論文・報告あれこれ 2014年1月

 先月はアップできずすみませんした。2か月分となるとものすごい数になってしまいました。他サイトではあまり紹介されていない、ちょっと気になった論文や報告などをピックアップしました。気になったものは独立記事にするかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。これから随時追加する予定なのでチェックしてみて下さい。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

 ★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。 

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
1.19 セルフメディケーション推進のための薬教育 —現状及び薬学の使命—
(薬学雑誌 2013.12)
今年3月横浜で行われた日本薬学会第133年会でのシンポの内容が誌上シンポとなって登場
1.19 災害時医療における薬剤師の役割
(薬学雑誌 2014.1)
誌上シンポ。おととしの日本薬学会で取り上げられたテーマを演者らが文章化。過去のものとして語られることがないよう、あえて掲載時期を遅らせたとのこと
1.19 東日本大震災における大学病院薬剤部の医療支援活動
(日本臨床救急医学会雑誌 16(6) p810-816.2013)
東海大学医学部付属病院の石巻市での医療支援活動の取り組みについて紹介したもの
1.19 Hemorrhagic gastric and duodenal ulcers after the Great East Japan Earthquake Disaster
World J Gastroenterol published Online 14 Nov 2013)
岩手県立釜石病院の報告。東日本大震災後6か月間に出血性胃・十二指腸潰瘍と診断された患者の特性を検討したもの。震災に起因する重度のストレスが特性に影響を与えた可能性があるとした。
1.19 プレナリーセッション: 放射線被曝を学ぶ
(日本耳鼻咽喉科学会会報 2013.10)
 
1.19 Economic Impact of a triptan Rx-To-OTC Switch in Six EU Countries
PLoS ONE publishe online 19 Dec 2013)
トリプタン製剤を処方せん医薬品からOTCにスイッチした場合の経済的影響を仏、英、スペイン、伊、独、ポーランドのデータで評価した研究。AESGPのOTC ingredients でチェックしたところ、スマトリプタンは、NZ、英、スウェーデン、独、メキシコで、ゾルミトリプタンとリザトリプタンはNZで既にスイッチされている。
1.19 Minutes of the 50th meeting of the Medicines Classification 
(NZ Medsafe Published online 18 Dec 2013)
昨年11月13日に開催された医薬品分類に関する委員会の議事録。シルデナフィルのスイッチが議論された。スクリーニングチェックツールの不備や健康リスクを申告しない生活者が潜在するとして、スイッチはすべきでないとした。いつもこの議事録をみると、医薬品の分類についてさまざまな視点で議論が行われている。感情論で新たなスイッチがとん挫している日本は、ニュージランドのこの委員会を見習うべきだと思う。
1.19 Smoking Can Interact with Medicines
Prescriber Update 34(4): 41-42 December 2013)
喫煙の医薬品への影響をCYP酵素の代謝活性を踏まえて解説したもの。クロザピン、オランザピン、テオフィリン、ワルファリンを服用している人が断煙を行った際は、減量する必要があるかもしれないとした
1.19  小中学生への喫煙予防教育と父母の行動変容との関連
─ 子供の言葉は親を変えるか
(日本プライマリ・ケア連合学会誌 36(4) p291-296, 2013)
小中学生への喫煙予防教育が父母の行動変容に影響するかを調べた研究。茨城県神栖市の小中学校7校で喫煙予防教育を実施、受講した生徒に学んだことを家で話すよう促し、1か月後に生徒の親を対象に自記式アンケート調査を行った。行動変容の有無は、子供から話を聞いたことに有意に関連していた(オッズ比3.3 (95%Cl 2.4-4.6)) 。
1.19 Importance of physicians’ attire: factors influencing the impression it makes on patients, a cross-sectional study
Asia Pac Fam Med Pubalished Online 8 Jan 2014)
医師の服装のあり方についての調査結果。白衣やカジュアルなど5種類の写真を見せて妥当性を選んでもらう。やっぱり白衣がいちばんらしい。調査は新潟、茨城、都内5薬局への来局者1411人を対象に行われた。
1.19 Regulatory responses to over-the-counter codeine analgesic misuse in Australia, New Zealand and the United Kingdom
(Australian and New Zealand Journal of Public Health Published Online 5 Sep 2013)
濫用が懸念されるコデイン配合のOTC鎮痛薬について、豪州、ニュージーランド、英国の規制状況とその効果を紹介したもの。
1.19 Symptomatic treatment of the common cold with a fixed-dose combination of paracetamol, chlorphenamine and phenylephrine: a randomized, placebo-controlled trial
(BMC Infectious Diseases Published Online 22 Nov 2013)
アセトアミノフェン、クロルフェナミン、フェニレフリンの合剤は、成人では風邪やインフルエンザ様症候群の対症療法において、プラセボより安全でより効果的であった。
1.19 Ten-Day Quadruple Therapy Comprising Proton-Pump Inhibitor, Bismuth, Tetracycline, and Levofloxacin Achieves a High Eradication Rate for Helicobacter pylori Infection after Failure of Sequential Therapy
Helicobacter Published Online  6 Sep 2013)
台湾の多施設共同研究として行われた、エソメプラゾール40mg、クエン酸ビスマス120 mg、テトラサイクリン500 mg、レボフロキサシン500 mg による除菌治療(10日間)の結果を紹介したもの。
1.19 Multinational, double-blind, randomised, placebo-controlled, prospective study of esomeprazole in the prevention of recurrent peptic ulcer in low-dose acetylsalicylic acid users: the LAVENDER study.
Gut. Published Online 10 Dec 2013)

