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2007.12.27 タミフル、10代の使用原則禁止継続は必要
25日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会が開催され、インフルエンザ患者の症例とタミフルとの因果関係を調査した研究班の報告を中心に審議が行われました。
リン酸オセルタミビル(タミフル)について
(薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会 2007年12月25日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-8.html
平成19年度第5回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会
(2007年12月25日開催) 資料(厚労省12月26日掲載)
25日の報道では、タミフルを服用した患者の方が服用した患者よりも異常行動の発生率が低いとすることが調査会の開催に先立って大きく伝えられましたが、同部会では「基礎WG及び臨床WGから非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査(現時点では、明確な結論を得るために必要な解析には至っていない)等の結果について報告を受けた。現時点において、直ちにタミフルの服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆するような結果は得られていないが、特に、疫学調査及び臨床試験については、十分かつ慎重な検討や分析を進め、可及的速やかに臨床WG及び当調査会に報告することが適当である。」として、今年3月から続けられている「10代患者への使用を原則禁止している現行の措置は妥当」とする見解をまとめました。
これで、少なくとも今シーズンは10代への投与原則禁止が解除されることはなく、受験生などにとってはインフルエンザ罹患時はリレンザで対応するか、抗ウイルス剤を用いず対症療法での対応が求められます。
タミフルの安全性については、同部会の安全対策調査会の下に、タミフルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ(臨床WG)及び、タミフルの基礎的調査検討のためのワーキンググループ(基礎WG)が設けられ、資料等が既に厚労省ウェブサイトに掲載されています。
タミフルの安全対策の経緯等について
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1225-8a.pdf
回 | 開催日 | 資料 | 議題 | |
---|---|---|---|---|
基礎WG | 第4回 | 2007.12.10 | 資料 | リン酸オセルタミビル追加非臨床試験資料の調査・検討 |
第3回 | 2007.10.24 | 資料 | リン酸オセルタミビル追加非臨床試験資料の調査・検討 | |
第2回 | 2007.05.30 | 資料 | リン酸オセルタミビルの基礎データ及び追加試験の検討 | |
第1回 | 2007.05.02 | 資料 | リン酸オセルタミビルの基礎データの検討 | |
臨床WG | 第4回 | 2007.12.16 | 資料 | 「異常な行動」及び「突然死」の副作用症例に関する追加調査結果について、「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動情報収集に関する研究」について |
第3回 | 2007.11.21 | 資料 | リン酸オセルタミビルの健康成人男子を対象とした睡眠に関する製造販売後臨床試験(いわゆる睡眠検査室試験)について | |
第1回 | 2007.05.14 | 資料 | リン酸オセルタミビルの服用と「異常な行動」との関係について、リン酸オセルタミビルの服用と「突然死」との関係について |
そして、25日開催された調査会では、タミフルと異常行動の関連を探るさまざまな調査・研究の結果が報告されています。
1.基礎的調査検討のためのワーキンググループ
資料2-1 リン酸オセルタミビルの基礎的調査検討のためのワーキンググループ報告(PDF:231KB)
検討項目 | 結果・見解 |
