第1章から第9章まで、あなたの一生を決める要素九つについて解説してきましたが、上図にそれを総括して描きました。 図の中の太い赤色の鎖線は体の成長、老化曲線で、この形は遺伝子情報による無意識の変化…。老化と共にいろいろの成人病に侵されて死んで行くのですが、戦後5O年、日本人の平均的寿命は世界一の8O歳前後まで延びました。医薬、生活環境、栄養の進歩・向上によるものです。 心の方は(1)の個性を起点に(5)まで 一 老化曲線とは反対に上昇して行きます。 (2)の躾については、小猫による実験があります。縦縞模様の壁に囲まれた箱の中で育てられた小猫を、横縞模様の箱に移すと、やたらに壁に頭をぶつけるという…。小猫の記憶細胞には、縦縞模様が擦り込み=imprintされてしまっているからです。幼少の時の躾の大事なことが分かりましょう。「三つ子の魂、百まで」ですから…。 (3)の学校教育では、最近ようやく一方通行の詰込み→糞暗記→点採り虫→偏差値競争から脱皮して、個性化→多様化への転換が始められました。自動車メーカーは互いに競争して、多様な、よい車を作り、ユーザーの選択に任せ、満足させる…。これが競争原理による正しい発展です。このように学校間や、先生同士の間に競争があって、ユーザーである生徒が、楽しく個性を伸せる学校→開智学校に変えられたら−いじめなど無くなりましょう。開智とは知識と智恵の開発=educationの適訳です。 最後の(5)人格形成ですが、人格者とは人に愛され、尊敬され、期待される人物のこと…。ローマ法王庁は最高の人格者を聖人と呼び、その人の行動をagape=自己犠牲と非打算的な人間愛−といいます。戦前長崎の教会にコルベというポーランド人の神父が居りました。母国に帰ってナチスに捕らえられ、アウシュビッツに送られる…。彼の部屋の中に若い男がいて、「おれには妻子がいるんだ、助けてくれ」と泣いた時、コルべは「そうか、それなら私が身代わりになって死んでやろう」と、真先にガス室に入りました。戦後曽野綾子がその助けられた人を探し出して、対談した記事を読みました。 人間も動物も、まず自分が生きて、自分の遺伝子だけを残すための食欲、性欲、集団欲という本能=業(ごう)=煩悩(ぼんのう)→このエゴ行動が摂理であり、これは善、悪というべきものではありませんが、しかし人間だけに、後から感情、最後に理性が備わって、このエゴをコントロールするのです。コルべはこの業を抹殺し、他人(ひと)の身代わりになって死に、極限の人胸愛を示したのです。もちろん彼に聖人の称号が贈られました。 |