日本、韓国、台湾で行われたRCT。エソメプラゾールは、心血管保護のために低用量アスピリンを服用している消化性潰瘍の既往歴患者の再発予防に有用だとした。
1.19 Green tea ingestion greatly reduces plasma concentrations of nadolol in healthy subjects
Clin Pharmacol Ther Published Online 13 Jan 2014)

福島県立医大の研究。β遮断薬のナドロール吸収が緑茶によって阻害されることを示唆。ナドロールの吸収に関与する有機アニオン輸送担体ペプチド1A2(OATP1A2)を阻害することが原因らしい。(関連→TOPICS 2008.08.20
1.19 The effects of ezetimibe on non-alcoholic fatty liver disease and glucose metabolism: a randomised controlled trial
Diabetologia. Published Online 10 Jan 2014)

非アルコール性脂肪肝(NAFLD)とグルコース代謝へのエゼチミブの影響を調べたランダム化オ-プンラベル研究。血清総コレステロールは優位に減少し、線維化ステージは改善されたが、HbA1cは優位に増加した
1.19 Chinese herbal medicine Guizhi Fuling Formula for treatment of uterine fibroids: a systematic review of randomised clinical trials
BMC Complement Altern Med Pubnlished Online 2 Jan 2014)
桂枝茯苓丸の子宮筋腫に対する治療に関するRCTのシスティマティック・レビュー
1.19 Burden of menstrual symptoms in Japanese women – an analysis of medical care-seeking behavior from a survey-based study
Int J Womens Health Published Online 17 Dec 2013)
月経関連症状の日本人女性の行動傾向を調べたインターネット調査の結果報告。産婦人科医に相談することで症状緩和の利益が得られるとした。
1.19 État des lieux de la consommation
des benzodiazépines en France

(ANSM 2013.12)

仏におけるベンゾジアゼピン系薬の使用状況についてまとめたレポート(定期的に調査が行われているらしい)。日本でも適正使用を考えるのなら、こういった調査が必要だと思う
1.19  Serotonin Syndrome
Ochsner J. 2013 Winter; 13(4): 533–540.)
セロトニン症候群に関する総説。セロトニン症候群の原因と報告された薬剤の組み合わせが示されている(→リンク
1.19 Moderate alcohol consumption enhances vaccine-induced responses in rhesus macaques
Vaccine Published Online 17 Dec 2013)

アカゲザルでの研究。適度のアルコールは免疫システムを改善させるかもしれない?
1.19 子宮頸癌予防ワクチンに対する意識調査
(日本プライマリ・ケア連合学会誌 36(4) p297-301, 2013)
岐阜県のプライマリ・ケア関連施設で行われた、子宮頚癌予防ワクチンに対する被接種者・保護者の意識、知識についての調査結果。 子宮頚癌、癌検診に対する知識は十分ではなく、情報提供を行い理解度を深めていくことが重要であるとした。但し、回答者数は被接種者66人, 保護者57人であまり多くはない。
1.19 地域高齢者におけるサルコペニアに関連する要因の検討
(日本公衆衛生雑誌 60(11) p683-690,2013)
大都市近郊に在住する65歳以上の高齢者1,074人を対象におこなった調査結果を検討したもの。地域高齢者において、サルコペニアには、男性と女性での年齢、男性での食品摂取の多様性、女性での咀嚼が関連するとした。
1.19 EFSA assesses potential link between two neonicotinoids and developmental neurotoxicity
(EFSA Press Release 2013.12.17)

