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医薬品・くすりに関する情報です

海外におけるアリルイソプロピルアセチル尿素の規制状況メモ(未定稿)

本成分は現時点では濫用等のおそれのある医薬品に指定されていないが、多くの研究者などから、依存性に対する懸念が示されている

>頭痛や生理痛に効く痛み止めに含まれる『アリルイソプロピルアセチル尿素』にも依存性があります

【オトナンサー】
10代の「市販薬」乱用者急増…ネット販売解禁と関係は?
わが子が乱用していたら?
https://otonanswer.jp/post/51844/

そしてこのような苦言も

>こうした成分の中には、体への影響が問題視されて現在の医療現場で使われなくなったものもありますが、発売当時に認められた市販薬をコントロールする規制がないので、現在もそのまま販売されています。

一般用医薬品のデータベースを見ても配合されている製品はかなりありますが、その有用性はどこにあるのか?

本邦では、アリルイソプロピルアセチル尿素は古くから使われていて、以前は総合感冒薬にも配合されていたことが伺える。

>19701965年に「かぜ薬の承認基準」が設けられた時、ブロムワレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素については主作用が催眠作用であるため使用できる薬剤から削除された

【ファルマシア  7(2) p157-159,1971】
かぜ薬の承認基準および地方委譲について(セミナー)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/7/2/7_KJ00009822689/_pdf/-char/ja

当時の日刊薬業記事を見ると、基準からの削除に対しては業界が強く反対していたことが伺えます

配合にこだわった理由は何だったのか、振り返る必要があるのではないのでしょうか?

日刊薬業のアーカイブ記事検索
https://nk-arch.jiho.jp/

  • 1961年に睡眠薬遊びの流行が社会問題化したため、注意習慣性医薬品として指定告示され、広告自粛が行われ、未成年者への販売を止めるなどの行政指導をする方針が示された(1961.11.10)
  • 1965年の「かぜ薬の配伍・効能基準」の局長通達で、ブロムワレリル尿素と共に配合が認められた(1965.05.10)
  • 1970年の「かぜ薬の承認基準(案)」に対し、医薬全商連は、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素は薬理作用からして存置すべきで、また、有効成分の一日最大分量の減量は「有効量」として期待できないと指摘した意見書を厚生大臣に提出(1970.02.18)
  • 日本製薬団体連合会も「かぜ薬の承認基準改訂案」に対して、削除理由が納得しがたいとして陳情を検討(1970.04.30)
  • 日本薬剤師会は「かぜ薬の承認基準改訂案」に対して、現行通りに復活されたいとする要望書を厚生大臣に提出(1970.06.24)
  • 6月29に開催された中央薬審一般用薬特別部会で、要望書を検討した上で、認めないことを決定(1970.07.01)

また、登録販売者試験問題作成に関する手引きにも依存性についての懸念がはっきりと記されている。

   (b) ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素いずれも脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用がある。少量でも眠気を催しやすく、それにより重大な事故を招くおそれがあるため、これらの成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物や危険を伴う機械類の運転操作は避ける必要がある。

また、反復して摂取すると依存を生じることが知られており、そのため、これらの成分が配合された医薬品は、本来の目的から逸脱した使用(乱用)がなされることがあることに留意が必要である。

試験問題作成に関する手引き(令和6年4月)(p73)
https://www.mhlw.go.jp/content/001243494.pdf#page=82

そこで、海外の販売や規制状況を調べたが、本成分についてはほとんど承認自体がされていないことが、豪州の当局の資料で明らかになっている

Apronal (allylisopropylacetylurea)についての豪TGAの評価書(p26-28)

【TGA 2022.04.29】
Consultation: Proposed amendments to the Poisons Standard – ACCS, ACMS and joint ACCS/ACMS meetings, June 2022(p26-28)
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/consultation-proposed-amendments-poisons-standard-accs-acms-and-joint-accsacms-meetings-june-2022.pdf#page=26

 Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素 は、アシル尿素系の化合物で、分子構造がバルビツール酸に似ているため、催眠剤として作用する。Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素は、血小板減少性紫斑病を引き起こす傾向は以前から知られており、1933年に初めて報告され、1950年代を通じて専門誌に掲載された。Apronalによって生じる溶血反応は、薬物依存性抗体相互作用(The haemolytic reactions)の完全な特徴が明らかになった最初の例の 1 つであり、基礎にある免疫学的メカニズムについての知識をもたらした。

Apronalはまた、シトクロームP-450酵素活性を誘導し、薬物-薬物相互作用を引き起こす可能性がある。2022年 4月現在、オーストラリア医薬品登録簿(ARTG)60 には、Apronal またはアリルイソプロピルアセチル尿素を有効成分として含む医薬品は登録されていない。

カナダ、米国、EU の医薬品データベースには登録がない。 ニュージーランドでは処方箋医薬品として登録されている。Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素は、日本での使用が承認されており、パラセタモールおよびカフェインと組み合わせて OTC 鎮痛剤として使用されている。

そして、2022年10月に示された暫定決定では、次のように示されている

Apronal (allylisopropylacetylurea)についての豪TGAの暫定決定(p22-25)

【TGA 2022.10.21】
Notice of interim decisions to amend (or not amend) the current Poisons Standard
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/2022-10/notice-of-interim-decisions-on-proposed-amendments-to-the-poisons-standard-acms-38-joint-acms-accs-31-accs-34-meetings-june-2022.pdf#page=22

 この成分が示す公衆衛生上のリスクは、この成分への適切な一般アクセスが存在しない程度まで、その使用から得られる利益を実質的に上回ると確信している。

この成分がアセトアミノフェンやカフェインと混合された市販の鎮痛薬に日本で使用されていることは認めるが、それらの製品に使用される用量は、この物質が鎮静剤として使用される場合よりもかなり低い。

この成分が現在、オーストラリア医薬品登録(ARTG)に登録されている製品では使用されていないことに注目しており、これはEU、NZ、カナダ、米国の規制と一致している。

私は、事前会合の通知に対して寄せられた一般からの提出物を読み、検討し、大多数がこの提案を支持していることに留意した。

最近の国内報道でも同様の懸念が指摘がされている

>解熱鎮痛薬に含まれるアリルイソプロピルアセチル尿素は、出血しやすくなる血小板減少性紫斑病を引き起こすリスクが海外で報告され医療現場では長らく使われていない(医療用医薬品で配合されているものには、SG配合顆粒がある)

