2004/05/10-13 改革クラブ 会派視察

  今回の視察は、山形県長井市、福島県河東町および会津若松市を訪問した。
 各箇所の視察目的を以下に示す。

 山形県長井市
 ○レインボープランについて
  ・概要と現状
  ・導入に至るまでの問題点とその克服

 福島県河沼郡河東町
 ○日新館
  ・釋奠(せきてん)について
  ・孔子や論語に関係する取り組み

 福島県会津若松市
 ○まちづくり及び観光施策
  ・景観条例、観光振興条例、交通バリアフリーについて
  ・中心市街地活性化について
  ・県立博物館:会津若松市に建設(誘致)できたことについて




 視察行程

 5月10日(月) 足利市→長井市
        1)長井村塾にてレクチャー
        2)レインボープラン堆肥化工場を見学
          長井市泊

 5月11日(火) 長井市→河東町
        1)日新館訪問
        2)武家屋敷見学
          会津若松市泊

 5月12日(水) 1)中心市街地および会津若松城見学
        2)会津若松市役所訪問
        3)県立博物館見学
          会津若松泊

 5月13日(木) 1)飯盛山見学
        会津若松市→足利市



☆長井市視察

  長井市ではレインボープランに関する行政視察を外部委託している。したがって、
 市役所は訪問せず、民間施設である長井村塾において、市民ガイドによるレクチャー
 を受けた。
  このような取り組みも興味深いものであった。

レインボープランの概要

  基本構想は、農家と消費者との協力により相互理解を深め、地域循環システムを創
 り出すことにより、有機資源のリサイクルを図り、環境改善と健康な食生活を生み出
 し、自然と人間の永続的な共存を図っていくことにある。
  基本目標は、(1)有機物の再資源化、(2)優良堆肥の生産、(3)土づくり・有機農産物
 の生産、(4)地産地消による農産物の流通、(5)農業担い手育成、である。

○レインボープランのレクチャーより

  レインボープランは、ごみ事業として考えられたものではなく、化学肥料により疲
 弊した土を蘇らせ(土づくり)、安全で安心できる農産物を作り、食べたいという思
 いからはじまった。また、台所と農業をつなぐ計画がレインボープランであるとも言
 える。
  はじまりは昭和63年の「まちづくりデザイン会議」までさかのぼる。そして、平成
 3年に当初予算50万円で「レインボープラン調査委員会」が設立され、生ごみ分別収
 集に関する調査等を重ね、平成9年にレインボープラン・コンポストセンターが稼働
 するに至った。

 《年間の投入量》
  もみがら: 500t
  畜ふん : 500t (計2,500t) → 500t の堆肥
  生ごみ :1,500t
   ※生ごみは市の中央地区約5,000世帯から週2回分別収集される。

 コンポストセンターの管理運営費(平成13年度)
 【歳入】  3,907,625円
     (畜ふん処理手数料およびコンポスト販売収入)
 【歳出】 29,670,572円
     (人件費、修繕費、光熱水費等)
 【その他】12,688,200円
     (生ごみ収集運搬費)


市民ガイドの渡部さんと。

長井村塾ではレインボープランで栽培
された野菜の直売も行っている。

右が水切り家庭用ゴミバケツで、
左が生ごみ収集バケツ。

コンポストセンターの外観

一次発酵の様子。臭いはある。

袋詰めされた堆肥

 コメント)

  平成13年度のコンポストセンター管理運営費を見ると、生ごみ堆肥化に要する市の
 持ち出しは、【歳出】+【その他】-【歳入】で、38,451,147円(27,782円/t)となる。
 資料より、仮に1,384tの生活系生ごみを焼却処分するとした場合の処理費は、有料証
 紙収入を加味した場合、18,511円/tとなり、処理経費25,619千円が軽減されたことに
 なる。
  費用対効果を数字だけでみると、費用は【歳出】+【その他】-【歳入】の38,451千
 円で、効果が処理経費軽減分の25,619千円ということになろう。となると、12,832千
 円マイナスということになる。これでは、生ごみも焼却してしまったほうが税金の節
 約になる。
  しかし、長井市では農地の地力回復、安心で安全な農産物の提供、焼却等の環境負
 荷の軽減、環境学習等、数字では見えにくい部分の効果を考え、このレインボープラ
 ンを推進しているようである。

  長井市の人口は約3万1千人と、足利市の4分の1以下であり、このようなプラン
 をそのまま本市にあてはめるわけにはいかないであろう。しかし、長井市も現状は、
 その対象が市内中央地区の約5,000世帯に限定されていることから、市全体でなく、
 地区単位で考えれば、不可能なことではないであろう。
  いずれにしても、農業や食、それに環境等に関しての高い意識がなければ、成功し
 ないようにも感じた。