ネオニコチノイド系殺虫剤アセタミプリドおよびイミダクロプリドはヒトの発達過程の脳神経系に影響を与えるかもしれないとした。
1.19 Effect of withdrawal from long-term use of temazepam, zopiclone or zolpidem as hypnotic agents on cognition in older adults
Eur J Clin Pharmacol Dec 2013)
高齢者のゾピクロンやゾルピデムなどのBZ系眠剤の長期使用の影響を調べた研究。中止後少なくとも6か月注意・精神運動機能に影響が残るとした。
1.19 Thiazolidinediones and associated risk of Bladder Cancer: a Systematic Review and Meta-analysis
Br J Clin Pharmacol Published Online 10 Dec 2013)
ピオグリタゾンの膀胱がんのリスク増が知られているところですが、同じチアゾリジン系のロスバスタチンの膀胱がんのリスク増も含めて調べたメタアナリシス。リスク増はピオグリタゾンのみに見られた。
1.19 Comparative effectiveness of rosuvastatin versus simvastatin in primary prevention among new users: a cohort study in the French national health insurance database
Pharmacoepidemiol Drug Saf Published Online 2 Dec 2013)
一次予防としてのロスバスタチンとシンバスタチンの有用性について調べた仏で行われた historical cohort study。研究者らは有効性が課題に評価されている可能性があるとして、費用対効果から優先的に処方することは支持できないとした。
1.19 Herbal medicine use in pregnancy: results of a multinational study
BMC Complement Altern Med Published Online 12 Dec 2013)
欧州、北南米、豪州など23か国9459人の女性を対象に行われた調査。うち28.9%は妊婦中にハーブ類を使用、生姜、クランベリー、カノコソウ、ラズベリーの順で多かった。
1.19 Pharmacists and family physicians: improving interprofessional collaboration through joint understanding of our competencies
Front Pharmacol Published Online 5 Dec 2013)
職種間の(IPC:Interprofessional collaboration)についての意見i
1.19 Current clinical evidence on pioglitazone pharmacogenomics
Front Pharmacol Published Online 26 Nov 2013)
ピオグリタゾンの薬理作用や副作用について、ゲノム薬理学で解説したもの
1.19 Amiodarone Pulmonary Toxicity — Early Recognition is Vital
(Prescriber Update 34(4): 38-39 December 2013)
ニュージラーンドの副作用モニタリングセンターに報告されたアミオダロンの肺毒性についての状況を紹介するとともに、推奨される最低限必要な対策を紹介したもの。
1.19 Aripiprazole: A new risk factor for pathological gambling?
Addict Behav. Pubalished Online 10 Nov 2013)
症例報告。アリピプラゾールにも病的賭博の可能性とした。過去にも症例報告があった。

1.19 Morphine Decreases Clopidogrel Concentrations and Effects: A Randomized, Double Blind, Placebo-Controlled Trial.
J Am Coll Cardiol. Published Online 21 Nov 2013)
モルヒネ注射はクロピドグレル再吸収を遅らせ、活性代謝物質のAUCを低下させるとした。
1.19 Minocycline and intracranial hypertension
(豪TGA Medicines Safety Update 2013.12)
ミノサイクリン服用の患者から43例(うち39例は唯一の被疑薬)の良性頭蓋内圧亢進症の報告
1.19 Duloxetine and serotonin syndrome
(豪TGA Medicines Safety Update 2013.12)
デュロキセチン服用中の患者から31例のセロトニン症候群の報告。うち21例はデュロキセチンのみが被疑薬
1.19 Vitamin C and common cold-induced asthma: a systematic review and statistical analysis
Allergy, Asthma & Clinical Immunol Published Online 26 Nov 2013)
ビタミンCの投与が一般的な風邪誘発性喘息に影響するかどうかを調べた研究
1.19 The use of dietary supplements and their association with blood pressure in a large Midwestern cohort
(BMC Complement Altern Med PUblished Online 28 Nov 2013)
 
1.19 Formulary availability and regulatory barriers to accessibility of opioids for cancer pain in Europe: a report from the ESMO/EAPC Opioid Policy Initiative
Ann Oncol Published Online 25 Nov 2013)

欧州におけるがん疼痛に対するオピオイドの規制に関する調査結果
1.19 Eliminating the need for fasting with oral administration of bisphosphonates
(Ther Clin Risk Manag. Published Online 18 Oct 2013)
 
1.19 Olanzapine and Baclofen for the Treatment of Intractable Hiccups
Pharmacotherapy Published Online 25 Nov 2013)
難治性しゃっくりに対する症例報告。バクロフェンとオランザピンの併用がQOLを向上させた
1.19 Cardiovascular and mortality risk in elderly Medicare beneficiaries treated with olmesartan versus other angiotensin receptor blockers
Pharmacoepidemiol Drug Saf Published Online 26 Nov 2013)
高用量のオルメサルタンは他のARBと比べ、非糖尿病患者では急性の心血管病によるし死亡リスクを低下させたが、6か月超の糖尿病患者では逆にリスク増となった(HR:2.03)
1.19 Acute vergiftigingen bij mens en dier
(NVIC jaaroverzicht 2012)

オランダ中毒情報センターの2012年次報告。半数が薬の大量摂取が原因? 1位はアセトアミノフェン、2位はオキサゼパム、3位はイブプロフェン(40ページ~) 日本でも中毒に関するこういう詳しい情報を収集して公表してほしい。
1.19  耳鼻咽喉科領域における漢方治療
(日本耳鼻咽喉科学会会報 116(10) p1093-1099,2013)
総説。
1.19 Donepezil provides positive effects to patients treated with gabapentin for neuropathic pain: an exploratory study.
Acta Anaesthesiol Scand. Published Online 22 Nov 2013)
症例報告。ガバペンチンにドネペジルを追加すると神経障害性疼痛に有用かもしれない

最終更新日:2014年1月20日

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