第73回アポネットR研究会報告
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平成16年9月22日(水) 会場:足利プリオパレス
参加者:28名(うち薬剤師23名)
1.製品情報
抗サイトカインリウマチ治療剤「レミケード」について
2.学術講演
リウマチ治療のup to date講 師:岩本 雅弘 先生
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講演では、関節リウマチの病態と治療で用いられる薬剤の特徴について、わかりやすくお話を頂きました。
1.ステロイド剤、NSAIDs
ステロイド剤については、抗炎症作用が強く、腫れや発熱もとることから、炎症の初期には有効である。また初期に使うと、関節破壊を抑制する知見もある。
であるから、炎症反応が強く、DMARDsが効くまでの間については、副作用の発現に気をつけながら、ステロイドやNSAIDsは処方医の指示通りに服用するように、指導する必要がある。
ただ、炎症がおさまって、ステロイドの減量が試みられているときは、むしろ患者さん自身の判断で、服用量を自己調節してもさしつかえないのではないと考えている。
2.DMARDs(抗リウマチ剤)
日本では、どちらかといえば、効果よりも副作用が少ない薬剤が好んで使用される傾向がある。一般的には遅効性(8〜12週間)で、投与初期は、NSAIDsやステロイド剤の併用が必要である。
このうち、最近発売されたレフルノミド(アラバ)は、作用が強力であり効果も2〜4週間で効果が発現する。本剤は半減期が長いため、投与初期に大量に投与し、血中濃度を上げ、以後少量維持量を投与する方法がとられているが、患者さんによる個人差が大きく、初期大量投与により、中毒域に達する可能性もあり、初期大量投与は必ずしも必要ないとする意見もある。
一方、MTX(リウマトレックス)は、日本では抗癌剤のイメージが強く敬遠されがちだが、他剤に比べ効果が確実であり、連用により効果が減弱すること(2次無効)も少ない。また、増量により(臨床上、20r/週で使用することもあり)効果が維持されることから、スタンダード薬であるMTXが日本でも、病態初期の段階から、もっと使われるべきと考えている。
3.生物学的製剤
現状では、既存治療で効果不十分という使用条件があることから、リウマチ患者約70万人のうち4〜5000人にしか使われていない。しかし、関節の破壊は発症して初めの1〜2年が重要であることから。早期段階からの使用も今後は望まれる。
現在は、インフリマキシブ(レミケード)のみが承認されているが、近く、エタネルセプト(エンブレム)も承認の見込みである。共通の長所は、効果発現が早いこと、従来の治療法で効果を示さなかった患者さんのADLを劇的に回復する可能性がある点で、夢の新薬ではないが期待される薬剤である。一方、共通の短所は、費用がかかること、感染症にかかりやすいこと、10〜20年といった長期の安全性がはっきりしていないこと、点滴静注・皮下注など、患者さんの負担が大きい点である。
インフリマキシブ | エタネルセプト | |
---|---|---|
投与方法 | 点滴静脈注射、0、2、6週、その後は2ヵ月に一度 | 皮下注射(週2回) インスリンのように自己注射も可能? |
副作用 | アナフィラキシーショック (予防の為、入院の必要も) |
注射部位の発赤、 |
効果 | より強力 | やや劣る |
MTXとの併用 | 必要 | 併用は必ずしも必要ではない |
4.ハーブ・サプリメントについて
最近話題のグルコサミンやコンドロイチンは、変形性膝関節症に関しては、有効性が確認されているが、関節リウマチについての有効性は、学会発表レベルの報告にとどまり、はっきりしたことはわかっていない。
また、ハーブ、サプリメントのうち、免疫を賦活化する作用があるといわれているものについては、自己免疫疾患の増悪因子の誘因となる場合がある。使用の場合は主治医に相談するなど、販売にあたっても十分留意して欲しい。
5.生物学的製剤の今後
医療経済の問題を考えると、生物学的製剤が今後多く使われるかどうかはわからない。私も患者さんにはざっくばらんに、「年間40万円かかって、判断するまでに20万円かかる」と説明している。
実際、経済的な理由で治療が中断する患者さんもいるが、知らなかったから使えなかったからというのでは患者さんに申し訳ないので、リウマトレックス3C以上使用している患者さんには、CRPの状態に関わらず、(生物学的製剤についての)資料を全員に渡している。
今は患者さんが治療を選ぶ時代で、医者が決めるのではなく、医者は情報提供をして、合うか合わないかを含めて、患者さんと相談して決める時代である。
文責:小嶋慎二
関連リンク等を紹介します。
関連サイトは、お役立ちページの関節リウマチのページをご覧下さい。
穂坂クリニック−リウマチニュース、リウマチ最新治療
〜臨床医がネットなどから独自に収集した、治療薬に関する最近の情報と評価 他〜
http://www.hosaka-clinic.com/news/news01.htm
http://www.hosaka-clinic.com/tx.htm
リウマチ新薬の光と影(さくらいクリニック クスリはリスク)
http://www.reference.co.jp/sakurai/medicine11.html
これから期待される自己免疫疾患の治療法 〜抗サイトカイン療法への期待と現状〜
(リウマチ反応陰性脊椎関節炎ホームページ)
http://www.asahi-net.or.jp/~kp4t-nkjm/kouensyou2.htm
YOUMIURI ON-LINE 医療と介護
リウマチ治療の今(2004年11月17日)
関節破壊を止める新薬 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20041117sr11.htm
画期的な生物学的製剤の登場(RDIC−リウマチ・関節炎情報センター)
http://www.rdic.gr.jp/saishin/news/news11/n1112.html
抗TNFα抗体療法に関する情報(リウマチ21・info)
http://www.riumachi21.info/patient/antibody.html
関節リウマチの新しい薬物療法(医療法人 三志会 宇野整形外科 リウマチ教室)
http://home1.catvmics.ne.jp/~u-seikei/newpage71.html
あるリウマチ患者さんの個人のサイトから
http://www.asahi-net.or.jp/~dt4y-nsi/kusuri2_001.htm