【47NEWS/共同通信 2023.12.05】
市販薬の乱用が急増 依存しやすい成分含有  女性の生きづらさ背景か
https://www.47news.jp/10034663.html

これを踏まえ、TGAでは2023年5月、アリルイソプロピルアセチル尿素(apronal)を含むEVEブランドの製品は重大な健康リスクをもたらすため、消費者に摂取しないよう警告を行った

【豪TGA 31 May 2023】
EVE Allylisopropylacetylurea tablets
https://www.tga.gov.au/news/safety-alerts/eve-allylisopropylacetylurea-tablets

特定の製品名まで示され、厳しい対応がとられていることがうかがえる

 オーストラリア医薬品庁(TGA)は、アリルイソプロピルアセチル尿素(apronal)を含むEVEブランド製品を服用することは重大な健康リスクをもたらすとして、消費者に警告を発し、オーストラリア国内での販売、供給、使用を禁止している。

apronal は催眠鎮静剤で、危険な副作用のためオーストラリアでの臨床使用が中止され、世界のほとんどの国で使用が禁止されている。医薬品や化学薬品は、公衆衛生と安全を守るために必要な、医薬品や化学薬品の入手を規制するレベルに応じて、スケジュールに分類される。

apronal は毒物取締法の別表10に記載されており、販売・供給・使用を禁止するほど健康に危険な物質とみなされている。apronal は、成分表示にアリルイソプロピルアセチル尿素と表示されているEVEブランドの輸入製品(オーストラリアでは使用・販売登録されていない)に含まれている

  • EVE Quick for Headache
  • EVE Quick for Headache DX
  • EVE A
  • EVE A EX.

TGAは、オーストラリアで未登録の治療用医薬品を輸入、広告、供給することは違法であることを、消費者や企業に喚起している。

また、本成分との関連が疑われる、多発性固定疹の副作用報告が少なくないことも留意する必要がある。

なお隣国韓国では、アリルイソプロピルアセチル尿素が配合された日本同様の製品は販売されている。

これだけ、依存性や副作用の懸念が示されているのに、アリルイソプロピルアセチル尿素をアセトアミノフェンおよびカフェインと組み合わせて OTC 鎮痛剤として使用され続ける理由はどこにあるのか。

大包装品も認めるなか、配合による有用性や安全性のエビデンスがあるのか、厚労省やメーカーはその根拠を示す必要があると思う。

2024.08.23更新


海外におけるプソイドエフェドリン等、エフェドリン類の規制状況メモ(未定稿)

プソイドエフェドリン、エフェドリン、メチルエフェドリンなどのエフェドリン類は、高血圧・脳卒中・心筋梗塞を引き起こす危険性があることが知られている。

また、エフェドリンは痩身目的や娯楽的使用への懸念、プソイドエフェドリンやエフェドリンの原末は覚醒剤原料に指定されており、メタンフェタミンの密造への懸念がついて回る。

現在、エフェドリンは内服薬としてはほとんど使用されておらず、海外では外用薬として使われている国もある。

日本で頻用されるメチルエフェドリンは薬効がよりマイルドで、かつ覚醒剤の密造に転換されにくい成分としたエフェドリンの誘導体であるが、海外での使用例はほとんど聞かない。

一方、エフェドリン類にはこれ以外に、鼻みず,鼻づまり等の症状の緩和を目的に、医療用一般用に広く配合されてた塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)(覚醒剤原料)という成分があった。この成分は欲抑制剤として濫用されることがあり、過量服用者などから出血性脳卒中が報告され、本邦でも2003年に製造中止が求められ、代替してプソイドエフェドリン(PSE)が切り替えとなった。

【医薬品・医療用具等安全性情報 No.193 2003.9】
塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する 医薬品による脳出血に係る安全対策について
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0124.html#gai

しかし、この代替となったプソイドエフェドリンについても心血管リスク懸念がついてまわり、フランスなどでは、健康リスクを考慮して、短期使用にとどめるなどの対策がとられている。

最近では、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)および可逆性脳血管収縮症候群(RCVS)のリスクが支援され、各国当局は注意喚起を行っている。

本邦ではプソイドエフェドリンはこういった経緯で登場したことから、安全性を示すデータが不足しており、一般用・医療用いずれについても、こういった健康リスクについてはあまり重視されていない。

本邦でも、過量使用、長期連用に伴う健康リスクと覚醒剤密造の懸念という面で、数量規制を厳格に行う必要があると考える

以下に、プソイドエフェドリンの各国の規制状況を示したい

国名 OTC/RX 包装や規制等
スペイン
(1982)
OTC  1日最大360mg
アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤
英国
(1994)
OTC  1日最大120mg
プソイドエフェドリン720mg、エフェドリン180mg超は処方箋医薬品
ブルガリア OTC アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤
チェコ OTC アセトアミノフェンやイブプロフェンとの合剤・一人当たり1週間に最大720mgのPSEを含む1パックまで
・1人1ヶ月あたり1,800mgまで – 薬局は販売記録センター(central register)に売上を記入し、同じ週にその製品が特定の人に販売されていないことを確認しなければならない
・インターネットによる通信販売は禁止されている。
デンマーク  RX
フィンランド RX
 フランス OTC 合剤 薬剤師管理下 広告禁止

(表外追記参照)

 ドイツ OTC 合剤
 ギリシャ OTC 合剤
 ハンガリー OTC  イブプロフェンとの合剤
イタリア OTC 合剤
リトアニア OTC  合剤
オランダ RX 心血管リスクから1989年にRXに
ノルウェー  RX
ポルトカル  OTC  アセトアミノフェンやイブプロフェン等との合剤
ルーマニア OTC
スロバキア OTC  合剤
スロベニア  OTC   合剤
スウェーデン 未承認
スイス  RX
オーストリア OTC  アセトアミノフェンやイブプロフェン等との合剤
ベルギー OTC  最大パックサイズ 360mg(60mg×6)
 クロアチア OTC  アセトアミノフェンやDXM等との合剤
エストニア OTC
アイルランド OTC  1日最大240mg
アセトアミノフェンや抗アレルギー剤等との合剤
ポーランド OTC   最大パックサイズ 720mg(60mg×12)
ルクセンブルク OTC   最大パックサイズ 360mg(60mg×6)
 マルタ  OTC  合剤
 キプロス OTC  合剤
 豪州 OTC すべてのPSE含有製剤は、現在、スケジュール3の要薬剤師薬に分類され、販売ごとに薬剤師が関与することが義務付けられている。一箱あたり720mg以上のPSEを含むすべての製剤は処方箋のみに移行し、販売には医師の処方箋が必要となった。

