論文・報告あれこれ 2013年10月

 他サイトではあまり紹介されていない、ちょっと気になった論文や報告などをピックアップしました。気になったものは独立記事にするかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。これから随時追加する予定なのでチェックしてみて下さい。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

 ★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。 

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
10.20 QuarterWatch
Monitoring FDA MedWatch Reports
Leading Drug Safety Issues of 2012
(ISMP 2013.10.17)

米FDA有害事象報告システム(AERS:adverse event reports)で公表された有害事象について2012年分を分析してまとめたもの。1位はダビガトラン、2位はワルワリンだった。
10.20 Publicly funded remuneration for the administration of injections by pharmacists
Can Pharm J Published Online 26 Sep 2013)
海外では薬剤師によるワクチン接種が行われていますが、それに対する公的報酬がどのくらい支払われているかどうかを調べた興味深い調査結果。インフルエンザワクチンで、米国では5ドル~20ドル、カナダでは7.5~20カナダドル、英ウェールズで9.33ポンド、アイルランドで15ユーロなど。これに薬のマージンが加わっても日本円で1500~3000円くらいというところか。
10.20 Access all areas
New solutions for GP shortages in rural Australia
(Grattan Institute Report No. 2013-11, September 2013)

GP不足の地方で、薬剤師の役割拡大を検討すべきとした豪州シンクタンクの提案。英国やカナダの独自活動なども紹介している。日本でもシンクタンクがこういった報告書を是非書いて欲しい。
10.20 Senate Bill No. 493

薬剤師の役割拡大を明記した、米カリフォルニア州の州法。州知事が署名し2004年1月から施行。
10.20 Pharmacist intervention for glycaemic control in the community (the RxING study)
(BMJ Open Published Online 24 Sep 2013)
地域薬局で2型糖尿病の管理を独立的に行うというカナダアルバータ州の11薬局で行われたトライアル
10.20 European Antibiotic Awareness Day: Resources for primary and secondary care
(英国保健省 2013.10.04)

2013年の European Antibiotic Awareness Day に向けての関連資材。クイズやクロスワードまであります。力の入れ方が違いますね。
10.20 Current initiatives to improve prudent antibiotic use amongst school-aged children
J. Antimicrob Chemother Published Online 15 Sep 2013)
抗生剤の適正使用に関する、英国での学校教育での取り組みを紹介。日本ではこういった取り組みはほとんど効いたことがないけど。
10.20 European Antibiotic Awareness Day 2012 campaign evaluation
(英国保健省 2013.09.13)
2012年に行われた European Antibiotic Awareness Day の取り組みの評価報告書。こういう報告書が作成されること自体、日本じゃとても考えられない。これくらいしないと、抗生剤の適正使用がすすまないんでしょうね。
10.20 Strategies to Minimize Antibiotic Resistance
Int. J. Environ. Res. Public Health 10 (9), 4274-4305 2013)
耐性菌の発現を最少にするためには、どのような対応策が必要かをまとめたレビュー。動物・水産物への使用についても言及している7.
10.20 医薬品ができるまで 米国の新薬検索研究プロセス-全1~5部
(PhRMA JPN)

米国における新薬承認までのプロセスを紹介した動画。諮問委などの役割や製剤研究の部分も興味深い。2007年作成の日本語版。
10.20 European Medicines Agency publishes a video explaining the concept of medicines under additional monitoring
(EMA 2013.10.01)

監視が必要な医薬品への表示が義務づけられた“black triangle”(▼)について解説したEMAの動画。英MHRAでは、 Yellow Card Schemeも合わせて紹介している。日本でもこういった仕組みを作って、患者やその家族から副作用についての報告を積極的に集めた方がいいと思う。
10.20 Stop lead poisoning in children
(WHO 2013.10.18)