☆會津藩校日新館(福島県河東町)訪問

  「會津藩校日新館」は、全国で初めて当時の施設をそのまま忠実に復元した野外歴
 史博物館で、総面積3万8000坪(足利学校は5500坪)の中に大成殿をはじめ
 文武両道の教場を建て、藩政時代の教育の姿を再現している。


日新館の入口は風格がある。

大成殿。
ここで釋奠(せきてん)が行われている。

大成殿に祀られている孔子像。
近くには合格祈願の札もある。

国体にも使われた弓道場

 コメント)

  規模も施設の内容も足利学校に比べ、充実していると言わざるを得ない。
  また驚いたのは、會津藩校日新館と会津武家屋敷は、民間が補助金なしに建設し、
 経営していた点である。

  施設はレプリカではなく、弓道場は実際の競技会(平成7年福島国体)にも使われ
 ている。さらに、宿泊施設も備え、武道以外に礼儀作法などの体験学習もできる点は、
 たいへん興味深い。体験学習はリピーターの需要を生むことにも役立っているようで
 ある。
  また、この日も来ていたが、修学旅行をはじめ、子供の教育にもいろいろと役立つ
 施設である。足利学校も市民向けの足利学校公開講座や足利学校アカデミー、小中学
 生対象にサマースクールを開催している。日新館の取り組みを参考に、足利学校の生
 きた使い方を研究していきたい。


  さらに、会津若松市に移動して「会津武家屋敷」を見学した。

  こちらも大変大きな規模で、現在NHKで放映中の「新撰組!」のロケにも使われ
 たとのことだった。一通り回るのに最低でも1時間はかかる。



☆会津若松市訪問

  市役所を訪問し、まちづくり及び観光施策に関して、景観条例の概要、中心市街地
 活性化の取り組み、 交通バリアフリーについて話をお伺いした。
  さらに県立博物館が会津若松市に建設(誘致)できたことについてお伺いした。

  中心市街地活性化基本計画は、中心市街地約200haの住居環境の整備と、鶴ヶ城
 や飯盛山といった郊外に位置している観光地から、観光客を市内に呼び込む、まちな
 か観光の推進が2本の柱である。
  実際の街づくりはTMO(Town Management Organization:まちづくり機関)
 株式会社まちづくり会津により進められている。

  まちづくり会津では、さまざまな事業を行っているが、唯一黒字になっているのは
 中心市街地にある駐車場管理運営事業とのことだった。
  また、平成13,14年には商店街の空店舗を安価で貸し出し、独立創業を支援するチャ
 レンジショップ事業を行ったとのことだった。そして、出店した14店舗のうち6店舗
 が現在独立しているとのことで、本年度もあらたに実施を計画している。

  足利市は県下第2の都市であるが、市の職員が勤務する県立図書館しか県の施設が
 ない。一方、会津若松市は県下第4の都市であるにもかかわらず、県立博物館がある。
 この点について、会津若松市に誘致できた経緯についてお伺いしたが、昔のことなの
 で詳しいことはわからなかった。
  わかったことは、当時の知事が会津ゆかりの人であり、かつ福島県全体の均衡ある
 発展を考えていたことと、市が県に働きかけたのも事実のようである。


野口英世が手術をした旧病院。
現在は1階が喫茶店、2階が
野口英世青春館になっている。
歴史的景観指定建造物

野口英世青春通り

七日町通りの蔵を活かした建物

旧黒河内胃腸病医院

郷土にゆかりのある人物を紹介する
案内板が市内に散在している。

あいづっこ宣言

市内を循環するハイカラさん号

飯盛山。
新潟からの修学旅行生。

 コメント)

  まちづくりに関して、本市との大きな違いは、古いものを大切にする、それを活か
 すという発想があるかどうかであると感じた。
  本市では路地を壊して区画整理をする計画もあるようだが、会津若松市では路地を
 壊すという発想そのものがなかったようである。ここにまちづくりに対する考え方の
 大きな違いを感じた。
  また、民間主導で行政はそのサポートであるという姿勢も感じられた。

  飯盛山だけでなく、今回訪れた日新館、武家屋敷、鶴ヶ城いすれでも修学旅行や野
  外学習などの子供達と遭遇した。
  また、市では修学旅行生にGPS付きの携帯電話を無料で貸し出し、市内観光の促
 進も行っている。大変参考になった。