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2007.07.10 セレンと糖尿病リスク(米国研究)
近年、動物実験などで耐糖能改善への期待が高まっているセレン(セレニウム)ですが、このほどこれとは逆に、糖尿病のリスクを高める可能性があるとしたランダム化試験の結果が発表され、波紋を呼んでいます。
Effects of Long-Term Selenium Supplementation on the Incidence of Type
2 Diabetes - A Randomized Trial (Annals of Internal Medicine Early-Release Articles: 10 July 2007)
http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200708210-00175v1
今回の結果は、皮膚がんに対するセレン含有サプリメントの効果を調べた研究の過程で明らかになったもので、当時糖尿病でなかった1202人(セレンの摂取が少ない米国東部地区在住のメラノーマ以外の皮膚がんと診断された人)を、セレンを毎日200μg摂取した群600人とプラセボ群602人の2群に分けて、平均7.7年間の追跡調査を行っています。
その結果、セレン摂取群では58人、プラセボ群で39人が2型糖尿病を発症し、セレン含有サプリメントの摂取が2型糖尿病の発症リスクを50%高めるという結果が得られています。
ただ今回の研究は、研究自体がセレンの糖尿病発症への影響を調べたものではなかったことから、糖尿病の診断を自己申告に頼る、対象が高齢者や白人に偏る、家族歴やBMI、生活習慣などが考慮されていないなどの問題点を研究者らは指摘しています。
セレンは微量必須元素ですが、さまざまな食材に含まれることから通常の日本人の食生活では不足はないとされています。400μg/日程度までは安全とされていますが、海外では安易な多量摂取や不良製品などによる中毒例(症状はタリウム中毒に似る)の報告もあり、過剰摂取には注意する必要があります。
現時点では、エビデンスを決定づけるものにはなっていませんが、研究者らは「米国や欧州の人々が1日30μg〜200μgのセレン含有サプリメントを摂取している現実があり、今回の結果は重要である。」とし、またこの論文についての論説を書いた研究者も「セレンは通常の食事で十分摂取できており、総合ビタミン剤などで追加摂取する必要はない。」としています。
関連情報:Selenium and Diabetes: More Bad News for Supplements
(Annals of Internal Medicine EDITORIAL Early-Release : 10 July 2007)
http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200708210-00177v1
セレン(「健康食品」の安全性・有効性情報)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail37.html
セレニウムの摂取が糖尿病のリスクを高める可能性
(美容と健康に関する最新ニュース・ブログ)
http://www.e-iml.com/index.php/?p=24
TOPICS:2007.05.16 マルチビタミンと前立腺がんリスク(米国研究)
参考:Selenium Supplements Linked To Type 2 Diabetes
(Medical News TODAY 2007.7.10)
http://www.medicalnewstoday.com/healthnews.php?newsid=76362
Selenium Supplements: Diabetes Risk?(WebMD 2007.7.9)
http://diabetes.webmd.com/news/20070709/selenium-supplements-diabetes-risk
7月10日 22:10掲載