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脳における薬物動態・代謝研究 | ・オセルタミビル及びその活性代謝物の脳への移行については、動物試験成績により明らかになったと考える。 ・オセルタミピルが脳浮腫聞肺水腫との関係で水チャネルに直接影響を及ぼす可能性については、これまで得られたデータからみて否定的であるo ・インフルエンザの急性期に血液脳関門機能の低下が認められることについては、脂肪酸代謝異常マウスで示されているが、インフルエンザ患者で脳脊髄液中濃度が高まることは報告されていない。 ・これまでの安全性試験におけるオセルタミビル及びオセルタミビル活性代謝物の中枢神経系に対する特異的作用は認められていない。死亡例にみられた中枢抑制を非特異的作用といえるかどうかは検討中であるが、少なくとも臨床用量と比較しきわめて高い用量で現れたものであり、臨床的意義は少ないものと思われる。 ・オセルタミピル活性代謝物がアジア人に一定割合で認められるとされるヒトノイラミニダーゼNEU2 のSNP 変異体を抑制する可能性については、NEU2 のヒトでの分布が筋肉に限定されるとの報告もあり、現段階では突然死や異常行動との関係ははっきりしない。(日本人特有の副作用ではない?) (全体として中枢神経などに大きく影響する結果は得られなかったとの結論のようです) |
脳内におけるウイルス以外の内因性標的に対する活性の有無の検証 | |
幼若ラット等を用いた追加毒性試験 | |
脳内直接投与による薬理学的試験 (現在実施中) |
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循環器系に対する影響評価に関する in vitoro 試験 | |
企業が自主的に実施した試験 |
資料2-2,3 基礎WGの指示に基づき実施した非臨床試験及び自主的に実施した試験・解析の結果について
(中外製薬株式会社作成資料)(その1(PDF:631KB)、その2(PDF:651KB))
2.臨床的調査検討
資料3-1 リン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ報告(PDF:290KB)
目的・内容 | 結果・見解 | ||
---|---|---|---|
臨床試験 | リン酸オセルタミビルの健康成人男子を対象とした睡眠に関する製造販売後臨床試験(いわゆる睡眠検査室試験) (中外製薬株式会社作成資料) (中間解析) (PDF:88KB) |
・タミフル服用後に異常な行動等を発現した副作用症例の症状、経過等が睡眠障害に類似しているものがあるとの指摘があったことを踏まえ、タミフルの服薬時における睡眠への影響を検討 ・反復投与による多施設二重盲検無作為割付クロスオーバー試験 ・対象者:20歳以上25歳未満の健康成人男子30例(中間解析症例数は11例) |
・ビデオ観察中の睡眠期間において、異常な行動は認められなかった。 ・有害事象として、頭痛、手のこわばり、耳介びらんなどが認められたが、これらの発現はプラセボ投与期間であった。 ・臨床検査値としては、いくつかの項目でわずかな上昇が認められたが、いずれもタミフルとの因果性は否定された。 ・覚醒時の心電図(標準12 誘導)測定において、著明な変化は認められなかった。 ・中間解析においては、症例数が限られていること、睡眠検査項目が多岐にわたることから、タミフル投与による影響に関して結論を得ることは困難であると考えられた。 |
健康成人男性を対象とした夜間の心電図に関する製造販売後臨床試験 | ・タミフルの服薬時における夜間の心電図への影響をホルター12 誘導心電計により検討 | 現在実施中 | |
疫学調査等 | インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動情報収集に関する研究(PDF:280KB)(第4回臨床WG資料6) | ・インフルエンザ様疾患離間時に発言する異常行動の背景に関する実態把握 ・昨シーズンのインフルエンザ患者の重度異常行動の調査(今シーズンも軽度の異常行動とあわせ継続実施中) |
・重度の異常行動は164例で報告。昨シーズン前のものなど27例を除外し、137例について分析。 ・137例中タミフル服用の有無ありは82例(60%)、なしは52例(38%)だった。ただ、記憶などをもとにしたデータが中心で、信頼性が低いため因果関係は判断できなかった。この結果からタミフルの服用の有無別の異常な行動の発症率を導き出すことは困難である。 ・本調査は、後向き調査で行われたので、バイアスが生じている可能性がある。 ・タミフルの処方率が正確には分からないので、異常な行動の発症率の厳密な推定、タミフル服用の有無別の比較は難しい。 |
インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究 第一次予備解析結果の概要 (PDF:5,142KB) |
・インフルエンザを発症した18歳未満の者における臨床症状と治療薬剤との関連の調査 ・インフルエンザ感染を最初に確認した患者について、参加医師が定めた特定 の日から連続する10 〜 20 名を調査 |
