Category Archives: 地域薬剤師

開局薬剤師の取組みを紹介します。

濫用等のおそれのある医薬品についての歴史的経緯(未定稿)

これまでの経緯をまとめてみました

薬物乱用事件は、昭和50年代から国内の米軍基地周辺などで,在日米軍兵士の間で鎮咳去痰薬シロップ剤を一気飲みし,それを一部の日本人が真似をして乱用したのが始まりとされている。

社会からの逃避の手段として乱用している人がいるという事実は認識されていたが、一方でこれらの医薬品が 20 年以上前から一般用医薬品として国民に広く,安全に使われているとして、規制の対象とならなかった。

一方で、一部の薬局・薬店が乱用者にまとめ売り等をしたために乱用が広がっていたことから、昭和62年に、「鎮咳去痰薬の内用液剤の販売について」とする薬務局企画課長通知が発出された

鎮咳去痰薬の内用液剤の販売について(昭和62年3月5日)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7091&dataType=1&pageNo=1

【医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス 43(11) p1048-1049,2012】
鎮咳去痰薬の乱用問題(薬事温故知新)
https://www.pmrj.jp/publications/02/pmdrs_column/pmdrs_column_35-43_11.pdf

その後も適正使用に係る情報提供をさらに徹底するために通知が発出された

コデインリン酸塩水和物及びジヒドロコデインリン酸塩等を含有する 一般用医薬品の鎮咳去痰薬(内)の販売に係る留意事項について(平成22年6月1日)
https://www.pmda.go.jp/files/000203206.pdf

さらに、平成26年2月に開催された薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会で、「濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量について」が示され了承された

濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000037186.pdf

このときに、ブロムワレリル尿素、 エフェドリン、プソイドエフェドリンが新たにリストに加えられた

議事録によれば、その理由として次のような説明を行っている

>平成23年には、エフェドリン類を含む一般用医薬品を大量購入し、それを原料に覚醒剤の密造が行われるという事件が発生したことを踏まえまして、エフェドリン、プソイドエフェドリンを含む医薬品について、大量又は頻回購入時に、購入理由を確認し、購入理由が不審な場合は、警察への情報提供を行うよう指導する通知を発出した

>ブロムワレリル尿素は、一般用医薬品のうち解熱鎮痛薬や鎮うん薬、これはいわゆる酔い止め薬ですが、そのほか催眠鎮静薬に配合されております。その下には医療用のブロムワレリル尿素の添付文書の内容を転載しておりますが、効能・効果は不眠症、不安緊張状態の鎮静であり、薬効・薬理としては、大脳の興奮を抑制し、鎮静・催眠作用と抗痙攣作用を示すとされています。また、医療用添付文書の重大な副作用の欄には、依存性に係る記載もされており、連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し、慎重に投与することとされております。

質問は特段出されず、審議会でこの案は了承された

2014年2月12日 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会議事録
ttps://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000051302.html

濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量は?(アポネットR 2014.02.17)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/140206.html

これを踏まえて、パブリックコメントが実施されたが、関心は低く、「総合感冒薬にも同等程度の同成分が含有されているため、鎮咳去痰薬などに限定するのはおかしい」などの意見が示されたものの「薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会における審議結果に基づき決定したものです。」として、これを受け入れることはなかった

総合感冒薬の販売規制は今後の検討課題(パブコメ結果)(アポネットR 2014.05.21)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/140509.html

一方で、その後、厚生労働科学研究で乱用の実態が次々と明らかになった

2016年に行われた研究では、乱用されている市販薬名が報告書に記され、「濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量」に指定されていない、総合感冒薬の実態が明らかになった

【2016年度厚生労働科学研究】
危険ドラッグを含む薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/26270

医薬品乱用の実態~特に市販薬(厚生労働科学研究)(アポネットR 2017.05.05)http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/170501.html

2018年に行われた研究でも、乱用されていた市販薬が示され、2019年8月の医薬品・医療機器等安全性情報で、「一般用医薬品の使用により依存が起こりうることにご理解いた だくとともに,その正確な実態をより一層把握するため,そのような疑いのある事例に遭遇した場合に は,副作用報告制度を活用した報告へのご協力をお願いいたします」とした注意喚起が示された。

【医薬品・医療機器等安全性情報 No.365 2019.8】
濫用等のおそれのある市販薬の 適正使用についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000542417.pdf

【2018年度厚生労働科学研究】
薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27495

全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(分担研究)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/183041/201824003A_upload/201824003A0005.pdf

一方、2019年に行われた厚生労働科学特別研究では、一般用医薬品による依存が疑われる事例がどの程度存在するのか、また、その購入方法や販売実態を明らかにされ、適切な販売の実施のためのガイドライン等を示された。

さらにこの報告書では、ダルクの協力を得て、主たる依存対象が一般用医薬品であった21名へのインタビューなどが行われ、次のような店頭での生々しいやりとりも紹介された。

研究班では、販売数量が制限されていない総合感冒薬(パブロン類、エスタック等)が、薬物依存・頻回購入・複数個購入の対象となっているとして、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制の在り方について、関係業界と議論する必要があると指摘している。

【2019年度厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27641

一般用医薬品の濫用の実態とその対応策(厚生労働科学特別研究)(アポネットR 2020.06.19)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/200605.html

さらに2021年の厚生労働科学研究では、国立精神・神経医療研究センターへのインタビュー(オーバードーズ(過剰摂取)の実態、オーバードーズに関する対策)、一般用医薬品による救急搬送事例調査(OTC の過量服用による薬物中毒患者の動向、OTCの過量服用を巡る問題点、OTC の過量服用の予防策など)が示された

【2021年度厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の販売における薬剤師等による管理及び情報提供の適切な方法・実施体制の構築のための研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/155838
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/21CA2003-houkokusho.pdf

こういった経緯から、新たな対策が必要とされるとして、2022年7月開催の食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会が開催された

【厚労省 2022.07.27開催】
令和4年度第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27051.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27644.html

当日は2017~2021年に日本中毒情報センターに問い合わせがあった一般用医薬品の意図的摂取例1168例を解析結果も示された

【公益財団法人日本中毒情報センター 2022.03.29】
市販薬の濫用防止に関する情報の集計及び分析一式報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000968741.pdf

これらを踏まえ、調査会では、新たに「一般用医薬品の「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直しについて」案が示された
一般用医薬品の「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000968950.pdf

この案について、パブリックコメントが行われ、2022年12月1日に開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会でその結果が公表されたが議論は深まらなかった

【厚労省 2022.12.01開催】
令和4年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29460.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33706.html

このパブリックコメントへの関心はあまり高くなかったが、デキストロメトルファンなど、濫用等のおそれのある成分を追加することを求める意見が多く寄せられた

パブリックコメントに寄せられた御意見
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001018141.pdf

議論の場は、医薬品の販売制度に関する検討会に移された

2023年3月8日に開催された、医薬品の販売制度に関する検討会では、一般用医薬品による救急搬送事例調査結果など示され、嶋根参考人によるプレゼンが行われた

【厚労省 2023.03.08開催】
第2回医薬品の販売制度に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31415.html

(議事録)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001095908.pdf

濫用等のおそれのある医薬品について(厚労省提出)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062520.pdf

わが国における 市販薬乱用の実態と課題 「助けて」が言えない子どもたち(嶋根参考人提出資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062521.pdf


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