論文・報告あれこれ 2013年5月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
05.25 Risk of incident diabetes among patients treated with statins: population based study
BMJ Published Online 23 May 2013)

スタチンの使用で糖尿病のリスクが高まることが最近知られるようになりましたが、この研究はスタチンの種類ごとにリスクに差があるかどうかを調べた研究。プラバスタチンと比較して、糖尿病のリスク増加の調整ハザード比は、ロスバスタチンで1.18、アトルバスタチンで1.22、シンバスタチンで1.10で有意に高かった。
05.25 Feverish illness in children
(NICE May 2013)

NICEのクリニカルガイドライン。小児の発熱時にどのように考えたらいいかまとめたもの。2007年5月の改訂版。アルゴリズムになっている NICE Pathways もわかりやすい(→リンク)。
05.25 Access to clinical trial information and the stockpiling of Tamiflu
(NAO 2013.05.21)

新型インフルエンザ対策に行われているタミフルの備蓄は税金の無駄使いなどとして、疑問を投げかけた英国会計検査院(NAO)の報告書(日本ではこういう報告書はまずありえない)
05.25 Long-Term Proton Pump Inhibitor Use is Associated with Vascular Calcification in Chronic Kidney Disease: A Cross-Sectional Study Using Propensity Score Analysis.
(Drug Saf. Published Online 14 Mau 2013)
長期のPPI の使用と慢性腎臓病で見られる血管石灰化の関連を調べた断面調査。大動脈と回腸動脈の石灰化で検討したところ関連性が認められた。ワルファリンが併用されるとさらにオッズ比は上昇した。
 05.25 Use of QT-prolonging medications in US emergency departments, 1995–2009
(Pharmacoepidemiol Drug Saf Published Online 21 May 2013)
米救急部門を受診する患者でQT延長が指摘されている医薬品の処方頻度を調べた研究。多かったのは、ジフェンヒドラミン、アジスロマイシンとオンダンセトロンだった。
05.25 LDL-cholesterol and body mass index among Japanese schoolchildren: a population-based cross-sectional study
(Lipids in Health and Disease Published Online 24 May 2013)
埼玉県伊奈町の小中学生を対象に行われた断面調査。BMIとLDL-C値の間に統計学的関連性があるとした。
05.25 Migraine in Adults: Preventive Pharmacologic Treatments
(AHRQ Comparative Effectiveness Reviews)
偏頭痛の予防薬の評価のページ(→リンク)が興味深い
05.25  Gabapentin Therapy of Hiccups
Ann Pharmacother. Published Online 14 May 2013)

しゃっくりにガバペンチンが有効であるかどうかを調べたレビュー。17症例と2症例ケースを検討、第二次選択として有用ではないかとした。(調べたところ、ハロペリドールやクロルプロマジン、バクロフェンやニフェジンでも有効ではないかとの報告があるとのこと)
05.25 A Cross-Sectional Survey of the Association between Bilateral Topical Prostaglandin Analogue Use and Ocular Adnexal Features
PLoS ONE Published Online 1 May 2013)

緑内障治療で用いられるプロスタグランジンアナログが眼瞼下垂の原因になるかもしれないとした研究。眼窩骨膜脂肪(The loss of periorbital fat)が失われる可能性を指摘。
05.25 Soda and Other Beverages and the Risk of Kidney Stones
CJASN Published Onlilne 15 May 2013)

飲料類と腎結石の発症リスクを調べた大規模前向きコホート研究。(8年以上を追跡調査) コーラなどの砂糖の入ったソーダ類でリスクが高くなったが、コーヒーやお茶、ビールやワイン、オレンジジュースではリスクが低くなった
05.25 One in ten teens using “study drugs,” but are parents paying attention?
(National Poll on Children’s Health  2013.05.20)

高校1年(10th-graders)の10人に1人、高校3年(12th-graders)の8人に1人が、リタリンなどを学力向上目的で使用しているという報告。(今は“study drugs”っていうんだ)
05.25 Oral Glucosamine Supplements as a Possible Ocular Hypertensive Agent
(JAMA Ophthalmol. Published Online 3 May 2013)

グルコサミンが緑内障のリスクを高める可能性があるとしたResearch Letter(ログインなしで何とか読める)。因果関係は示されていない。
05.25 GW501516 – Serious Risks Associated With the Use of the Unauthorized Product – For the Public
(Health Canada 2013.05.24)

