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2007.11.07 直販方式によるOTC薬流通の弊害
RISFAX及び卸の担当者からの情報によれば、OTC薬主力メーカーの興和は、来年4月からOTC薬流通を、卸経由から直販に移行することにしたそうです。
キャベジン・バンテリン・パニオンなど、マスメディアを通じた広告を積極的な行うことで、ブランド力が高い同社ですが、一方でその認知度の高さから、店頭では常に安売りの目玉商品の対象にもなっている現状があります。今回の流通方法の変更も、メーカー主導で流通管理を行うことで、値引き合戦による商品価値の低下防止やブランド力の維持などの狙いがあるものと思われます。
現在も、大正製薬・エスエス製薬・佐藤製薬など直販方式を行っているメーカーは少なくありませんが、直販方式の場合、定番品の他、新製品などは一定数量の仕入れを迫られる可能性があり、今後、零細薬局や調剤薬局は興和商品を取り扱いから除外する可能性があります。
直販方式でさらに問題なのは、新製品に関する情報の入手が困難になる点です。RISFAXによると「直販」移行に伴い、 同社では営業員を倍増するとしていますが、営業員が訪問するのは当然、たくさん商品を売ってくれるドラッグストアなど、直販メーカーとの取引(契約)があるところだけになります。
日薬では、「第一類一般用医薬品」の販売を薬剤師の新たな職能として期待していますが、これらの多くは直販メーカーから販売されるものが少なくありません。これでは商品を取り揃えることだけではなく、消費者からの問合せにも応えることはできません。
「新薬の知識があるのだから、対応できる」との見方もできますが、パニオンやトランシーノ(第一三共ヘルスケア)など、効能や販売方法が全く異なるものもあり、販売者向けの情報入手は不可欠です。
英国では、処方せん医薬品がスイッチされる場合は、英国王立薬剤師会(http://www.rpsgb.org/)が販売指針(PRACTICE GUIDANCE)を作成し、公表していますが、日本でも同じことは出来ないのでしょうか?
シンバスタチンのPRACTICE GUIDANCE
http://www.rpsgb.org/pdfs/otcsimvastatinguid.pdf
http://www.rpsgb.org/pdfs/otcsimvastatincardguid.pdf
スマトリプタンのPRACTICE GUIDANCE
http://www.rpsgb.org/pdfs/otcsumatriptanguid.pdf
私は、この点について先月行われた、日本薬剤師会学術大会の分科会「新たな医薬品販売制度に向けて」で指摘し、日薬のシンポジストに対し、「第一類について、日薬で独自に販売指針を作成すべきではないか」と質したところ、「第一類についての情報提供についてはメーカーが行っている」として、日薬としては現時点では積極的に個々の商品についての販売指針を作成する予定はないようです。
メーカーも、量販店での販売を主力に考えているのでしょうが、調剤薬局での販売も考慮し、少なくとも第一類については流通方法の見直しや、販売者向けの情報提供(専用サイトの設置でもよい)のあり方を検討する必要があるのではないでしょうか? そうしないと、第一類OTC薬の販売は広がらないと思います。
参考:RISFAX HEADLINE 11月5日
11月7日 13:40掲載