患者は写真付き身分証明書を提出しなければならず、薬剤師はリアルタイムのオンライン・データベース「Project STOP」に記録することを奨励しており、短期間に複数の薬局から少量の医薬品を購入することを防ぐのに役立っている。

ニュージランド OTC 2003 年にPSEはクラス C の規制薬物 (1975 年薬物乱用法のスケジュール 3) に再分類1回投与量あたり60 mg以下(徐放性製剤の場合は240 mg)で、1800 mg以下を含むパッケージで供給されるPSE製剤は、処方箋なしで薬局で販売可

2011年、PSE と EPH は Class B1 drugs となり処方箋医薬品に再分類  フェニレフリンへの代替が進んでいたので、消費者から大きな苦情や疑問はなかった

2024年に政権の枠組み変更から要薬剤師薬に再分類 代替のフェニレフリンの有効性に疑問が出たことも原因

薬剤師による販売の可否の判断と販売記録が必要

 米国 OTC  FDAは2006年に以下の規制を導入・PSEはカウンターの後ろか、鍵のかかるキャビネットに保管しなければならない(薬局および薬局以外の店舗)

  • 購入者は身分証明書を提示しなければならない
  • 小売業者は販売記録を文書で保存しなければならない
  • パックのサイズは1.8gに制限され、取引は1パックに制限される。
  • 1日の購入量は3.6gまで(2パックまで)
  • 30日間で90gまで
メキシコ 販売禁止 メタンフェタミン密造の懸念
コロンビア 販売禁止 メタンフェタミン密造の懸念
グアテラマ 販売禁止 メタンフェタミン密造の懸念

参考
【AESGP】
OTC Ingredients
https://otc.aesgp.eu/

【MHRA】
Safety Public Assessment Reports
https://www.gov.uk/guidance/safety-public-assessment-reports

【Mail Online 2023.02.24】
How Sudafed drug behind safety review is controlled across the world
https://www.dailymail.co.uk/health/article-11785603/How-Sudafed-drug-safety-review-controlled-world.html

●フランスにおける安全対策

2017年12月18日より広告が禁止

2011年12月に示された「使用は最大5日まで遵守する」「重症高血圧、冠動脈疾患、重度の痙攣の既往歴がある人、15歳未満には使用しない」などの適正使用に関する事項の徹底

【L’USINENOUVELLE 2018.01.24】
Dolirhume, Fervex, Actifed… Pourquoi les médicaments “anti-rhume” sont-ils privés de publicité ?
https://www.usinenouvelle.com/article/dolirhume-fervex-actifed-pourquoi-les-medicaments-anti-rhume-sont-ils-prives-de-publicite.N642903

このタイプの薬は、風邪の第一選択治療として使用すべきではないとして、風邪は治療しなくても 7 ~ 10 日で自然に治ることを注意し、血管収縮薬を服用する前に注意するよう呼びかける。

【仏ANSM 2022.12.14 Update】
Rhume, nez qui coule, nez bouché ? Attention : l’utilisation des vasoconstricteurs expose à des risques, soyez vigilants !
https://ansm.sante.fr/actualites/rhume-nez-qui-coule-nez-bouche-attention-lutilisation-des-vasoconstricteurs-expose-a-des-risques-soyez-vigilants

プソイドエフェドリンを風邪の症状、ウイルス性の良性上咽頭炎を軽減のために使用することを控えるよう勧告

【仏ANSM 2023.10.22】
En cas de rhume, évitez les médicaments vasoconstricteurs par voie orale !
https://ansm.sante.fr/actualites/en-cas-de-rhume-evitez-les-medicaments-vasoconstricteurs-par-voie-orale


海外におけるデキストロメトルファンの規制状況メモ(未定稿)(update)

デキストロメトルファンは多くの国でOTC化されている

若者の濫用は2000年代から急増、いくつかの国で濫用の懸念が指摘されたが、はっきりとした証拠がないことや、代替となる成分がないことから、フランスなどの事例を除いて、販売規制に踏み切る国は少ないようだ

一方で、若者の潜在的な濫用リスクから、米国などでは業界が中心となって啓発に取り組んでいる

OTC 処方箋医薬品 未承認
日本、スペイン(1982)、フィンランド(1983)、英国(1989)、クロアチア(2000)カナダ(2002)、スロベニア(2005)、スロバキア(2015)、豪州(包装制限)、オーストリア、ベルギー、中国、コロンビア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア(配合剤)、ハンガリー、アイルランド、イタリア、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、ブルガリア、ハンガリー(固形剤はRX)、ドイツ、メキシコ(包装制限)、NZ(包装制限)、フィリピン、シンガポール、米国 デンマーク、ルーマニア、スイス※OTC→Rxに再分類
2017:フランス
 スウェーデン、ノルウェー、リトアニア、ギリシャ
 1.米国

米国では鎮咳薬として最も広く使用されていたcodeineに代わって、デキストロメトルファン(DXM)が普及し、90年代からOTCとして広く使われている

ところが2000年代頃から、DXMを含むカプセル剤(OTCなどから成分を抽出し、高含量の粉末をつめたもの)によると思われる健康被害が多発し、FDAは2005年5月20日に、TALK PAPERで、DXM濫用についての警告を発出した

【アポネットR研究会 2005.06.15】
デキストロメトルファンの濫用(米国)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/topics/topics0506.html#05-06-08

【海外規制機関 医薬品安全性情報 Vol.3 No.11 2005.06.09】
FDA が dextromethorphan(DXM)の乱用に対して警告
https://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly3/11050609.pdf#page=4