WADAも健康リスクについて警告している、GW501516 の不正使用について、GSKとの異例のコラボでの注意喚起
05.25 Effects of a Sitagliptin Safety Alert on Prescription Behaviour for Oral Antihyperglycaemic Drugs: A Propensity Score-Matched Cohort Study of Prescription Receipt Data in Japan.
Drug Saf. Published Online 23 May 2013)
以前、SU剤にシタグリプチンを上乗せすることにより低血糖が起こるとして、SU剤を減量すべきととした注意喚起が行われましたが、実際にどの程度処方が変わったかを知らべた東大の研究。
05.25 Nonprescribed use of tranquilizers or sedatives by adolescents: a Brazilian national survey
BMC Public Health Published Online 24 May 2013)
思春期の子どもの間でトランキライザーや鎮静剤の処方せんなしでの使用が広がっているかを調べたブラジルの調査結果
05.18 A Review of Potential Ha May rmful Interactions between Anticoagulant/Antiplatelet Agents and Chinese Herbal Medicines.
PLoS One. 2013 May 9;8(5):e64255.)
生薬と抗血小板薬/抗凝血薬との相互作用についてレビューしたもの。(あとできちんと読んでみます)
05.18 Antibiotic treatment in patients with chronic low back pain and vertebral bone edema (Modic type 1 changes): a double-blind randomized clinical controlled trial of efficacy.
Eur Spine J. 2013 Apr;22(4):697-707.)

海外では結構話題になっている抗生剤の長期服用が慢性腰痛に効果があるとしたRCT。クラブラン酸+アモキシシリン(オーグメンチン)の服用で慢性腰痛の40%が治るとのことだが、100日も服用するらしい。NHS CHOICES では、抗生物質は症状を楽にするのを助けるかもしれない、しかし、慢性的な背中の痛みの基礎をなす原因を修正することができるという決定的証拠は現時点ではないとした。
05.18 Prescription Opioids for Back Pain and Use of Medications for Erectile Dysfunction
Spine . 2013 May 15;38(11):909-15.)

オピオイドの長期使用でEDに?
05.18 食事・運動・薬の知識共有する社会基盤づくりが不可欠
(MediCon. 2013.05)
セルフメディケーション推進協議会の村田正弘氏が投稿。現在の地域薬剤師は本来業務である「健康管理」がおろそかになっていると指摘した上で、地域薬局は食事、運動を軸とした健康推進の地域のまとめ役、さらに不具合が生じた場合の相談対応、医療機関への紹介など「健康交番」機能が本来の業務であり、使命であり、ここに回帰してほしいとした。
05.18 学校において予防すべき感染症の解説
(文科省)
登校( 園) の基準なども記されている。目を通しておいた方がいいかもしれない。
05.18 医師と薬局および薬剤師の業務についての一考察
-医薬分業・後発医薬品・スイッチOTC-
(日医総研ワーキングペーパーNo.282)
 
05.18 わたしの健康手帳(平成25年改訂版)
(学校保健)
母子健康手帳にある、乳幼児期の健康情報や予防接種の記録などを、就学以降、社会人になってからも活用できるように作成されたもの。平成17年版の改訂版。実際にどのくらい児童・生徒が活用しているのだろうか?
05.18 Chlamydia screening in community pharmacies: a systematic literature review of the characteristics of service users and a meta-analysis of chlamydia prevalence
Sexual Health 10(1) 1-8
地域薬局におけるクラミジアスクリーニングプログラムの評価を行ったもの。男性や少数民族での利用が特に少なかった他、潜在的に利用を求める人への積極的な薬剤師によるアプローチは高くなかったとのこと。
05.18 Trends in antidiabetic prescription patterns in Japan from 2005 to 2011.
Int Heart J. 2013;54(2):93-7.)
日本における糖尿病治療薬の処方動向をまとめたもの。DPP-4阻害薬の処方頻度が急上昇していることがわかる
05.03 Health Canada Endorsed Important Safety Information on AVASTIN (bevacizumab)
(Health Canada 2013.05.02)

ベバシズマブ(アバスチン)との関連が疑われる壊死性筋膜炎(Necrotizing Fasciitis)の報告が世界で52例(カナダで2例)の報告があり、注意喚起のアナウンス。米国では3月にWARNINGS AND PRECAUTIONS に追記されていた。
05.03  論文解釈のピットフォール
(医学書院・週刊医学界新聞 2008.04.06~2011.05.16 全26回)
バルサルタン問題でググったら出てきた連載記事。KYOTO STUDY や JIKEI STUDY の問題点などにも言及している。
05.03 Consumption of sweet beverages and type 2 diabetes
incidence in European adults: results from EPIC-InterAct
(Diabetologia Published Online 24 Apr 2013)

