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2007.09.15 高齢者に対して特に慎重な投与が求められる薬

カナダNPOのCIHI(The Canadian Institute for Health Information)は、6年前よりも減少傾向にあるものの、高齢者のおよそに4人に1人がハイリスクな薬が処方されているというレポートをまとめ、13日発表しています。(アルバータ、サスカチェワン、マニトバとニューブランズウィックの4州の高齢者のデータを分析)

Drug Claims by Seniors: An Analysis Focusing on Potentially Inappropriate Medication Use,2000 to 2006(CIHI 2007.9.13)
http://secure.cihi.ca/cihiweb/dispPage.jsp?cw_page=reports_dcbs_2007_e
http://secure.cihi.ca/cihiweb/en/downloads/Potentially_Inappropriate_Medications_EN.pdf 

ここでいうハイリスクな薬とは、Beersリスト(Beers criteria)と呼ばれる、高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬のことをいい、レポートでは、結合型エストロゲン製剤、アミトリプチン、ジゴキシン、オキシブチン、Temazapamを上位5製剤としてあげています。

このBeersリストは、米国のベアーズらが、65歳以上の高齢者にとって、ある薬剤処方が望ましくない結果をもたらすという観点から、1990年代に、3段階に分けてリストアップしたもので、現在は2003年更新の最新版が使われています。

欧米各国では、「高齢者に不適切な医薬品リスト」として広く使われ、高齢者の薬物療法の論文ではしばしば引用されています。例えば、下記の論文は欧州での在宅高齢者に対する不適切な薬剤について調べたものです。

Potentially Inappropriate Medication Use Among Elderly Home Care Patients in Europe(JAMA 2005;293:1348-1358)
  http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/293/11/1348

 この論文紹介記事:EUにおける高齢者に不適切な薬剤の使用
          (新薬学研究者集団・薬と薬学)
   http://www.d9.dion.ne.jp/~sigma72/Kusuri-Yakugaku3.htm#Anchor26

日本では、欧米のように診療データがまとめられていないため、上記のような論文はほとんどありませんが、慶応大・東京医科歯科大の研究者が、Beersリストを元に、17の長期療養型施設における、65歳以上1669人(うち女性74.7%)のデータを分析したものが2006年に発表されています。

Prevalence of inappropriate medication using Beers criteria in Japanese long-term care facilities
(BMC Geriatrics 2006, 6:1 doi:10.1186/1471-2318-6-1)
  http://www.biomedcentral.com/1471-2318/6/1
  http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1379647

この研究では、356人(21.1%)で少なくとも1種類の不適切な処方がされているとしています。内訳はチクロピジン(6.3%)、短時間型ニフェジピン(2.0%)、長時間型ベンゾジアセピン系製剤(1.9%)、シメチジン(1.5%)、抗コリン剤・抗ヒスタミン剤(1.4%)などが続いています。

日本では、このBeersリストを元に、日本老年医学会が2005年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2005」を発表し、高齢者に対して特に慎重な投与を要する45種類の薬剤(群)のリスト(7割がBeersリストとと共通)が示されています。

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン〜 第48回日本老年医学会学術集会記録
 (日本老年医学会雑誌 Vol.44 (2007), No.1 31-34)
  http://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/44/1/44_31/_article/-char/ja/

高齢者の不適切な薬品リストはこの他に、カナダで1997年にカナダ医師会雑誌(CMAJ)に発表されたMcLeodリスト(McLeod criteria)も知られています。

Defining inappropriate practices in prescribing for elderly people: a national consensus panel(CMAJ. 1997;156:385-391)
  http://www.cmaj.ca/cgi/content/abstract/156/3/385 

これらのリストにはいずれも、注意すべきとした理由や起こりうる副作用などが記載されています。後期高齢者医療での私たちの役割を考えたとき、こういったリストを把握し、医師に伝えていくことは必要ではないかと思います。

参考:
Updating the Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults(Arch Intern Med. 2003;163:2716-2724)
   http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/full/163/22/2716
高齢者に不適切な薬剤の使用(新薬学研究者集団・薬と薬学)
   http://www.d9.dion.ne.jp/~sigma72/Kusuri-Yakugaku3.htm#Anchor24

9月15日 1:10掲載

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