論文・報告あれこれ 2014年8月

 他サイトではあまり紹介されていないものを中心に、ちょっと気になった論文や報告などをピックアップしました。気になったものは独立記事にするかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。必ずしも最近アップされたものとは限りません。(特にJ-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

 ★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。 

右下に最終更新日を記してあります。 

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
08.16 Potential association between the recent increase in campylobacteriosis incidence in the Netherlands and proton-pump inhibitor use – an ecological study
Euro Surveill 19(30) 14 Aug 2014)
オランダでは2003年から2011年の間に、カンピロバクターの発症率の原因不明の増加を見たという。鶏肉での汚染が認められなかったことから、研究者らはPPIの処方増との潜在的関連性が認められたとしている。(確かに身の回りでも使われすぎの感がある)
08.16 日本薬学会第3回全国学生ワークショップ報告書
(2014.08.07掲載 スクロールして少し下の方)

六年制薬学教育第三期生の思いや要望がギッシリ。2013年8月開催。
08.16 Bleeding rates in Veterans Affairs patients with atrial fibrillation who switch from warfarin to dabigatran.
Am J Med. Published Online 5 Aug 2014)
ワーファリンを投与中の心房細動患者がダビガトランに切り替えた場合の出血リスクを調べたもの(退役軍人のデータベース)。消化管出血はダビガトランの方がワルファリンより54%高かった。関連の学会発表もある。(→Stroke
08.16 Statin use and risk of hepatocellular carcinoma in a U.S. population.
(Cancer Epidemiol. Published Online 8 Aug 2014)
米国で行われた nested case-control study.スタチンの使用が肝細胞がんの進行を遅らせることが示唆された。(オッズ比0.32)
スウェーデンのcase-control study でもオッズ比0.88の研究報告がある。(→Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014 Jul 29. 
08.16 Benzodiazepine drug use and adverse respiratory outcomes among older adults with COPD.
Eur Respir J. 2014 Aug;44(2):332-40. Published Online 17 Apr 2014)

カナダオンタリオ州の住民を対象に行われた retrospective population-based cohort study。高齢COPD患者に対し新規にベンゾジアゼピン系薬剤をした場合、呼吸器症状が1.45倍、緊急治療室への受診が1.92倍となった。高齢COPDへのBZ系の薬剤の使用は慎重使用が必要らしい。
08.16 Hand Sanitiser Provision for Reducing Illness Absences in Primary School Children: A Cluster Randomised Trial
PLoS Medicine Published Online 12 Aug 2014)

ニュージーランドの小学校68校で行われた研究。通常の手洗いに加え、アルコール手指消毒を行っても、学校を休むような病気の予防にはつながらなかった。但し、この研究はちょうど2009年のパンデミックの時に行われたため、衛生をしっかりするよう意識づけられていたことも影響しているかもしれないとした。
08.16 The positive pharmacy care law: an area-level analysis of the relationship between community pharmacy distribution, urbanity and social deprivation in England
(BMJ Open Publisehd Online 12 Aug 2014)

  •  BBC News(賛否両論のコメントが興味深い)
薬局の分布とアクセスのしやすさを調べた英国で結構話題となっている研究。何と人口の89%が徒歩20分以内に地域薬局へのアクセスが確保されているという。また、貧困者が多く住む地域では100%となっていており、血圧チェックや糖尿病のスクリーニングやライフスタイルのアドバイスなど public health services に地域薬局をもっと利活用できるのではないかとした。(日本じゃ開局はあくまで収益最優先だから、こんな数字は出てこないでしょう)
08.16 重篤な薬疹を引き起こす薬剤に共通点はあるのか
(薬剤疫学 19(1) p31-37 2014)
重症薬疹に着目し、代表的な重症薬疹の特徴と重症薬疹ごとの被疑医薬品の傾向や共通点について JADER (医薬品副作用データベース)を利用して分析を試みています。
08.16 A Review on the Traditional Chinese Medicinal Herbs and Formulae with Hypolipidemic Effect
Biomed Res Int Published Online 7 July 2014)
脂質異常症に効果があるとされる9生薬、7製品(処方)についてレビューしたもの
08.16 Use of Supplements by Japanese Elite Athletes for the 2012 Olympic Games in London.
Clin J Sport Med. Publisehd Online 17 Jun 2014)