・全国692施設から報告があり、回収された11,661 症例のうち10,316 症例のデータを整理。 ・タミフル使用例は79.3 %(7870/9929)であった。 ・インフルエンザ発症者の14.7 %(1478/10038)に異常行動の発現が認められ、異常行動に占める重度のもの(事故につながったり、他人に危害を与えたりする可能性がある異常な行動)の割合が3.2 %(47/1459)であった。 ・おびえるなどの軽度の異常行動を含めた発生率を見ると、タミフルを服用した患者の異常行動の発生率は10%、服用しない人は22%。10〜17歳でも同様の傾向だった(新聞記事) ・交絡因子を調整した多変量解析結果の検討が必要である。ただし、交絡因子に関する情報は不足している。また、データ欠損による結果の偏りの解釈を行う必要がある。よって現時点では、結論について議論するまでに至らなかった。 |
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副作用症例についての詳細な調査検討 「異常な行動」、突然死等の副作用報告等の追加調査 |
タミフル (タミフルの副作用報告の精査について(その4)(PDF:57KB)(第5回調査会:資料4-1)) |
・タミフル服用後の異常な行動が就寝中又は覚醒直後に発現したか否か、異常な行動の回復に要した時間、異常な行動に関する記憶の有無、睡眠障害の既往歴・家族歴の有無等についての追加調査 ・タミフル服用後の突然死を含む死亡症例について、心電図、剖検等の結果、心疾患等の既往歴・家族歴の有無等について追加調査 |
・1,432症例が報告され、そのうち転落・飛び降り又はこれらにつながるような「異常な行動」は、282症例であった。また、「異常な行動」以外の精神神経症状は、361症例であった。 ・さらに、1,432症例のうち死亡症例は、71症例であった。このうち「突然死」という用語により医療機関から製薬企業に報告された症例は13症例であった。 (販売開始から平成19年9月30日まで) |
ザナミビル水和物(リレンザ) | 異常な行動等の副作用が報告されていることから、上記同様の追加調査 | ・転落・飛び降り又はこれらにつながるような「異常な行動」の副作用は、10症例であった。また、「異常な行動」以外の精神神経 症状は、30症例であった。 (販売開始から平成19年9月30日まで) |
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塩酸アマンタジン(シンメトレル等) | ・転落・飛び降り又はこれらにつながるような「異常な行動」の副作用は、8症例であった。また、「異常な行動」以外の精神神経症状は、61症例であった。 (「A型インフルエンザウイルス感染症」の効能追加以降、平成19年9月30日まで) |
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タミフル等非使用例 | タミフル等の抗インフルエンザウイルス薬が使用されていないインフルエンザ患者においても異常な行動を発現した症例が、医療機関から厚生労働省に直接報告されたことから、これらの症例について厚生労働省が同様の追加調査 | 平成19年3月2日から9月30日までに、医療機関から報告された転落・飛び降り又はこれらにつながるような「異常な行動」のあったタミフル等非使用例のインフルエンザ患者は、24症例であった。 |
また調査会では、「因果関係は不明であるものの、本剤の使用後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている」として、タミフル以外のインフルエンザ治療薬であるザナミビル(リレンザ)などについても添付文書に「異常行動の発現のおそれがある」などの使用上の注意を新たに記載するよう求めました。
関連情報:
リン酸オセルタミビル(タミフル)の副作用報告等を踏まえた当面の対応に関する意見
(薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会 2007.4.14)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/s0404-3.html
タミフルと突然死・異常行動との因果関係を早急に認め適切な対処を求める要望書
(2007年12月3日薬害タミフル脳症被害者の会代表)等
(PDF:1,113KB)(第5回調査会資料5-1)
タミフル対策調査会:多数の証拠全て無視、だが10代禁止の取下げできず
(『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No99)
http://npojip.org/sokuho/071226.html
参考:読売新聞12月26日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071226-OYT8T00201.htm
12月27日 13:50掲載