2006年には、乱用状況を示す医学雑誌で報告された。

【Arch Pediatr Adolesc Med. 2006 Dec;160(12):1217-22】
Dextromethorphan abuse in adolescence: an increasing trend: 1999-2004
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2257867/

この研究はカリフォルニア中毒センターに1999年から2004年まで寄せられた、動悸や不整脈、血圧上昇や精神症状などデキストロメトルファンが原因の中毒情報1382例(今回の研究では死亡例はなかったが、全国中毒センターでは7例あり)を解析したもので、この間に数は10倍、ティーンエイジャー(9歳から17歳)の使用に至っては15倍に達したという。またティーンエイジャーで75.4%を占め、多くは15、16歳だったという。

今回の発表を受け、大衆薬の業界団体のCHPA(Consumer Healthcare Products Association)は、濫用防止のためのサイト”Stopping Cough Medicine Abuse”を開設し、親への情報提供を通じて、家庭での薬物濫用の危険性について話をするよう呼びかけた。

【アポネットR研究会 2026.12.06】
急増するデキストロメトルファンの濫用(米国)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/topics/topics0612.html#06-12-0

その後もデキストロメトルファン(DXM)含有OTC咳止め薬による濫用が後を絶たない米国では、2010年5月にFDAが、DXM濫用による潜在的リスクとベネフィットについての検討を行う諮問委員会(Drug Safety and Risk Management Advisory Committee Meeting)を9月14日に開催した。

【アポネットR研究会 2010.05.09】
デキストロメトルファン濫用問題で9月にFDA諮問委開催へ
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100505.html

諮問委員会に提出された資料によればDXMの米国における濫用は深刻で、DXMの不適切な使用による緊急治療室(ER)への受診は2004年の4,634件から、2007年には10,410件と急増しているほか、2004年から2008年までの5年間に濫用が原因のDXMによる有害事象の報告は230件に達し、うち98%の226件が重篤な事例で、このうちの102件が死亡例だったそうです。(年齢別では17歳~30歳の若者に集中)

こういったデータを踏まえ、14日の諮問委員会では次のような点が審議された

  • 濫用の可能性を示す証拠があるか
  • 濫用は特定の集団(年齢層)で確認されるか
  • CHPAが行う濫用防止の取り組みは効果をあげているか
  • さらなる対応は必要か
  • DXMをコントロールが必要な成分に指定し、処方せんによる販売のみとするか

 

【アポネットR研究会 2010.09.03】
デキストロメトルファン濫用による有害事象は少なくない(米国)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100903.html

DXMに濫用の可能性を示す薬理学的・疫学的データがあることについては合意されたものの、濫用の広がりは限定的だとして、DXMをコントロールが必要な成分に再分類し、処方せんによる販売のみとすべきとしたFDAの提案は、評決の結果9対15で支持されなかった。

DXM製剤のOTCのシェアは約90%あったとされており、これがもし処方せん医薬品になった場合、セルフメデフィケーションにおける咳症状への対応に混乱をきたすことも懸念されていた。

一方で、これを機に国を挙げて、濫用防止の啓発活動が活発化、Stop Medicine Abuse で若者向けの情報提供が行われている。

Stop Medicine Abuse
https://stopmedicineabuse.org/

上記WEBサイトのトップページには、次のようなメッセージが記され、潜在的リスクがあることを知らしている

デキストロメトルファン(DXM)は、多くの市販の咳止め薬に含まれる安全で効果的な成分ですが、10代の若者の約32人に1人 が、ハイになるためにDXMを過剰に乱用していると報告されています

また、このサイトでは濫用を防ぐための保護者向けのリーフレットも掲載されている

(DXM 啓発リーフレット A Parent’s Guide)
PREVENTING TEEN OTC~Cough Medicine Abuse
https://stopmedicineabuse.org/wp-content/uploads/2022/06/A-Parents-Guide-to-Preventing-Teen-Cough-Medicine-Abuse-English.pdf

一方、CHPAもこの活動にサポートする一方で、デキストロメトルファン乱用に取り組む姿勢を示した動画をWEBで示した

【CHPA 2021.07.01】
CHPA Takes Action to Combat DXM Abuse
https://chpa.org/about-consumer-healthcare/videos/chpa-takes-action-combat-dxm-abuse

CHPA は、会員や州議会と連携して、十代の若者によるデキストロメトルファンの乱用と闘うために断固たる行動を行っている。

なお、2012年には米国の法医学者より、高用量での使用に伴うリスクについての検討した論文が発表されている

高用量のDXMは、NMDA受容体に対してフェンサイクリジン様作用を有する。娯楽目的での高用量の使用は、躁病および幻覚を引き起こすことが判明している。

DXMは躁病、精神病、幻覚を呈する被験者において潜在的な原因物質として考慮されるべきであり、乱用者は暴力行為や自己破壊行為の危険性がある。

【J Forensic Sci. 2012 Sep;57(5):1388-94.】
Dextromethorphan abuse leading to assault, suicide, or homicide
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22537430/

日本の業界団体も、適正に使われれば問題ないというだけでなく、市販薬の潜在的な濫用の存在を認めて、こういうキャンペーン活動を通じて国民に警鐘を鳴らすべきだと思う。

2.豪州

豪州では、2024年にSchedule の見直しが行われた

デキストロメトルファンについては、豪州国内で広く誤用・乱用されているという証拠は限られているとして、また処方箋なしで入手できる唯一の乾性咳止め薬であるとして、処方箋医薬品へのSchedule変更をしないと決定された (Schedule 2・Pharmacy Medicine 但し、一包装の上限は600mg)

Notice of interim decisions to amend (or not amend) the current Poisons Standard(2004.07.26)
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/2024-07/public_notice_of_interim_decisions_-_acms44_accs38_joint_acms-accs36_-_march_2024.pdf

3.ニュージランド

2019年2月、濫用対策で、多くが処方箋医薬品となり、一部の包装についてのみ薬剤師の管理下でのみ販売ができる(Schedule 2 Restricted Medicines)ことに改められた。

【New Zealand Gazette 2019.02.25】
Classification of Medicines
https://gazette.govt.nz/notice/id/2019-go841?year=2019