玩具や壁の塗料などに含まれる鉛の中毒で発展途上国の子どもを中心に毎年推定約14万3千人が死亡しているなどとしたWHOのプレスリリース。鉛が含まれたアクセサリー類は100円ショップなどでも散見されたことがあり、日本でも他人ごとではない。
10.20 MHRA study finds no evidence that cervical cancer vaccine Cervarix causes chronic fatigue syndrome
(MHRA 26 Sep 2013)
レビューの結果、サーバリックスに慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome)の原因となるというエビデンスは見当たらないとした、英国医薬品庁のプレスリリース。
10.20  認知症ケアパス作成のための手引き
(認知症ケアパスを適切に機能させるための調査研究事業検討委員会 2013.09)

平成27年度(2015年度)からの第6期介護保険事業計画策定で作成が必要となった「認知症ケアパス」の具体的な作成プロセスを詳細に解説したもの。薬局の関わりについてはp92-93 で記述されたごくわずかにすぎないなのが残念。
10.20 SCAP法による抗精神病薬減量支援シート
(国立精神・神経医療研究センター)

統合失調症患者への抗精神病薬の適切な処方を推進する減量法ガイドライン。
10.20 災害時の薬局業務運営の手引き~薬局BCP・地域連携の指針~
(東京都 2013.09)

災害時における自薬局の業務継続および地域の関係者との連携について記載している。
10.20 Accidental death of elderly persons under the influence of chlorpheniramine.
Leg Med・法医学 Published Online 7 June 2013)
市販の風邪薬の過剰服用が原因と思われる不審死2例の報告
10.20  化学療法食の改善の取り組み
(日本農村医学会雑誌 62(2) p106-111,2013)
2010年から、がん化学療法中の入院患者の給食として導入した8日間サイクルの化学療法食について検証した江南厚生病院の報告。
10.20 ランソプラゾールに関連したcollagenous colitisの3例
(日本農村医学会雑誌 62(2) p146-150,2013)
下都賀総合病院の症例報告。慢性下痢症の鑑別診断においては、本疾患も念頭にいれて、薬剤服用歴など詳細な病歴の聴取や生検検査を含めた内視鏡精査を行なうことが重要と考えられるとした。
10.20 High Dose Atorvastatin Reduces Periodontal Inflammation: A Novel Pleiotropic Effect of Statins.
J Am Coll Cardiol. Published Online 23 Sep 2013)

高用量のアトルバスタチンは歯周炎に効果があるかもしれないとした報告。でも80mg/日となると有害事象も無視できないのでは。
10.20 Inhaled corticosteroids in COPD and the risk of serious pneumonia.
Thorax. 68(11):1029-36.2013)
COPDの患者に吸入ステロイド(ICS)を使用した場合の重篤な肺炎リスクの増加を調べたカナダのコホート研究。毎日使用した場合、ブデソニドでは有意差がなかったが、フルチカゾンでは約2倍となった
10.20 Metoclopramide in Pregnancy and Risk of Major Congenital Malformations and Fetal Death
JAMA Publised Online 16 Oct 2013)

デンマークのコホート研究、妊娠中のメトクロプラミドの使用に先天性奇形、自然流産、死産などのリスク増は認められなかった。
10.20 A methamphetamine analog (N,α-diethyl-phenylethylamine) identified in a mainstream dietary supplement
Drug Test Anal Published Online 14 Oct 2013)

運動前に服用する(プレワークアウト)スポーツサプリメントの「Craze」から、覚醒剤メタンフェタミンの類縁体が検出されたという報告。USA TODAY などで大きく報道され、製造元は販売を中止したとのこと。ググると日本でもユーザーがいるらしい。個人輸入のサイトもちらほら。食品安全情報blog によれば、サプリメント業者が「天然抽出物」と称して合成化合物を使っているのは良くある手口とのこと。怖い話です。
10.20 Smoking cessation treatment and risk of depression, suicide, and self harm in the Clinical Practice Research Datalink: prospective cohort study
BMJ Published Online 11 Oct 2013)

英国の前向きコホート研究。ブプロピオンやバレニクリンはニコチン置換療法と比較して、自殺や自傷、うつ病リスクを高めることはなかった。
 10.20 FDA approves over-the-counter Nasacort Allergy 24HR to treat hay fever and nasal allergies
(FDA 2013.10.11)

