フランス当局のANSMの投稿を見て知ったのですが、日本の薬局医薬品にあたる、薬剤師の関与の下に販売できる医薬品のカテゴりー(Médicaments en accès direct、直接アクセス医薬品)があるとのこと。
Actualisation de la liste des #médicaments présentés en accès direct dans les pharmacies
↪️Pour accéder à la nouvelle liste : https://t.co/V4oZC383xZ
↪️Dernière décision : https://t.co/TFpac1dPyB pic.twitter.com/scz7pVI2JQ— ANSM (@ansm) March 26, 2025
この直接アクセス医薬品は、治療上の適応症、治療期間、添付文書に記載された情報により、処方箋がなくても、R. 4235-48条に規定されている薬局薬剤師の具体的なアドバイスを受けて使用することが許可されるとのこと。
【ANSM】
直接アクセス医薬品(Médicaments en accès direct:DAM)
https://ansm.sante.fr/documents/reference/medicaments-en-acces-direct
医療従事者向け情報
Médicaments en accès direct : Informations pour les professionnels de santé
https://ansm.sante.fr/documents/reference/medicaments-en-acces-direct/medicaments-en-acces-direct-informations-pour-les-professionnels-de-sante
「薬局で直接入手できる医薬品」に関する政令の公布により、地域の薬剤師は「薬局医薬品」として知られる一連の医薬品を一般に提供できるようになりました。
セルフメディケーションの一環として医薬品にアクセスし、選択することを容易にすることにあります。
一般向け情報
Médicaments en accès direct : Informations pour les patients
https://ansm.sante.fr/documents/reference/medicaments-en-acces-direct/medicaments-en-acces-direct-informations-pour-les-patients
(このカテゴリーは)軽度または中等度の痛み、発熱、風邪、のどの痛み、口唇ヘルペス、偶発的な胃食道逆流症など、一般的で良性の症状を、医師の介入なしに薬剤師の助けを借りて限られた期間治療することを目的とした医薬品を指します。
これらは、薬局にのみ特別に確保されたスペースで直接入手できます。すべての薬局が直接アクセスできる医薬品を提供しているわけではありません。これらを提供するかどうかの決定は薬剤師に委ねられます。
これらの薬は、症状が軽度である限り、短期的な治療を目的としています。推奨される治療期間は状況によって異なります。説明書に記載されていること、または薬剤師のアドバイスに従ってください。
こちらが薬局で直接入手できる対症療法薬の治療適応症の指標リスト
LISTE DES INDICATIONS/PATHOLOGIES/SITUATIONS CLINIQUES RECONNUES COMME ADAPTEES A UN USAGE EN PMF (2015.02.19)
https://ansm.sante.fr/uploads/2020/10/26/20201026-med-acces-direct-pathologies.pdf
PMF:Prescription médicale facultative(処方任意薬)
(具体的症状あり)
皮膚疾患
目疾
胃腸障害
耳鼻科疾患
上気道症状
口腔のトラブル
婦人科疾患
外陰膣真菌症
– 局所避妊、殺精子剤
– トイレ、外部婦人科ケア
– 生理痛
循環障害
– 静脈リンパ不全の機能的徴候:足が重い
– 痔瘻クリーゼに伴う機能的徴候の治療
– 軽度の外傷:打撲、挫傷(打撲、打ち身、たんこぶ)
リウマチ性疾患
– 外傷後水腫の補助的治療
– 軽度の外傷に対する短期の局所治療:捻挫、打撲など。
– 変形性関節症の有痛性再燃に対する対症療法。
– 筋肉や腱靭帯由来の痛みの局所補助治療
– 筋けいれん
その他
疼痛
– 疼痛および/または発熱状態の対症療法
– 頭痛、インフルエンザ、歯痛、痛み、生理痛など、痛みや発熱がある場合に用いる。
痛み、生理痛
– 片頭痛は、少なくとも一度は医師の診断が必要である。
– 禁煙/一時的禁煙
睡眠障害
– 軽度の睡眠障害
無力症
– 一時的な疲労
– 以下の症状がいくつか重なると、マグネシウム不足が疑われる:
– 神経質、イライラ、軽い不安感、一時的な疲労感、軽度の睡眠障害
