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2007.07.25 低LDL-Cとがんリスク
日本でもコレステロール値が低すぎると、がんリスクが高まるとの指摘がありますが、このほどこれを裏付ける論文がJournal of the American College of Cardiology 誌に掲載されました。
Effect of the Magnitude of Lipid Lowering on Risk of Elevated Liver Enzymes,
Rhabdomyolysis, and Cancer-Insights From Large Randomized Statin Trials(J Am Coll Cardiol 2007 50: 409-418.)
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/50/5/409
FULL TEXTは、CTV.CAのMedExpressの論文紹介記事のページに掲載されています。
http://www.ctv.ca/generic/WebSpecials/pdf/Alsheikh-Ali.pdf[PDF:1.32MB]
この研究はもともと、低LDL-Cと横紋筋融解症、肝酵素の上昇との関連を調べた、メタアナリシス(23の研究、約310,000人)ですが、研究の過程でがんの発症との関連を調べたところ明らかになったものです。
研究者らは、過去に発表されたスタチンの効果をまとめた13の論文41,173人のデータを詳しく調べ、治療後のLDL-Cの低下率、低下した数値幅、治療後のLDL-C値とがん発症のリスクを比較、低下率と数値幅では有意差が認められなかったものの、治療後のLDL-C値が低い場合には、有意にがん発症リスクが高まるという結果が得られたそうです。
この結果から、「スタチンでLDL-Cを下げる→がんリスクが高まる」との見方もできますが、他の要因も加わり結果的にLDL-C値が低値になったという見方もできることから、研究者らは、「この結果がスタチンの服用ががんリスクを高めるということを示したわけではない」と強調しています。また、このリスクの上昇は1000人に1人程度であり、この論文の著者を含め多くの研究者は、心臓病の予防のベネフィットの方がはるかに上回るとして、スタチンの自己中止はするべきでないと述べています。
参考:時事通信7月25日(AFP記事)
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_sci&k=20070725013541a
Statin Cancer Risk Outweighed by Benefits(ABC News 2007.7.23)
http://www.abcnews.go.com/Health/CancerPreventionAndTreatment/story?id=3405678
7月25日 21:00掲載