民間の医薬品監視機関の「薬害オンブズパースン会議」はSSRIについて、性機能障害(性欲減退、勃起不全、射精障害等)や、衝動性亢進(興奮、攻撃性、暴力など)により、殺人を含め、犯罪事件となる例が見られるとして、医師(薬剤師)に対して充分な注意喚起を行うため、添付文書の「警告欄」にこれらの事項について記載するよう求める要望書を12日、厚労省や製薬メーカーなどに提出しました。
抗うつ薬SSRIに関する要望書提出
(薬害オンブズパーソン5月12日)
http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=606
要望書によれば、日本では添付文書に、自殺企図に対して注意喚起する記載は多いが、攻撃性等の他害行為に関する記載は、「小児等への投与」の項で、「敵意(攻撃性、敵対的行為、怒り等)、激越、情動不安定」(パキシル)など程度は少ない一方、今後SSRIは、適応拡大や一般医による軽症うつ病治療での処方機会が増えるなどとして、「警告」および「重大な副作用」の欄に独立した項目として記載するなどの「添付文書の改訂」が必要であるとしています。
また、性機能障害についても海外では日本の添付文書での記載以上の頻度で発現しており、これらは一過性ではなく、数か月から2年にわたって持続する例も報告されているとして、性機能障害に対して十分な注意喚起を行うため「警告」および「重大な副作用」の欄に独立した項目として記載するなどの「添付文書の改訂」が必要であるとしています。
さらに要望書では、これらの副作用についての実態把握が必要ともしています。
例えば性機能障害については、診療の場ではあまり触れられない項目だが、欧米では「専属」のカウンセラーを医療機関に配置するなどして対応が行われているとして、わが国でも、相談機能を含めた情報公開システムとともに能動的な情報収集による実態調査が必要としています。
また、衝動性亢進については、国内外の関連性が疑われる犯罪や事件を示し、弁護人にSSRIによる衝動性亢進についての基礎知識がないために薬剤と犯罪行為との関連性が見過ごされているケースがありうる等として、SSRIに起因した衝動性亢進による犯罪行為に関する実態調査が必要であるとしています。
関連情報:
Antidepressants and violence: problems at the interface of medicine and law.
(PLoS Med. 2006 Sep;3(9):e372.)
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)
(薬害オンブズパーソン・調査研究の対象)
http://www.yakugai.gr.jp/inve/fileview.php?id=67
5月13日 16:30掲載
2008年05月13日 16:30 投稿
厚労省は、この問題について本格的な調査を開始したようです。
抗鬱薬服用で攻撃的反応 厚労省が副作用調査へ
(産経新聞 2009年3月7日)
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090307/bdy0903070122000-n1.htm
抗うつ薬で暴力など42件 厚労省が因果関係調査
(47News 2009年3月7日 共同通信配信)
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030701000438.html
朝日新聞 2009年3月7日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200903070002.html
FNNニュース2009年3月8日
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00150780.html
上記記事によれば、2004年から2008年秋までの4年半の間に、パキシル、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトのSSRIを服用した服用した患者に、他人に暴力をふるうなど攻撃性が高まる症状が表れたとの報告が計42例(寄せられているそうです。
内訳は、「バイクをけったり、車を殴る」「男子高校生が『このままでは人を殺してしまう。刑務所に入れてくれ』と要望した」など、暴力をふるう(19例)、興奮して落ち着きがなくなる(23例)などだそうです。
42例のうちパキシルが28例でGSKによれば、うち5例は因果関係が確実としているそうです。
ただ、こうした事例の中には、鬱病以外に使用されていたケースや相互作用による可能性もあるとして、さらなる精査を行うとのことです。