救急医療提供体制における遠隔医療等の可能性(厚労省調査事業)

救急医療機関受診の適正化に向けて、救急医療に関係する遠隔医療等の事例収集を行い、それらの分析を踏まえ、急性疾患における遠隔医療の現状を把握するとともに今後の救急医療提供体制における遠隔医療等の可能性についての論点を整理

調査は日本総研が委託して行っている

【日本総研 2025.04.23】
厚生労働省 令和6年度地域医療基盤総合推進調査事業 実施報告
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=110920

救急医療機関受診の適正化に向けた、軽症の急性疾患等に対応するための遠隔医療等の活用に関する調査研究報告書(2025.3)
(令和6年度医療施設運営費等補助金厚生労働省 地域医療基盤総合推進調査事業)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/2504_kawachimaru.pdf

軽度の急性疾患に対応するオンライン診療は救急搬送困難事例の抑制、医療機関のひっ迫の抑制、初期救急体制の不足の補完のために導入されている。

他にも、急性疾患に対応するオンライン診療は、患者の受診判断の補助や在宅医療の補助、災害時に対する備えとして活用が期待されている。

本事業では、軽度の急性疾患を対象として遠隔医療の活用の現状を把握するとともに、今後の救急医療提供体制において、遠隔医療というツールを活用した新たな方策を検討するための議論に資する論点整理を行うことを目的として調査を実施した。

以下目に留まったところを抜粋

軽度の急性疾患を経験した(軽度の救急疾患を経験されて救急外来に行かれた方ないし救急車を呼んだ)市民に対してオンライン診療の利用の実態

救急外来を利用時の症状

  • 発熱 44.6%
  • 吐き気など 15.9%
  • 息苦しさ 11.8%
  • 咳 10.3%
  • 意識がおかしい 19.5%
  • けいれん 17.3%

オンライン診療の導入に対する期待

  • オンライン診療は移動がなくても医療を提供できるため、今後普及が進めば消防の救急車の利用の抑制に繋がることが期待できる。
  • #7119 や#8000 は比較的オーバートリアージ気味になっている。受診の案内があっても、交通の手段がないということが地域によっては往々にしてある。#7119 や#8000 は
    次としては対面の一次救急であるが、その間にあるもの、としてオンライン診療に期待ができるものかと思っている。オンライン診療の導入により、不要不急な受診が減れば、救急医療機関への負担軽減が期待できると考えられる。
  • #7119 や#8000 で看護師さんがトリアージをするパターンと、医師だけで実施をするパターンとでは、受診をする数が 20%から 1%に減ったという報告がある。やはり医師が直接間に入ることが大事と考える。
  • 地方では医師が高齢化しており、在宅診療をやる先生は増えてはいないという状況である。そのため地域の中で、在宅医に求める役割もなかなか期待できなくなっている中で、オンライン診療を含めたあり方というのは考えていかなければならない。
  • 完全に患者さんのセルフメンテナンスだけに頼るとプライマリケアがなかなか難しいところがあり、そのバランスをどう政策的に考えていくのかというのは、厚労省を中心に是非お考えいただけるといいと思っている。

薬局の在り方を含めた薬の受け渡しに関する議論

  • 一次救急であり休日診療所が夜間となるため、すぐにお薬が欲しいという方が比較的多く、ここは色々な議論が起こった経緯があるが、やはり配送ができるようにしたい、という議論も同時に始めているような状況である。
  • 薬の配送に関して、ロジスティクスのところが今の課題。 今までやっている休日診療所まで家族か誰かに取りに来てもらおう、というのが今の落としどころである。
  •  薬が到着するまでの間や検査を実施するための間は、症状が進行したり、不安が蓄積してしまったりするため、夜に 119 番をかけるといったことにも繋がってしまう。そのため、1日でも早く薬の提供や検査を実施することができるように、今後の対応として、規制緩和も含めて対応していただく必要がある。
  • 迅速キットが薬局で購入できる、と言う部分は患者さんにとっても非常に利便性が高いはずであるため、そういったものは制度としてきちんと進めていくとよいのかと思う。
  • ただ一方で薬局が夜間祝日などに開いていない地域もあるため、この辺りは薬剤師会も含めて、地域のインフラとしての薬局の役割と言うものの中に入れていただければ、だいぶ医療への負担が減ってくるのではないかと思っている。
  • オンライン診療では実際の検査ができないため、その辺りは薬局と連携をしてみるのも一案かと思う。

今回の調査はあくまで救急医療におけるオンライン診療の活用ではあるが、いっそのこと軽度疾患はもっと地域薬局で完結できるという発想と調査研究を行うことはできないのだろうかと思った。

若干触れてはいるが、休日夜間も営業していないことも多い実態はあるものの、地域薬局を医薬品の単なる供給先だけでなく、世界標準であるファーストアクセスとして地域薬局を機能させるというアクションを起こさないといけないと思った。

なお、本研究成果については後日、日本総研ホームページにて公開されるとのこと。


2025年04月24日 20:01 投稿

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