【Prescriber Update 40(2): 35-36 2019.6】
Medicines classification update: November 2018
https://www.medsafe.govt.nz/profs/PUArticles/June2019/Medicines-classification-update-November-2018.htm

4.中国

ソーシャルメディアやグループチャットを通じて購入する傾向がある10代の若者の間では、DVMの乱用が依然として蔓延していた。

当局は2021年12月、この薬のステータスを処方薬にすることを調整、長期使用しても依存症や耐性にはつながらないとする医薬品情報ラベルの記述を削除、2022年12月にオンラインでの販売を禁止した。さらに、2023年2月にこの薬の製造を規制し、使用の監視を強化するための取り組みも開始した。

専門家から、過剰摂取は興奮、多幸感、幻覚を引き起こす可能性があるとして、その安全性について懸念を表明されたこともあり、カテゴリーII向精神薬に指定し、要処方箋薬へ 薬剤の管理も強化される 7月1日発効された。

【Ecns.cn 2024.05.08】
China tightens restrictions on controversial cough medicine
https://www.ecns.cn/news/2024-05-08/detail-iheafqys1340583.shtml

【Ecns.cn 2024.05.23】
Cough medicine use more restricted
https://www.ecns.cn/news/society/2024-05-23/detail-iheasacm9354283.shtml

2024.10.21 更新


海外におけるコデイン類の規制状況メモ(未定稿)

海外ではコデイン類は鎮咳薬ではなく、アセトアミノフェンなどと配合して、鎮痛薬として使われているケースが多い

各国で、レビューが行われ、依存性とアセトアミノフェンなど配合薬の大量摂取によるけんこうりすくへの懸念から、処方箋医薬品への分類変更や厳しい販売制限が行われている

成分名 OTC 処方箋医薬品
コデイン 日本、NZ、スロベニア、オランダ、スイス、エストニア(配合剤)、フィンランド(+グアイフェメネシン)、アイルランド(人目のつかないところに配置)、クロアチア(+アセトアミノフェン他)、ポーランド(+アスピリン)、マルタ、スロベニア(鎮咳)、ルーマニア、ブルガリア(+アセトアミノフェン) 英国(液剤)、伊、スイス、スウェーデン、スペイン、ポーランド、ノルウェー、ドイツ

※OTC→Rxに再分類
2002:ベルギー
(配合剤・鎮痛薬として)
2017:フランス
2018:豪州
2020:NZ
2023:ベルギー
(鎮咳薬として)
エストニア

ジヒドロコデイン 日本、英国(32錠まで)、豪州(包装制限あり) 多くの国で未承認か、RX
アセトアミノフェン+ジヒドロコデイン 日本、英国(32錠まで)、アイルランド(24錠まで)、豪州(広告不可)  
 1.英国

英国では、2009年9月3日に、英国政府の科学諮問機関であるCHM(医薬品委員会)による最近の助言に従い、codeine や dihydrocodeine(DHC)を含有する OTC 薬の乱用と依存症のリスクを防止するため,新たな勧告を通知した。

【MHRA 2009.09.03】
New advice on OTC analgesics containing codeine
https://webarchive.nationalarchives.gov.uk/ukgwa/20141206023148/http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON057115

【医薬品安全性情報 Vol.7 No.21 2009.10.15 】(上記和訳)
乱用と依存症のリスク防止のため codeine または dihydrocodeine を含有する OTC 鎮痛薬に対する規制強化を勧告
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly7/21091015.pdf

MHRAでは,今後次のような対策を行うとした

  • 今後,効能は「アセトアミノフェンやイブプロフェン,アスピリンのみで改善されない急性の中等度の痛み」のみとし,かぜやのどの痛み,咳,軽度の痛みなどの効能は削除する
  • 短期間(最大3日間)の使用に留めることを患者向け説明書やラベルに明記する
  • パッケージの正面にはっきりと’Can Cause Addiction. For three days use only’ という表示を義務づける。広告を行う場合も同様。
  • 患者向け説明書には,依存の兆候を示す症状を追記する
  • 薬局医薬品は32錠までとする

 

この発表は、事実上コデイン・ジヒドロコデインの風邪症状でのOTC配合を禁止するものとなっている。日本では,アセトアミノフェン+ジヒドロコデインというパターンのOTC鎮痛剤はないが,総合感冒薬の配合をみるとこの組合せはかなりある。

【アポネットR研究会 2009.09.04】
ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/090903.html

2011年には、Pharmacy Practice Research Trust により、薬局で購入したコデイン系医薬品でしばしば様々な問題を経験し、支援やサポートを行うさまざまなグループが存在することが証明されるとする、次のような報告書が公表され、今回の措置を支持する内容となった。

【Pharmacy Practice Research Trust 2011.11.29】
Study identifies ‘respectable addicts’ experiencing range of problems with over‐the‐counter medicines
https://pharmacyresearchuk.org/study-identifies-respectable-addicts-experiencing-range-of-problems-with-over%e2%80%90the%e2%80%90counter-medicines/

(報告書)
Respectable addiction – a qualitative study of over the counter medicine abuse in the UK
https://pharmacyresearchuk.org/wp-content/uploads/2012/11/respectable_addiction_richard_cooper_2011.pdf

この研究は、10人の薬剤師、6人の医薬品カウンター助手(medicines counter assistant、MCA)、16人の主要な利害関係(薬局組織および企業、業界代表、医療依存症利益団体、依存症および摂食障害慈善団体、臨床的視点など)者の質的な半構造化インタビューにより、OTC薬の乱用に関する現在の問題を説明し理解することを目的として行われた。

定性的研究に参加した人々は全員、アヘン剤(通常はコデイン)を含む薬の使用と、その他の薬の服用が関係していると述べており、そのほとんどが真の医学的理由で市販薬を使い始めていた。

服用量に基づく乱用には
・推奨される最大用量を決して超えない
・推奨される用量よりわずかに多い用量を使用する
・推奨される用量よりかなり多い用量を使用する
とした 3つのタイプが確認された。

全員が離脱症状を訴え、臨床的に指示された理由とは異なる理由で薬を使用し、全員が服用をやめようとした。援助や助言の入手先は、インターネットのサポーグループから医療まで多岐にわたったが、薬局にアドバイスを求める人はおらず、依存を隠す必要があるという懸念が最も大きかったようだ。