米国では初のOTCステロイド点鼻薬が承認されたとするプレスリリース。子どもへの成長に影響を及ぼすと明記した上で、2歳以上の子どもも使用可とした。
10.20 Effectiveness of a Multimodal Community Intervention Program to Prevent Suicide and Suicide Attempts: A Quasi-Experimental Study
(PLoS ONE Published Online 9 Oct 2013)

東北や九州の一部で2006年月から3年半にわたり行われた、自殺対策プログラムの検証報告。を自殺発生率が近接地域と比べて男性と高齢者で20%以上減ったとした。
10.20 Pancreatic Atrophy — A New Late Toxic Effect of Sorafenib
NEJM 10 Oct 2013)

ソラフェニブ(ネクサバール)が膵臓にダメージを与えるかもしれないとした2例の報告。
10.20 Abstracts of the 29th International Conference on Pharmacoepidemiology & Therapeutic Risk Management, August 25–28, 2013, Montréal, Canada
Pharmacoepidemiol Drug Saf
今年8月にカナダ・モントリオールで行われた、薬剤疫学や治療リスクマネジメントに関する国際会議の抄録集。全部で521ページもある
10.20 Abstracts of the Royal Pharmaceutical Society (RPS) Annual Conference 2013, 8-9 September 2013, Birmingham, UK
Int J Pharm Pract
今年9月に開催された英国王立薬剤師会の年次総会の要旨集
10.20 2013 Abstracts and Posters: Canadian Pharmacists Association Conference, Charlottetown, PEI
Can Pharm J 2013 146: S1)
 カナダ薬剤師会2013年会の抄録集
10.20 Efficacy and safety of the co-administration of tadalafil once daily with finasteride for 6 months: a randomized, double-blind, placebo-controlled study in men with lower urinary tract symptoms and prostatic enlargement secondary to benign prostatic hyperplasia
J Urol. Published Online 1 Oct 2013)
アルゼンチンで行われたRCT。タダラフィルとフィナステリドの同時投与は、前立腺肥大症や前立腺肥大の男性の早期下部尿路症状(LUTS)の改善をもたらすとした。
10.20 Risk of Serious Atrial Fibrillation and Stroke With Use of Bisphosphonates: Evidence From a Meta-analysis.
Chest 144(4):1311-22.2013)
6つの観察研究と6つのRCTのメタアナリシス。ビスホスホネートは心房細動のリスクを高めるかもしれない。発作や心血管死のリスク増はなかった。
10.20 Where to buy OTC medications?
A cross-sectional survey investigating consumers’ confidence in over-the-counter (OTC) skills and their attitudes towards the availability of OTC painkillers
(BMJ Open Published Online 25 Sep 2013)
オランダで行われた、OTC鎮痛薬の認識についての調査結果。政府が考えるほど、生活者は適切に使用する方法を知っていないとした
10.20 Misuse and Dependence on Non-Prescription Codeine Analgesics or Sedative H1 Antihistamines by Adults: A Cross-Sectional Investigation in France
(PLoS ONE published Online 3 Oct 2013)
 
10.20 Occurrence of Cardiovascular Events After the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami Disaster
Int Heart J. 2013;54(5):247-53.)
岩手県立病院の報告。東日本大震災直後に急増したのは、急性冠症候群とうっ血性心不全だったが、 脳卒中などの有意な増加は見られなかった。
10.20 Comparison of Cancer Incidence among Physician Specialists and the General Population: A Taiwanese Cohort Study
J Occup Health. Published Online 9 Apr 2013)
台湾のコホート研究。医師は医師でない人と比べて、全体ではがんの発症リスクは低かったが、女性では高かった。また、前立腺がん、乳がん、子宮頸がん、甲状腺がんなどは高かった
10.20 Maternal Smoking During Pregnancy and Bipolar Disorder in Offspring
Am J Psychiatry 2013;170:1178-1185. )

データ数が少ないけど、妊娠中の喫煙は子どもの双極性障害リスクを高めるかもしれない(調整後オッズ比 2.014)

最終更新日:2017年10月14日