欧州医薬品庁（EMA）の医薬品委員会（CHMP）のファーマコビジランス作業部会（PhVWP）の10日の発表（TOPICS 2012.01.11）に合わせて、英医薬品庁（MHRA）でも12日、Drug Safety Update で関連情報を公表しています。
Statins: risk of hyperglycaemia and diabetes
（Volume 5, Issue 6 January 2012）
http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/DrugSafetyUpdate/CON140667
（日本語訳概要）医薬品安全性情報Vol.10 No.04
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/04120216.pdf#page=5
タイトルの通り、スタチンと高血糖・糖尿病のリスクを示したもので、PhVWPと同様に、全体的なベネフィットがリスクを上回るとしながらも、スタチンの使用と新規発症糖尿病（NOD:new onset diabetes）の関連性を支持するエビデンスがあるとして、医療専門職向けのアドバイスを明記しています。
またこのリスクは既に糖尿病にかかっている人に高く、また、「高血圧の既往歴がある人」「中性脂肪が高い人」「BMIが高めの人」もリスク要因になるとしています。
MHRAでは、こういったリスク要因がある患者ついては国の指針に沿って生化学的データをモニターすべきとするとともに、これらのリスクはスタチン間でも差異がある可能性があるとしています。
一方で、スタチンによる心臓血管病リスクの減少は糖尿病のリスクを上回るとして、このアドバイスを持ってスタチン治療をやめる理由とはならないとしています。
となると、心臓血管病のリスクが少ない人に数値が高めというだけでスタチンを予防的に使用することは、本当に必要なのかどうか、また議論になるかもしれません。
特に閉経後で数値が高くなりやすい女性などはどうなるのでしょう。先日紹介した下記論文の結果も気がかりです。（論文紹介記事もアップ。アジア系でリスクが高く、痩せている人でもというのが気にかかる）
Statin Use and Risk of Diabetes Mellitus in Postmenopausal Women in the Women’s Health Initiative
（Arch Intern Med.2012;Online First: January 9, 2012）
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/archinternmed.2011.625
閉経後の脂質異常症治療薬で糖尿病リスク1.5倍―米研究
（あなたの健康百科 2011.01.12）
http://kenko100.jp/news/2012/01/12/01
Drug Safety で引用している論文
Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials.
（Lancet 2010; 375: 735–42.）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20167359
Predictors of new-onset diabetes in patients treated with atorvastatin: results from 3 large randomized clinical trials.
（J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1535–45）
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/57/14/1535
Risk of Incident Diabetes With Intensive-Dose Compared With Moderate-Dose Statin Therapy
（JAMA 2011; 305: 2556–64.）
http://jama.ama-assn.org/content/305/24/2556.full
関連情報：TOPICS
2012.01.11 スタチンと糖尿病発症リスク他（EMA・PhVWP）
2011.01.20 心臓病の既往歴がない人にスタチンは必要か（コクランレビュー）
2010.10.21 長寿のためのコレステロールガイドラインに日医などが反対声明
2月16日 リンク追加
2012年01月14日 00:20 投稿