最大推奨量を超えないものから、推奨量を大幅に超えて服用するものまであった。全員が禁断症状について説明し、臨床的に指示された理由とは異なる理由で薬を使用し、全員が止めようとしていた。

援助や助言の入手先は、インターネット上の支援グループから医療行為まで様々であったが、薬局に助言を求めた者はいなかった。

しかし著者は、OTC薬中毒になったのは薬剤師、規制、メーカー、医師よりも自分自身であることを発見した。

個人は「立派な中毒者」と呼ばれ、中毒という言葉の認知と使用、そして自分自身を正常であると見せたいという願望に基づいており、違法薬物の誤用者という認識とは大きく異なっていた。

利害関係者の認識と経験から、コデインが重要な問題であることが明らかになったが、一般大衆が自分の症状を管理できるように、リスクがわかっている限り、乱用の可能性のある一般用医薬品が引き続き入手可能であることが支持された。

また、治療や支援の選択肢が不足している現状や、インターネットを通じて医薬品が入手可能であることが、安全性の懸念を高めていることについても懸念が示された。薬剤師とMCAは、addiction ではなく乱用(abuse)に言及し、購入頻度を使用して誰が薬を乱用しているかを特定し、監視と監視のアプローチを反映しました。

薬剤師は、乱用されている医薬品の種類を特定する一方で、その個人をどこにどのように紹介すればよいかを認識していないことが多かった。薬剤師は、顧客情報の不足と他の薬局からの供給を監視できないことに不満を感じていた。

主な利害関係者は、コデインが主要な懸念事項であると考え、OTC薬中毒に対する認識と治療の選択肢の欠如について懸念を示した。

3つのグループの参加者の大多数は、OTCコデインやその他の医薬品が引き続き入手可能であることに賛成しており、一般市民がそのような医薬品を入手できるようにした。 中毒のリスクが明確にされる限り、一般大衆が選択できるようにするためである。 この研究から浮かび上がったいくつかの緊張関係を特定した。

・医薬品の潜在的な危害から個人を守ると同時に、一般大衆が医薬品にアクセスできるようにすること。
・OTC医薬品は処方薬より害が少ないと考えられることが多いが、それでも中毒を引き起こす可能性があることを認識すること
・自分たちは立派でプロフェッショナルであり、他の人たちとは違うと思っている「隠れた」秘密主義の人たちに依存症サービスを提供すること

「OTC薬中毒に対する認識を高め、治療と支援の選択肢を改善することが、この研究で提起されたこれらの問題やその他の問題を解決する鍵となる

さらにMHRAでは2023年、codeine linctus (コデインリン酸塩 15mg/5mL(スプーンで1回量)の200mLの液剤)について、娯楽的使用、乱用、依存および/または禁断症状の報告が116件寄せられている 2021年には277件、2022年には243件の重篤かつ致死的な副作用があり、今年はすでに95件発生しているとして、処方箋医薬品にすべきどうかの意見募集を開始し、結果を踏まえ2024年2月20日に乱用や依存のリスクがあるため処方箋医薬品への再分類を発表した。

【MHRA 2024.02.20】
Codeine linctus to be reclassified to a prescription-only medicine because of risk of abuse and addiction
https://www.gov.uk/government/news/codeine-linctus-to-be-reclassified-to-a-prescription-only-medicine-because-of-risk-of-abuse-and-addiction

関連情報として発出された、MHRA Drug Safety Update では医療従事者が患者に提供するアドバイスとして次ぎのような情報提供が行われた。

【MHRA Drug Safety Update 2024.02.20】
Codeine linctus (codeine oral solutions): reclassification to prescription-only medicine
https://www.gov.uk/drug-safety-update/codeine-linctus-codeine-oral-solutions-reclassification-to-prescription-only-medicine

Codeine Linctusは、呼吸困難のない12~18歳の成人および小児の空咳の治療に使用されます。

Codeine はオピオイド医薬品であり、習慣性があります。 Codeine Linctus は、医療専門家による評価後の処方でのみ入手可能となります。

今回の措置は、中毒や過剰摂取のリスクを軽減するためにとられたものです。

Codeine Linctus が短期の咳の治療に有効であるという証拠は限られていますが、長期の咳(8週間以上続く)の治療に有効である可能性があります。

短期間の咳には、はちみつとレモンの混合物や咳止めなど、処方薬以外の咳止め薬があります。 薬剤師に相談するとよいでしょう。 長期的な咳がある場合は、咳の原因となっている可能性のある他の病気がないかチェックするため、さらに詳しい診察が必要になることがあります。

これは、あなたが最良の治療を受けていることを確認するためです。

依存症は、特に長期間 Codeine を服用している場合、徐々に起こる可能性があります。

服用をやめたいと思っていて、Codeine Linctus を長期間服用している場合は、処方者の助けを借りてゆっくりと服用量を減らすことが重要です。

依存症だと感じた場合は、医師に相談してください、 また、Codeine Linctus を規定量以上使用して心配な場合は、NHSのウェブサイトで助言を求めることもできます。 サポートグループや自助グループもあります。

2.豪州

 豪州ではコデインを含む医薬品は、2018 年 2 月 1 日から処方箋医薬品に再分類された

【豪TGA 2016.12.20】
Final decision on re-scheduling of codeine: frequently asked
https://www.tga.gov.au/final-decision-re-scheduling-codeine-frequently-asked-questions

再分類にあたっては、次のような報告書がまとめられた

Review of the efficacy and safety of over-the-counter codeine combination medicines https://www.tga.gov.au/review-efficacy-and-safety-over-counter-codeine-combination-medicines

Investigating the efficacy and safety of over-the-counter codeine containing combination analgesics for pain and codeine based antitussives
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/review-efficacy-and-safety-over-counter-codeine-combination-medicines.pdf


TGAでは、再分類に対して次のような情報提供を行い、その理由を明らかにしている

【TGA 2018.04.04】
Codeine information hub: Codeine use can be harmful
https://www.tga.gov.au/codeine-information-hub-codeine-use-can-be-harmful