英、独、仏、伊、デンマーク、スペイン、スウェーデン、オランダの計8か国のがんと栄養​​に関する前向き調査。毎日1杯(1オンス・336mL)の砂糖入りのソフトドリンクを飲んでいると2型糖尿病のリスクが22%増になるとした。一方、ジュースやネクターではリスク増はみられなかった。
05.03 Achieving Pharmacy-Based Public Health: A Call for Public Health Engagement
Public Health Rep 128(3) p140-143,2013) 
この15年で米国における薬局業務の進化は、public health へのアクセスを高めたとした解説記事。米国薬剤師会学会誌に2010年に掲載された論文(Pharmacists in public health: It’s a good start! →リンク)を基に、public Health において 1次~3次にわたるそれぞれの役割があるとした。(日本でこういったことが論じられるのはいったいどのくらい先のこととなるだろう?)
05.03 Emergency Department Visits for Adverse Reactions Involving the Insomnia Medication Zolpidem
(SAMHSA 2013.05.01)

薬物関連の救急部門(ED)への受診に関するモニタリンクを行っている機関のゾルピデムに関するレポート。ゾルピデム関連の有害事象によるED受診数は、2005-2011年で2.2倍に増加。2010年のデータでは受信者の68%が女性を、65歳以上の高齢者が32%を占めた。米FDAが今年1月、女性の推奨量を減らした背景にはこういったデータも考慮されていたのかもしれない。
05.03 プロトンポンプ阻害薬がワルファリンによる抗凝固療法に与える影響: ラベプラゾールとランソプラゾールの比較検討
(心臓 43(12) p1515-1520, 2011)
九大の研究(少し古いですが)。ラベプラゾールはランソプラゾールに比べて抗凝固療法下でのPT-INR値に影響を与えにくいことが明らかとなった
05.03 頭痛~臨床医学の現在(プライマリ・ケア レビュー)
(日本プライマリ・ケア連合学会誌 36(1) p43-46,2013)
プライマリケアにおける、頭痛を訴える患者へのマネジメントをまとめたもの。
05.03  亜急性期以降の長期災害医療支援チームの診療記録と処方箋データ解析
(日本プライマリ・ケア連合学会誌 36(1) p23-26,2013)
被災16日目から77日間大船渡市の2カ所の避難所を巡回診療した、自治医大の災害支援チームの記録。こういう状況でも薬局での調剤が行われていることがわかる。
05.03 Fish oil administration in older adults: is there potential for adverse events?
(BMC Geriatrics Publshed Online 1 May 2013)
EPAやDHAなどn-3サプリメント関連の有害事象について、高齢者をターゲットにしたシスティマティック・レビュー。
05.03   Perioperative Use of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors and Risks for Adverse Outcomes of Surgery
(JAMA Intern Med Published Online 29 Apr 2013)

米国の病院で手術を受けた50万人以上の医療記録を分析、SSRIを投与されている患者では、死亡率が1.20倍、出血リスクが1.09倍、30日以内の再入院が1.22倍となった. 
05.03 看護学生の喫煙の現状と対策
~医師会立看護学校学生調査より
(日医総研ワーキングペーパー 2013.03.14)

73校の日本医師会立看護師等学校養成所に在籍する看護学生31,124名から回答。対象の看護学生の喫煙率は女子学生15.8%、男子学生35.8%、 全体で19.6%であった。
05.03 Tobacco control challenges in East Asia: proposals for change in the world’s largest epidemic region
Tob Control Published Online 14 Apr 2013)
日本、中国、韓国のたばこ規制やたばこ対策などを比較したもの。成人男性を対象としたメディアキャンペーンやたばこ価格の値上げが必要だとした。
05.03 Atorvastatin improves erectile dysfunction in patients initially irresponsive to Sildenafil by the activation of endothelial nitric oxide synthase
Int J Impot Res. Published Online 17 Jan 2013)

スタチンが勃起不全の改善になるかもしれないとしたエジプトの研究グループによるRCT。1年以上勃起不全の40~60歳の男性60人を、アトルバスタチン、ビタミンE、プラぜボの3群に分けて比較。NHS Choices では現時点ではお勧めできないとした。
05.03 Annual Report 2012

EMA(欧州医薬品庁)の2012年の年次報告書。EMAで承認した医薬品の紹介がある。
05.03  Minutes of the PRAC meeting 4-7 March 2013
(EMA Published Online 26 Apr 2013)

3月4-7日に行われたEMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)の議事録。新たなシグナル検出として、クロピドグレルと後天性血友病、クロピドグレルとチクロピジンとの交差反応、レベチラセタムと抗利尿ホルモン不適合分泌症候群などが検討。

最終更新日:2013年5月25日

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