– 消化器けいれんや動悸などの不安症状(健康な心臓)
– 筋肉のけいれん、しびれ
こちらが具体的リスト
去痰薬など、保険償還対象になっていないものなどが含まれている
Liste des médicaments de médication officinale en allopathie, homéopathie et à base de plantes (25/03/2025)(エクセルファイル)
https://t.co/L5UxAAKq2Y
こういった制度の背景には、フランス独自の事情があります。
フランスでは、心臓病薬での副作用、人口乳房埋め込み型シリコン剤での副作用により、医薬品行政への信頼が低下しているとされる。
また、公的保険医療へのアクセスはかなりよいとの認識が一般的でもあり、セルフケアへの必要性への認識が低いとも言われる。
このため、フランスにおけるスイッチ OTC 化は、規制制度の保守的傾向および企業側の慎重な姿勢によって従来から抑制されてきた。
このほかにもスイッチ OTC 薬が比較的少ない理由として、フランスの法律でセルフメディケーション用製品に対する明確な定義が示されていないことが挙げられる。(Afipa による Afipa:ANSMの前身の当局)。
フランスの非処方せん薬の分類は複雑であり、非処方せん薬とはいわず、処方任意薬(Prescription médicale facultative:PMF)といわれる。PMF であっても償還される場合もある。
処方せんが必要とする医薬品は、毒性があると判断される(リストに掲載)ものであり、毒性成分から除外されることにより PMF に再分類される。このプロセスがいわゆる「スイッチ」に相当する。
フランスの医薬品は、処方せんの必要性、償還有無とで分類される。
– 処方せん有無による分類
処方せん医薬品(Médicaments de prescription):
保険償還の対象となる医薬品である(図の RX)が、医療上の必要性により償還率が異なっており、鎮痛剤のように一部は 0%償還(100%自己負担)のものもある(図の Médicaments de prescription non remboursables)。
処方せんが必要とする医薬品は、毒性があると判断される(リストに掲載)ものである。
新規物質(新 INN)は、すべて毒性成分リストに掲載される。
処方せん任意医薬品(Prescription médicale facultative:PMF):
処方せんがなくとも購入できる医薬品。毒性成分から除外されることにより PMF に再分類される。
– PMF での償還有無による分類
毒性成分リストに入っていない医薬品であれば、PMF であっても償還対象となるものもある(図の OTX)。
償還対象とするかどうかは、償還を判断する高等保健機構(Haute Authorite Sante:HAS)の審査による。
処方任意であるため、医師の処方せんにより調剤されることもあり、この場合は、償還される。
償還価格は公定である。
任意処方で償還されない医薬品(図の OTC)。
自由販売医薬品(Pure OTC)とも言われ、約 400 品目程度とされる。
一般的に処方せんでは取り扱わない償還対象外の医薬品であるが、薬局内でしか売ることができず、薬局内でも薬剤師の立つカウンターのそばの専用のラックに置くことが義務付けられるなど、英国の GSL などに比べ厳しい規制のもとにおかれる。
広告の規制:
PMF は、消費者への広告宣伝が可能な大衆用薬(produits grand public)と、薬剤師による対面販売に限定されるカウンセリング薬(produits conseil)にさらに分類される。
一般には、PMF となった時点で広告可能となるが、PMF であっても処方せん薬、償還対象の場合は、広告は禁止である。
例えば、パラセタモール(アセトアミノフェン)は、鎮痛剤として使用される場合はとして使用される場合は処方薬であり、広告禁止となる。
オルリスタットはテレビ広告は禁止されている。
【2013厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/22253
分担3
英独仏における一般用医薬品および体外診断薬の承認プロセス(p32-)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/131031/201305012A_upload/201305012A0007.pdf
日本のOTCというのは、実態は米国のようにどこの小売店でも販売できるような仕組み。
一方、それ以外の国では、日本のような「処方箋医薬品ではない医療用医薬品(OTC類似医薬品)」という仕組みはなく、処方箋医薬品でないものは、薬剤師の関与の下で販売ができるということなのでしょう。
改正薬機法で、医療用医薬品の原則処方箋が必要という販売制限はやっぱりおかしいと思います。
関連情報:TOPICS
2025.04.20 フランスにおける医薬品償還率
2025年04月20日 19:31 投稿