オーストラリア人の多くは、鎮痛のために使用される低用量のコデイン(30mg未満)を含む医薬品が、コデインを含まない医薬品と比較して、追加的な効果はほとんどないことに気づいていません。

しかし、このような薬の使用は、コデインに対する耐性や身体的依存の発生など、高い健康リスクと関連しています。 耐性は、コデインが効きにくくなり、症状を同じように緩和するために、身体はますます高い用量を必要とします。 薬の服用を中止すると、重い離脱症状が現れることがあります。

これには、頭痛や筋肉痛、気分の落ち込み、不眠、吐き気、下痢などが含まれます。 これらの離脱症状のうち、頭痛や筋肉痛などは、低用量のコデイン製剤がしばしば治療に使用される症状によく似ており、誤って薬の服用期間を長くしたり、服用量を増やしたりしてしまうのです。

コデイン中毒は、オーストラリアでは事故死と故意による死亡の両方に関与しています。 高用量のコデイン含有薬は通常、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンと併用されます。

高用量のアセトアミノフェンを長期間使用すると肝臓障害を引き起こす可能性もあり、イブプロフェンを長期間使用した場合の最も深刻な副作用には、重篤な内出血、腎不全、心臓発作などがあります。

コデインは、咳や風邪の症状を和らげる薬にも使われることがありますが、これらの症状を緩和する、より安全で効果的な薬があります。薬剤師や医師に相談し、自分に合った薬を選んでください。

一方、ジヒドロコデインについては、再分類の対象とはならず、単剤を含む液剤である Rikodeineが咳止め薬として市販薬として販売されているが、GPからは乱用への懸念の声があがっている。

【NewsGP 2022.09.02】
Concerns over growing misuse of Rikodeine cough medicine
https://www1.racgp.org.au/newsgp/clinical/concerns-over-growing-misuse-of-rikodeine-cough-me

3.ニュージーランド

ニュージーランドでは、2020年11月5日から、コデインを含有するすべての医薬品は、処方箋医薬品に再分類された

【MEDSAFE 2020.10.23 Update】
Reclassification of codeine
https://www.medsafe.govt.nz/profs/class/ReclassificationOfCodeine.asp

2017年11月7日に開催された医薬品分類委員会で、初めてコデインの再分類が取り上げられ、コデインを唯一の有効成分とする医薬品を以下のように再分類することが勧告された

・処方薬(このスケジュールで別途指定されている場合を除く)
・制限医薬品。成人および12歳以上の小児が経口投与する場合、鎮痛剤として使用し、1日の最大投与量が90mgを超えないコデインを含む固形投与単位あたり15mg以下の医薬品で、3日分以下のパックで販売される場合。

Minutes of the 59th meeting of the Medicines Classification Committee held in Wellington on Tuesday 7 November 2017
https://www.medsafe.govt.nz/profs/class/Minutes/2016-2020/mccMin7Nov2017.htm

さらに、2019年10月10日に開催された医薬品分類委員会でも、コデインの再分類が取り上げられた

会議には、Information paper が提出され、コデインの分類をオーストラリアと調和させることのリスクと利点や委員会が推奨した代替案への議論が行われた

Information paper for the Medicines Classification Committee
Classification of codeine
https://www.medsafe.govt.nz/profs/class/Agendas/Agen63/MCC63_53a_Reclassificationofcodeine.pdf

上記ペーパーの p10-11 に各国の規制状況が示されている

これまでの検討と各委員の臨床経験および判断から、委員会は、特に以下の点について安全性に関して十分な懸念があると判断し、コデインを含むすべての医薬品は処方薬として分類されるべきであるとの勧告を行った

・アセトアミノフェンとイブプロフェンの配合剤での最大投与量を超えるリスクがある
・ニュージーランドおよび世界におけるコデインの乱用がある

Minutes of the 63rd meeting of the Medicines Classification Committee held in Wellington on 10 October 2019(議事録)
https://www.medsafe.govt.nz/profs/class/Minutes/2016-2020/mccMin10Oct2019.htm

この決定をうけ、2020年11月5日から、コデインを含有するすべての医薬品は、処方箋医薬品に再分類された

なおニュージーランドでは、ジヒドロコデインについては処方箋医薬品に分類されている


濫用等のおそれのある医薬品についての歴史的経緯(未定稿)

これまでの経緯をまとめてみました

薬物乱用事件は、昭和50年代から国内の米軍基地周辺などで,在日米軍兵士の間で鎮咳去痰薬シロップ剤を一気飲みし,それを一部の日本人が真似をして乱用したのが始まりとされている。

社会からの逃避の手段として乱用している人がいるという事実は認識されていたが、一方でこれらの医薬品が 20 年以上前から一般用医薬品として国民に広く,安全に使われているとして、規制の対象とならなかった。

一方で、一部の薬局・薬店が乱用者にまとめ売り等をしたために乱用が広がっていたことから、昭和62年に、「鎮咳去痰薬の内用液剤の販売について」とする薬務局企画課長通知が発出された

鎮咳去痰薬の内用液剤の販売について(昭和62年3月5日)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7091&dataType=1&pageNo=1

【医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス 43(11) p1048-1049,2012】
鎮咳去痰薬の乱用問題(薬事温故知新)
https://www.pmrj.jp/publications/02/pmdrs_column/pmdrs_column_35-43_11.pdf

その後も適正使用に係る情報提供をさらに徹底するために通知が発出された

コデインリン酸塩水和物及びジヒドロコデインリン酸塩等を含有する 一般用医薬品の鎮咳去痰薬(内)の販売に係る留意事項について(平成22年6月1日)
https://www.pmda.go.jp/files/000203206.pdf

さらに、平成26年2月に開催された薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会で、「濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量について」が示され了承された

濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000037186.pdf

このときに、ブロムワレリル尿素、 エフェドリン、プソイドエフェドリンが新たにリストに加えられた

議事録によれば、その理由として次のような説明を行っている

>平成23年には、エフェドリン類を含む一般用医薬品を大量購入し、それを原料に覚醒剤の密造が行われるという事件が発生したことを踏まえまして、エフェドリン、プソイドエフェドリンを含む医薬品について、大量又は頻回購入時に、購入理由を確認し、購入理由が不審な場合は、警察への情報提供を行うよう指導する通知を発出した