フルテキストで確認したい論文。552人の代表選手に薬剤師がインタビューしたもの。WEB上でもいくつかこの調査結果の報告が確認。それによると、種類別では、アミノ酸系サプリが一番多く(310人)、次いでプロテイン系、ビタミン系の順だった。摂取目的は1位が「疲労回復」、2位が「食事で不足する栄養素の補給」、3位が「競技力向上」だったとしている。ググると、味の素がロンドン五輪の日本選手団24競技、293人に対しアミノバイタルGOLDを、約10万本提供していたということから、この影響も考えられなくはない。
08.16 薬物乱用防止パンフレット「お父さん、お母さん『うちの子に限って・・・』は危険です!」(平成26年2月版)
(一般社団法人全国高等学校PTA連合会)

厚生労働科学研究での調査結果(→薬物乱用・依存等の実態把握と薬物依存症者に関する制度的社会資源の現状と課題に関する研究H24)なども引用され、厚労省発行の読本より、最新かつ見やすい内容となっている。
08.16 Did the new French pay-for-performance system modify benzodiazepine prescribing practices?
BMC Health Serv Res Published Online 11 Jul 2014)
仏では、BZ系薬の使用抑制のため、処方開始から12週を超える継続患者の割合を減らした場合、GPに対し年間最高490ユーロの追加報酬を与えるインセンティブを与える政策を12年1月から実施したが、うまくいかなかったという報告
08.16 Investigation of diseases that cause diagnostic difficulty for Japanese general physicians
Asia Pac Fam Med Published Online 1 Aug 2014)
最終診断でどのようなものがあったかを調べた、千葉大付属病院綜合診療部の報告。診断の際に、副作用が原因となる薬を中止・変更で症状が改善される場合があることを念頭におくべきとした。
08.16 Randomised clinical trial: prevention of recurrence of peptic ulcers by rabeprazole in patients taking low-dose aspirin
(Aliment Pharmacol Ther Published Online 6 Aug 2014)
日本で行われたテプレノンを対照としたRCT。ラベプラゾールは低用量アスピリンで治療中の患者の消化性潰瘍の再発を防ぐことができる。(これで適応症の拡大を申請?)
08.16  The conceptual imperfection of aquatic risk assessment tests: highlighting the need for tests designed to detect therapeutic effects of pharmaceutical contaminants
Environ. Res. Lett Published Online 7 Aug 2014)

