世界ドーピング機構(WADA:World Anti-doping Agency)(http://www.wada-ama.org/en/)はこのほど、WADA禁止表国際基準で禁止物質として指定されているクレンブテロールが食肉の肥育目的で使用され、この食肉を摂取したことが原因とされる陽性事例が報告されたことを明らかにしています。
Athletes must show caution due to contaminated meat
(WADA 2011.11.23)
http://www.wada-ama.org/en/News-Center/Articles/Athletes-must-show-caution-due-to-contaminated-meat/
クレンブテロールの食物汚染に起因するドーピング問題についての注意喚起
(日本アンチ・ドーピング機構 2011.12.16)
http://www.playtruejapan.org/downloads/release/20111216/Attention_clenbuterol.pdf
以前の記事(TOPICS 2011.05.14)でも紹介しましたが、日本では喘息や泌尿器系治療薬として使われているクレンブテロール(スピロペント錠)はβ作用薬ですが、WADAでは蛋白同化薬として区分しその使用を禁止しています。
これまでも、クレンブテロール検出による違反例は相次いで報告されていましたが、中国やメキシコでの食肉汚染をWADAが正式に認めたことになります。(海外からの輸入食品は日本では確かチェックされていると思ったけど。また、これまでの違反例の取扱いはどうするのだろう?)
WADAでは、各国選手がこういった国で競技会に参加する場合には、競技会主催団体などが指定するレストランで食事をとることや指定以外のレストランで食事をとる場合には多人数で食事をすることを呼びかけています。(もし、クレンブテロールが検出されても食べ物が原因であると推定できるからだと思う)
また、競技会の開催国においては汚染された肉が提供されないよう、開催国や開催者は十分気を付けるよう求めています。
ちなみに中国やメキシコではこんな話題も。肉をたくさん食べて動悸・頻脈や胸部不快感を訴えたら疑えということか。(β刺激作用ですね)
メラミンより毒性が強いクレンブテロール食中毒が発生=中国浙江省
(大紀元 2011.11.17)
http://www.epochtimes.jp/jp/2008/11/html/d30670.html
クレンブテロール食中毒、肉 メキシコ(ハリスコ州)
(食品安全情報blog 2010.06.25)
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100625#p1
肉を食べてドーピング陽性
(世界のサッカー情報 2011.10.18)
http://footballintheworld.seesaa.net/article/231019101.html
関連情報:TOPICS
2010.06.14 ドーピングの話題を3つ
2011.06.14 薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2011年版
2011.05.14 クレンブテロールとドーピング
2011年12月17日 15:20 投稿
クレンブテロールは2009年現在、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジル、韓国、メキシコ、など26か国で、養豚の赤身肉に承認されています。日本では、食品安全委員会で申請がストップしていますので、輸入品は違法になります。
コメントありがとうございます。
ということは、メキシコ・中国以外でもいくつかの国では現地で食べる食肉に含まれているという可能性があるということですか?
輸入された食肉自体は問題なさそうですが、例えば現地で汚染された食肉(程度にもよりますが)で加工品を製造、それを日本に輸入した際に検査をすりぬけ、私たちが口にするということはないのでしょうか?
養豚の赤身肉に26か国で承認されているのは、クレンブテロールではなくラクトパミン(成長ホルモン様作用をもつ)でした。クレンブテロールは動物用医薬品ですので、食品には使用できませんし、厳しく規制されています(ADI 0.004μg/kg体重/日 )。
お詫びして訂正します。
輸入をすり抜けたクレンブテロール汚染加工食品をどの位食べると副作用(気管支拡張作用)を発現するのか試算しました。
2009年度は3件違反があり、最も高かったのは豚串カツ0.16μg/kgでした(厚労省)。無作用量は0.042μg/kg体重/日で(食品安全委員会)、体重60kgとすると2.52μg/日となり、副作用が発現するには15.8kgの豚串カツを食べることになります。豚肉の1日当りの摂取量はmax.300g程度ですから、違法ですが深刻になることはありません。
コメントありがとうございます。
検査をすりぬけても副作用を起こすほどの影響はないにしても、もしアスリートが口にしたらどうなのでしょう?
日本自転車競技連盟が補足情報を出しています。
クレンブテロールの食物汚染に起因するドーピング問題についての注意喚起
(日本自転車競技連盟2011.12.20)
http://jcf.or.jp/?p=20288
補足情報有難うございます。
中国とメキシコでの競技に参加する場合は、推奨されたレストラン等以外での飲食を避けるように。WADAは個別のケースごとに対応するとのことで、法的に取り締まれないことを前提に消極的に対応しているのですね。飼料添加物とドーピングの世界も、「茶のしずく石鹸」と同様、食品(飼料)と医薬品(化粧品)の狭間にあるようです。