下げることにならなければ、先発品の薬価を思い切って引き下げるなど段階的に対策をとる。
  • 後発品一般論ではなく、効能、価格などを具体的に説明するなど(一覧表にするなど)、啓発、周知するべき。
  • 根拠なき安心代、誤解代を保険で払うことはおかしい同じ効能のものは公定価格は同じにすべき。
  •  「後発品についての周知・啓発」よりも差額を自己負担にしたり、先発品価格を下げること(これは医師の負担ということ)の方がスピーディーにすすむ「先発品の薬価は、後発品の薬価を目指して大幅に引き下げる」・「先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担とする」を優先すべき。
  • 短・中期的には後発薬の普及を進めるため薬価の差額の一部を自己負担とすべき。
  • 医薬費には保険料、税金の公費が投入されており、安い価格の薬を義務付ける。
  •  (「先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担すべき」について)「差額の一部」ではなく「差額全額」を自己負担とすべき。
  • 特許が切れている後発品は、極めて安い薬価に国が決めるべき。その一つの方法は入札制度。
  • 原則公的保険を使う場合後発薬のある薬種については最も価格の安い薬の使用を義務付ける。
  • ①長期収載品の価格形成の問題(④参考)の方が大きい。市場でもし公正に決まっているならば、それに従うべき。但し、保険でカバーする範囲は限定すべき。(②参考)
  • ②(「先発品薬価と後発品薬価の差額の一部を自己負担すべき」について)賛成。参照価格制度を遠くない将来に導入すべき。
  • ③(「後発品についての周知・啓発をもっと進めるべき」について)賛成。処方せん様式を再考すべき。後発品への変更を認めない場合には、「理由」を記述するなど。また、一貫して認めない医師にはヒアリングを行なうべき。)
  • ④薬価調達の実態が必ずしも明らかになっていない。本当に価格の分布は正規分布か?左側にゆがんでいれば、平均をとるのはよくない。中央値をとるべき。薬局(大規模チェーン店)の調達もしているのか?総価取引によるバイアスはないのか?

論点2について

  • 薬によっては、保険対象から外し、薬によっては自己負担割合を引上げるべき。
  • 窓口価格が安いだけで、大きなコストがかかっている。国民が知らぬ間にムダ遣いを行わせる悪い制度。
  • 類似薬全てではなく、一定の限定をかけるなどの配慮は必要。
  • 薬は診療とセットであるので、全て医療保険の対象から除外するのではなく、市薬品類似薬の効能やその存在と薬名等を示した上で、自己負担割合を市販品価格と同等程度まで引き上げることによって、患者と医療機関・薬局との間の情報格差を小さくする。
  • 薬の飲み残しを避けるためにも、市販品類似薬は特に2~3 日分に限定するなど最低限の少量処方とする。
  • 医療データの整備を早急に進める。
  • 問題のある医療機関・保険者があれば、その適正化を図る。
  • (医療保険の)対象から外すべきだが、暫定的な措置として、市販品類似薬について自己負担割合の引き上げを実施すべき。
  • ①(市販品類似薬は医療保険の対象から外すことについて)賛成。厚労省はまずそのリストをつくり、それから審議会で議論すべき。ex.シップ薬。
  • ②(市販品類似薬について自己負担割合の引上げを試行することに)賛成。
  • ③(市販品類似薬は現状のまま保険適用を続けることについて)①のように取り組みを始めるべき。
  • (市販品類似薬について自己負担割合の引上げを試行すべきことについて)
     1 割/3割 VS 10割 という差がつくのはおかしい。

 CBニュース記事にもあるように、冒頭「後発医薬品と先発医薬品と価格差があるのはおかしい、理由がわからない」などの質問が集中、厚労省の担当者は「情報の差」などと答えていましたが、仕分け人の方には薬価算定の仕組みがどうも理解ができなかったようです。

 特に、 「原則公的保険を使う場合後発薬のある薬種については最も価格の安い薬の使用を義務付ける」というのは、現場の流通の状況を全く軽視した発言であり、厚労省もこういったヒアリングのときは可能な限り後発品の実際の販売数や供給可能数も示さないとだめですね。(未だにエパデールSの後発品など、いくつか安定供給されていないものもある)

 先発医薬品の大幅引き下げは私はむずかしいと思う。それよりも、後発品の価格帯をなるべく小さくする、グループ化するなどして、国民にわかりやすい価格の仕組みにする必要がありますね。(議論を聞いていると薬局が薬価差で儲けているのではないかとの誤解を生みかねない)

 「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」があるのにどうして 「後発医薬品の推進のロードマップを作成」などと書かれていまったのでしょう?(実行されていない? 知られていない?)

 また今回の議論で、患者さんに後発品の取扱い状況を伝える手段として薬情が利用される方向になることは高いですね。(一方で後発品の在庫確保や最低薬価の品目も紹介するかどうかという問題もある)

 さらに、市販類似薬については、ビタミン剤、シップやうがい薬どもが例にのぼりました。仕分け人から出された「窓口価格が安いだけで、大きなコストがかかっている。国民が知らぬ間にムダ遣いを行わせる悪い制度。」(=薬局よりも病院でこれらが安くもらえたとしても、積もり積もれば結果的に保険財政を圧迫し、保険料や税金に跳ね返る)というのはもっともな意見です。(フランスの場合も確か、全額まず払ってあとで償還されるという仕組みだったはず。日本でもコストをある程度意識してもらう何らかの仕組みも必要かも)

 受診時定額負担がもし暗礁に乗り上げれば、医療部会の反対意見があったとしても、この市販類似薬の試行的負担率アップの話は出てくるかもしれませんね。

 今後厚労省は市販類似薬のにリストの提出を中医協に求められると思いますが、一般用医薬品の成分としてリストアップされているかどうかでラインが引かれるのでしょうか? (OTCにもなっている薬なら、先発品ではなく後発品で十分との機運も生まれるかも)

関連情報:TOPICS
 2011.11.21 市販品類似薬、半額は自己負担にすべき(提言型政策仕分け論点)
 2011.11.09 後発医薬品の使用促進に必要な環境整備(中医協論点)
 2011.06.17 参議院厚生労働委員会質疑(6月16日)
 2011.06.13 長期高額医療の患者負担をどう軽減するか
 2010.04.08 OTC薬は病院でもらう場合と比べた割高感の払拭も必要(厚労相)

関連記事:
医療介護CBニュース11月22日
 http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36038.html
m3.com 医療維新11月22日(要会員登録)
 http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/144847/
FNNニュース11月22日(動画あり)
 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00212096.html

11月22日 23:00更新


2011年11月22日 21:05 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    医療保険部会は、6日「議論の整理」を取りまとめて公表しています。

    社会保障審議会医療保険部会における議論の整理について
    (厚労省 2011年12月6日)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001x5ik.html

    市販医薬品の価格水準を考慮して医薬品の患者負担を見直すとの考え方については、「診療報酬体系が複雑化するおそれがあるといった意見や過度な患者負担を求めるべきでないといった意見があった」「市販医薬品については、消費者が自ら選択して服薬するものであり、医師の処方による医療用医薬品とは性質が異なることや、使用方法が異なるものの負担を比較することは困難であるという意見もあった」として、事実上次回の改定で、市販薬の自己負担額のアップという議論は先送りになったようです。

    受診時定額負担もおそらくなさそうだし、高額療養費の負担軽減の財源はどこから捻出するのでしょう。

    長期収載品の追加引下げなども検討されているようですが、一番心配なのは、診療報酬(特に調剤報酬)本体への影響があるのではないかということです。(政治決着がつくまではまだ予断を許さない)