オキサゼパムが魚の生態に影響するかもしれないとした研究。
08.16 Prescription pattern of Chinese herbal products for hypertension in Taiwan: A population-based study.
J Ethnopharmacol Published Online 1 Aug 2014)
フルテキストで確認したい台湾の研究。天麻釣藤飲、六味丸などが高血圧に使用されているという。この研究チームは下記など他の疾患についても同様の研究を行っている。
08.16 Prescription Pattern of Chinese Herbal Products for Diabetes Mellitus in Taiwan: A Population-Based Study
Evid Based Complement Alternat Med Published Online 17 Jun 2013)
1998年~2008年の台湾の国民健康保険のデータを調べた研究。2型糖尿病でも最も多く処方された伝統薬(漢方薬)は、六味地黄丸で、次いで白虎人参湯、知母地黄丸、杞菊地黄丸などが続いた。(→リンク
08.16 The Traditional Chinese Medicine Prescription Pattern of Endometriosis Patients in Taiwan: A Population-Based Study
Evid Based Complement Alternat Med. Publisehd Online 26 Sep 2012)
1998年~2008年の台湾の国民健康保険のデータを調べた研究。子宮内膜症で最も多く処方された伝統薬(漢方薬)は、桂枝茯苓丸で、次いで当帰芍薬散、加味逍遙散、少腹逐瘀湯などが続いた。(→リンク
08.16 Use of Dipeptidyl Peptidase – 4 inhibitors for type 2 diabetes mellitus and risk of fracture
Bone Published Online 2 Aug 2014)
DPP-4阻害薬の2型糖尿病への使用は、1.3年の追跡調査ではリスク増は認められず。ただ筆者らは、長期追跡では結果が異なるのではないかとも。
08.16 Use of addiction treatment services by Irish youth: does place of residence matter?
Rural Remote Health Published Online 6 Aug 2014)
アイルランドの薬物乱用治療センターの報告。都市部と地方では乱用する物質に差異がある。都会ではBZ系薬が多く、地方ではアルコールが優位に多かった。若者への対策はこういった点も留意すべきとした
08.16 Risk of acute urinary retention associated with inhaled anticholinergics in patients with chronic obstructive lung disease: systematic review
Ther Adv Drug Saf.4(1) 19-26 2013)
良性の前立腺肥大を有する高齢患者では、抗コリン吸入薬の治療開始後に尿閉の発生リスクが高くなるとした。
08.16 Pregabalin:latest safety evidence and clinical implications for the management of neuropathic pain
The Adv Drug Saf. 5(1) 38-56 2014)
臨床医と患者は、傾眠、めまい、末梢浮腫や口渇などの典型的な副作用について意識する必要がある
08.16 Medication-overuse headache: epidemiology, diagnosis and treatment
Ther Adv Drug Saf. 5(2) 87-99 2014)
薬物乱用頭痛についての総説。
08.16 Safety of dipeptidyl peptidase 4 inhibitors: a perspective review
Ther Adv Drug Saf. 5(3) 138-146 2014)
DPP-4阻害薬の安全性についてのレビュー
08.16  妊婦における神経管閉鎖障害リスク低減のための folic acid 摂取行動に関する全国インターネット調査
(日本公衆衛生雑誌 61(7) p321-332 2014)
2012年1月に20~40代の妊婦を対象に行われたインターネット調査の結果。85.2%の妊婦が妊娠中に意識的に葉酸を摂取。その多くは錠剤・カプセルなどのサプリメントから摂取していたが、その開始時期は NTD リスク低減のためには遅すぎることが示された。
08.16 医療機関と薬局との連携による糖尿病療養支援の実践とその効果について
(くすりと糖尿病 2(1) p66-75 2013)
健康食品と薬との相互作用,糖尿病型,フットケアの理解度が介入群において有意に向上した。
08.16 Safe use of sodium valproate
Aust Prescr 2014;37:124-7)
バルプロ酸の安全使用に関する総説。
08.16 P-glycoprotein and its role in drug-drug interactions
(Aust Prescr 2014;37:137-9)
ロペラミドとベラパミル(P-糖蛋白に対する阻害作用がある薬剤)との併用で呼吸抑制の潜在的リスクがあるなどとした
08.16 Drug treatments of childhood coughs
(Aust Prescr 2014;37:115-9)
小児用風邪薬が禁止となっていることもあり、抗生剤やステロイドが対応の基本。あとははちみつとメントール類の外用というのは興味深い。」
08.16 Proton pump inhibitor use significantly increases the risk of spontaneous bacterial peritonitis in 1965 patients with cirrhosis and ascites: a propensity score matched cohort study
Aliment Pharmacol Ther Published Online 30 Jul 2014)
propensity score matched cohort study。PPIの使用は、腹水を有する肝硬変患者の特発性細菌性腹膜炎リスクを増大させるとした。
08.16 Quarterly report 2014-2
(オランダ Lareb)
BZと自殺念慮/企図、リバスチグミンと悪夢/異常な夢、妊娠中のラベタロールと乳首の痛み、Hydroquinineと血糖低下、クエチアピンと知覚異常などのシグナルが検出された。
08.16 Pregnancy outcomes of women exposed to laninamivir during pregnancy
(Pharmacoepidemiol Drug Saf Published Online 29 Jul 2014)
当然日本の報告。胎児へのラニナビルの影響は少ないとした。
08.16 A multicenter randomized trial indicates initial prednisolone treatment for childhood nephrotic syndrome for two months is not inferior to six-month treatment
Kidney Int. Published Online 23 jul 2014 )

和歌山県立医科大と国立成育医療研究センターなどの研究。小児ネフローゼ症候群の治療に使われるステロイドの投与期間は、2カ月と、3~7カ月のいずれでも効果に差がないとした。
08.16 Ninety-three cases of alcohol dependence following SSRI treatment.
Int J Risk Saf Med 26(2) 99-107 2014)
SSRIの使用がアルコール依存症を誘発するかもしれないとした。データは下記サイトで収集した。

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最終更新日:2014年8月16日

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