本成分は現時点では濫用等のおそれのある医薬品に指定されていないが、多くの研究者などから、依存性に対する懸念が示されている
>頭痛や生理痛に効く痛み止めに含まれる『アリルイソプロピルアセチル尿素』にも依存性があります
【オトナンサー】
10代の「市販薬」乱用者急増…ネット販売解禁と関係は?
わが子が乱用していたら?
https://otonanswer.jp/post/51844/
そしてこのような苦言も
>こうした成分の中には、体への影響が問題視されて現在の医療現場で使われなくなったものもありますが、発売当時に認められた市販薬をコントロールする規制がないので、現在もそのまま販売されています。
一般用医薬品のデータベースを見ても配合されている製品はかなりありますが、その有用性はどこにあるのか?
本邦では、アリルイソプロピルアセチル尿素は古くから使われていて、以前は総合感冒薬にも配合されていたことが伺える。
>19701965年に「かぜ薬の承認基準」が設けられた時、ブロムワレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素については主作用が催眠作用であるため使用できる薬剤から削除された
【ファルマシア 7(2) p157-159,1971】
かぜ薬の承認基準および地方委譲について(セミナー)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/7/2/7_KJ00009822689/_pdf/-char/ja
当時の日刊薬業記事を見ると、基準からの削除に対しては業界が強く反対していたことが伺えます
配合にこだわった理由は何だったのか、振り返る必要があるのではないのでしょうか?
日刊薬業のアーカイブ記事検索
https://nk-arch.jiho.jp/
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また、登録販売者試験問題作成に関する手引きにも依存性についての懸念がはっきりと記されている。
(b) ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素いずれも脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用がある。少量でも眠気を催しやすく、それにより重大な事故を招くおそれがあるため、これらの成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物や危険を伴う機械類の運転操作は避ける必要がある。
また、反復して摂取すると依存を生じることが知られており、そのため、これらの成分が配合された医薬品は、本来の目的から逸脱した使用(乱用)がなされることがあることに留意が必要である。 |
試験問題作成に関する手引き(令和6年4月)(p73)
https://www.mhlw.go.jp/content/001243494.pdf#page=82
そこで、海外の販売や規制状況を調べたが、本成分についてはほとんど承認自体がされていないことが、豪州の当局の資料で明らかになっている
Apronal (allylisopropylacetylurea)についての豪TGAの評価書(p26-28)
【TGA 2022.04.29】
Consultation: Proposed amendments to the Poisons Standard – ACCS, ACMS and joint ACCS/ACMS meetings, June 2022(p26-28)
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/consultation-proposed-amendments-poisons-standard-accs-acms-and-joint-accsacms-meetings-june-2022.pdf#page=26
Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素 は、アシル尿素系の化合物で、分子構造がバルビツール酸に似ているため、催眠剤として作用する。Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素は、血小板減少性紫斑病を引き起こす傾向は以前から知られており、1933年に初めて報告され、1950年代を通じて専門誌に掲載された。Apronalによって生じる溶血反応は、薬物依存性抗体相互作用(The haemolytic reactions)の完全な特徴が明らかになった最初の例の 1 つであり、基礎にある免疫学的メカニズムについての知識をもたらした。
Apronalはまた、シトクロームP-450酵素活性を誘導し、薬物-薬物相互作用を引き起こす可能性がある。2022年 4月現在、オーストラリア医薬品登録簿(ARTG)60 には、Apronal またはアリルイソプロピルアセチル尿素を有効成分として含む医薬品は登録されていない。 カナダ、米国、EU の医薬品データベースには登録がない。 ニュージーランドでは処方箋医薬品として登録されている。Apronal / アリルイソプロピルアセチル尿素は、日本での使用が承認されており、パラセタモールおよびカフェインと組み合わせて OTC 鎮痛剤として使用されている。 |
そして、2022年10月に示された暫定決定では、次のように示されている
Apronal (allylisopropylacetylurea)についての豪TGAの暫定決定(p22-25)
【TGA 2022.10.21】
Notice of interim decisions to amend (or not amend) the current Poisons Standard
https://www.tga.gov.au/sites/default/files/2022-10/notice-of-interim-decisions-on-proposed-amendments-to-the-poisons-standard-acms-38-joint-acms-accs-31-accs-34-meetings-june-2022.pdf#page=22
この成分が示す公衆衛生上のリスクは、この成分への適切な一般アクセスが存在しない程度まで、その使用から得られる利益を実質的に上回ると確信している。
この成分がアセトアミノフェンやカフェインと混合された市販の鎮痛薬に日本で使用されていることは認めるが、それらの製品に使用される用量は、この物質が鎮静剤として使用される場合よりもかなり低い。 この成分が現在、オーストラリア医薬品登録(ARTG)に登録されている製品では使用されていないことに注目しており、これはEU、NZ、カナダ、米国の規制と一致している。 私は、事前会合の通知に対して寄せられた一般からの提出物を読み、検討し、大多数がこの提案を支持していることに留意した。 |
最近の国内報道でも同様の懸念が指摘がされている
>解熱鎮痛薬に含まれるアリルイソプロピルアセチル尿素は、出血しやすくなる血小板減少性紫斑病を引き起こすリスクが海外で報告され医療現場では長らく使われていない(医療用医薬品で配合されているものには、SG配合顆粒がある)
【47NEWS/共同通信 2023.12.05】
市販薬の乱用が急増 依存しやすい成分含有 女性の生きづらさ背景か
https://www.47news.jp/10034663.html
これを踏まえ、TGAでは2023年5月、アリルイソプロピルアセチル尿素(apronal)を含むEVEブランドの製品は重大な健康リスクをもたらすため、消費者に摂取しないよう警告を行った
【豪TGA 31 May 2023】
EVE Allylisopropylacetylurea tablets
https://www.tga.gov.au/news/safety-alerts/eve-allylisopropylacetylurea-tablets
特定の製品名まで示され、厳しい対応がとられていることがうかがえる
オーストラリア医薬品庁(TGA)は、アリルイソプロピルアセチル尿素(apronal)を含むEVEブランド製品を服用することは重大な健康リスクをもたらすとして、消費者に警告を発し、オーストラリア国内での販売、供給、使用を禁止している。
apronal は催眠鎮静剤で、危険な副作用のためオーストラリアでの臨床使用が中止され、世界のほとんどの国で使用が禁止されている。医薬品や化学薬品は、公衆衛生と安全を守るために必要な、医薬品や化学薬品の入手を規制するレベルに応じて、スケジュールに分類される。 apronal は毒物取締法の別表10に記載されており、販売・供給・使用を禁止するほど健康に危険な物質とみなされている。apronal は、成分表示にアリルイソプロピルアセチル尿素と表示されているEVEブランドの輸入製品(オーストラリアでは使用・販売登録されていない)に含まれている
TGAは、オーストラリアで未登録の治療用医薬品を輸入、広告、供給することは違法であることを、消費者や企業に喚起している。 |
また、本成分との関連が疑われる、多発性固定疹の副作用報告が少なくないことも留意する必要がある。
なお隣国韓国では、アリルイソプロピルアセチル尿素が配合された日本同様の製品は販売されている。
これだけ、依存性や副作用の懸念が示されているのに、アリルイソプロピルアセチル尿素をアセトアミノフェンおよびカフェインと組み合わせて OTC 鎮痛剤として使用され続ける理由はどこにあるのか。
大包装品も認めるなか、配合による有用性や安全性のエビデンスがあるのか、厚労省やメーカーはその根拠を示す必要があると思う。
2024.08.23更新
2024年08月18日 16:54 投稿