>ブロムワレリル尿素は、一般用医薬品のうち解熱鎮痛薬や鎮うん薬、これはいわゆる酔い止め薬ですが、そのほか催眠鎮静薬に配合されております。その下には医療用のブロムワレリル尿素の添付文書の内容を転載しておりますが、効能・効果は不眠症、不安緊張状態の鎮静であり、薬効・薬理としては、大脳の興奮を抑制し、鎮静・催眠作用と抗痙攣作用を示すとされています。また、医療用添付文書の重大な副作用の欄には、依存性に係る記載もされており、連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し、慎重に投与することとされております。

質問は特段出されず、審議会でこの案は了承された

2014年2月12日 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会議事録
ttps://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000051302.html

濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量は?(アポネットR 2014.02.17)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/140206.html

これを踏まえて、パブリックコメントが実施されたが、関心は低く、「総合感冒薬にも同等程度の同成分が含有されているため、鎮咳去痰薬などに限定するのはおかしい」などの意見が示されたものの「薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会における審議結果に基づき決定したものです。」として、これを受け入れることはなかった

総合感冒薬の販売規制は今後の検討課題(パブコメ結果)(アポネットR 2014.05.21)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/140509.html

一方で、その後、厚生労働科学研究で乱用の実態が次々と明らかになった

2016年に行われた研究では、乱用されている市販薬名が報告書に記され、「濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量」に指定されていない、総合感冒薬の実態が明らかになった

【2016年度厚生労働科学研究】
危険ドラッグを含む薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/26270

医薬品乱用の実態~特に市販薬(厚生労働科学研究)(アポネットR 2017.05.05)http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/170501.html

2018年に行われた研究でも、乱用されていた市販薬が示され、2019年8月の医薬品・医療機器等安全性情報で、「一般用医薬品の使用により依存が起こりうることにご理解いた だくとともに,その正確な実態をより一層把握するため,そのような疑いのある事例に遭遇した場合に は,副作用報告制度を活用した報告へのご協力をお願いいたします」とした注意喚起が示された。

【医薬品・医療機器等安全性情報 No.365 2019.8】
濫用等のおそれのある市販薬の 適正使用についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000542417.pdf

【2018年度厚生労働科学研究】
薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27495

全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(分担研究)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/183041/201824003A_upload/201824003A0005.pdf

一方、2019年に行われた厚生労働科学特別研究では、一般用医薬品による依存が疑われる事例がどの程度存在するのか、また、その購入方法や販売実態を明らかにされ、適切な販売の実施のためのガイドライン等を示された。

さらにこの報告書では、ダルクの協力を得て、主たる依存対象が一般用医薬品であった21名へのインタビューなどが行われ、次のような店頭での生々しいやりとりも紹介された。

研究班では、販売数量が制限されていない総合感冒薬(パブロン類、エスタック等)が、薬物依存・頻回購入・複数個購入の対象となっているとして、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制の在り方について、関係業界と議論する必要があると指摘している。

【2019年度厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27641

一般用医薬品の濫用の実態とその対応策(厚生労働科学特別研究)(アポネットR 2020.06.19)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/200605.html

さらに2021年の厚生労働科学研究では、国立精神・神経医療研究センターへのインタビュー(オーバードーズ(過剰摂取)の実態、オーバードーズに関する対策)、一般用医薬品による救急搬送事例調査(OTC の過量服用による薬物中毒患者の動向、OTCの過量服用を巡る問題点、OTC の過量服用の予防策など)が示された

【2021年度厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の販売における薬剤師等による管理及び情報提供の適切な方法・実施体制の構築のための研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/155838
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/21CA2003-houkokusho.pdf

こういった経緯から、新たな対策が必要とされるとして、2022年7月開催の食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会が開催された

【厚労省 2022.07.27開催】
令和4年度第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27051.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27644.html

当日は2017~2021年に日本中毒情報センターに問い合わせがあった一般用医薬品の意図的摂取例1168例を解析結果も示された

【公益財団法人日本中毒情報センター 2022.03.29】
市販薬の濫用防止に関する情報の集計及び分析一式報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000968741.pdf

これらを踏まえ、調査会では、新たに「一般用医薬品の「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直しについて」案が示された
一般用医薬品の「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000968950.pdf

この案について、パブリックコメントが行われ、2022年12月1日に開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会でその結果が公表されたが議論は深まらなかった

【厚労省 2022.12.01開催】
令和4年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29460.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33706.html

このパブリックコメントへの関心はあまり高くなかったが、デキストロメトルファンなど、濫用等のおそれのある成分を追加することを求める意見が多く寄せられた

パブリックコメントに寄せられた御意見
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001018141.pdf

議論の場は、医薬品の販売制度に関する検討会に移された

2023年3月8日に開催された、医薬品の販売制度に関する検討会では、一般用医薬品による救急搬送事例調査結果など示され、嶋根参考人によるプレゼンが行われた

【厚労省 2023.03.08開催】
第2回医薬品の販売制度に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31415.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001095908.pdf

濫用等のおそれのある医薬品について(厚労省提出)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062520.pdf

わが国における 市販薬乱用の実態と課題 「助けて」が言えない子どもたち(嶋根参考人提出資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062521.pdf


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余計なことを書いてと怒られそうと思って記事にすることをためらっていましたが。そうもいっていられなくなりました。

一大国家プロジェクトになりつつある、新型コロナウイルスワクチン接種スキームに、薬剤師は無縁ではないということです。 続きを読む


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TOPICS 2020.07.02 で、規制改革推進会議がスイッチOTCを拡大のための提言を盛り込んだ答申をまとめたことを紹介しましたが、10月28日に開催された、医療用から要指導・一般用へのこの答申への対応案が示され、これまで可否の判断で前回一致を原則とするなどの弊害が指摘されていた運営方法の見直しが決まったそうです。 続きを読む


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第1回 ツイキャス・トーク(緊急避妊薬 2020.10.16)

 10月16日22:00から、フォロワーの 高橋 秀和(@chihayaflu)、霜降りお肉(@shimofuripha)にご協力を頂いて、配信しました。ご視聴頂いた皆さんありがとうございました。 続きを読む


「緊急避妊薬、薬局で購入可能に」報道を追ってみました

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