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2007.04.25 化学工場の爆発で、医薬品の製造に広がる不安
先月3月20日に、新潟県の化学工場(信越化学工業・直江津工場)で爆発事故があったことをご存知でしょうか? 実はこの事故が今、医薬品の製造に深刻な影響を及ぼしています。
この工場で作られていたのは、医薬品の崩壊や結合、フィルムコーティングなど医薬品の添加物として広く使われているセルロース(医薬品用は、信越化学が国内市場の圧倒的なシェアを持つ)で、国内の生産拠点だったことから、事実上セルロースの供給がストップ、信越化学や製薬企業等で確保している在庫もあまり多くないことから、医薬品の製造や供給への不安が広がっています。
今回の事態を受け、厚労省では、製薬企業各社の医薬品生産に与える影響を調査、23日には緊急に薬事・食品衛生審議会薬事分科会を開催して、その対応策を検討しました。
薬事・食品衛生審議会薬事分科会(2007年4月23日開催)
資料(WAM NET 4月24日掲載)
信越化学によれば今回の事故で生産に影響を受ける製品は、メチルセルロース(固形剤のバインダー、液剤の増粘剤)、ヒプロメロース(錠剤のフィルムコート基剤、固形剤のバインダー)、ヒプロメロースフタル酸エステル(固形剤の腸溶性基剤)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(固形剤の崩壊剤)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(固形剤の水系腸溶性剤)の医薬用セルロース製品5品種で、いずれも国内シェアほぼ100%(海外を含めても50%〜100%)を占めています。
このため、生産ストップが長期間続くとこれら5つの添加物を使うものとして承認された医薬品が、医療の場に提供できない医薬品が出てくる可能性が出てきました。実際、厚労省調査(約160社より回答)でも、6月までに先発品で約50品目、後発品や一般用医薬品を含める約400品目に生産に影響が出る恐れがわかりました。
そこで、厚労省では医薬品の添加物の変更による再審査(通常半年〜1年程度かかる)をこれら5品目に代替品を使う場合は、「軽微な変更」として取り扱い、その審査を不要とする特例措置を決めたそうです。
また、代替製剤の製造・出荷については、必要最低限の期間とし、信越化学からの添加物の出荷が再開された場合には、速やかに通常製剤に切り替えることとし、添付文書には緊急に代替の添加物を使用して製造した旨の記載が行われるそうです。
また、代替品の出荷開始、通常製剤の出荷再開及び代替製剤の回収終了についての情報については、各製造販売業者のホームページ等を通じて提供が行われるとのことです。
安全性確保の問題もあり、セルロースの生産開始は遅れる可能性が指摘されており、現場には突然の製剤変更品が出てくることも予想されます。メーカーからの情報を的確に把握して、対応することが求められます。
関連サイト:信越化学工業セルロース部
http://www.metolose.jp/index.shtml
参考:【信越化学爆発事故】代替医薬品添加物で緊急措置
(薬事日報 HEADLINE NEWS)
http://www.yakuji.co.jp/entry2931.html
Japan Medicine4月16日
日本経済新聞4月23日
4月25日 1:00掲載 18:00更新