第74回アポネットR研究会報告
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平成16年11月17日(水) 会場:足利プリオパレス
参加者:34名(うち薬剤師31名)
1.製品情報
「生活習慣病とエパデール・アテレック」
講 師:持田製薬梶@東京第二支店学術課長 佐藤 道嗣氏
2.学術講演
FIP報告-世界の薬局事情と患者さまとのコミュニケーション-講 師:大沢 光司 先生
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当日は、この9月に米国ルイジアナ州ニューオリンズ市で開催された、第64回FIP(国際薬学・薬剤師連合)会議の様子と、薬剤師の現状と今後のあり方についてなど、FIPでの発表の一部を紹介しました。また、期間中視察した、大型ドラッグストアの業務の様子について、動画に収録したものをわかりやすく紹介されました。
時間の都合で、具体的なコミュニケーションのあり方までは学習は深まりませんでしたが、日本の薬剤師業務の有り方を考える上で、よい刺激になったのではないかと思います。
1.各国の薬局事情
米国での視察の話の前に、FIPで各国の薬局事情についてをまとめた発表がありましたので、それをまずみなさんに紹介したい。(下記表に整理しました)
(1)ドイツ
薬局の経営形態 | 個人経営のみで、チェーンドラッグはない。法律で、一人(法人も同様)が3店舗以上の薬局を持つことが禁じられている。 |
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保険制度 | 薬価制度あり、保険制度は日本に似ている。 処方せん薬の自己負担あり。 |
OTCの販売規制 | ビタミン含有保健剤など、極めて限定的な品目に限り、薬店(ドロゲリー)にて販売が可能。 |
(2)フランス
薬局の経営形態 | 個人経営のみで、チェーンドラッグはない。 法律で人口あたりの薬局件数が決められている。 |
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保険制度 | 公的保険制度あり。2003年に薬価制度が導入された。 処方せん薬の自己負担あるが、後日償還されるものが多い。 |
OTCの販売規制 | OTCは薬局のみで販売可 |
その他 | 休日・夜間の対応あり |
(3)イギリス
薬局の経営形態 | 個人経営のみで、チェーンドラッグはない。 法律で人口あたりの薬局件数が決められている。 |
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保険制度 | 公的保険制度あり。2003年に薬価制度が導入された。 処方せん薬の自己負担あるが、後日償還されるものが多い。 |
OTCの販売規制 | OTCは薬局のみで販売可 |
その他 | 休日・夜間の対応あり |
(4)カナダ
薬局の経営形態 | 個人薬局、チェーンドラッグあり。 |
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保険制度 | 公的保険制度あり。 |
その他 | 医薬品の安全性の確保や、薬物乱用の防止に力を入れている |
米国より薬価が安い為、近年、米国人がカナダで医療を受けるケースがかなり出てきていて、両国間でこの問題に関して話し合いが持たれている。 |
(5)米国
薬局の経営形態 | チェーンドラッグストア数が増える一方で、独立系薬局は年々減少している。しかし、顧客の信頼度は個人薬局の方が高いという調査結果がある。 |
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保険制度 | 自己責任が基本のないため、公的保険は、一部の軍人と生活保護を受けている人に限られる。このため、約3000万人の国民が、保険がなくお金もないため医療を受けられない状態にある。特に、高齢者が貧困のたね、十分な医療を受けられないのが、最も深刻な問題になっている。 |
OTCの販売規制 | OTCは一般の小売店で取り扱うことが可能。OTCの種類が非常に多く、かつ作用の強いものも安価で供給されている。(例:クラリチンD錠=セチジリン+デキサメタゾン)作用の強力な医薬品がOTCとして売られているため、深刻な副作用も出ている。 |
その他 | 患者一人一人がいろいろな保険に加入しているため、薬局は平均15程度の保険会社と契約を結ばなければならない。 |
ジェネリックを使用すると、コストが1/10位まで削減することができることから、保険会社によってはジェネリックを選択した患者には個人負担分を免除したり、ジェネリックを推奨した薬剤師には報償を支払う場合あり。よって、処方せん薬は、ジェネリックの割合が高い。 |
2.視察から感じた、米国の薬局・薬剤師事情
期間中、他国の参加者とともに、ニューオリンズ中心地から車で30分くらいの郊外の通り沿いの、全国チェーン店のウォールグリーン(日本の大型ドラッグストアに相当)を視察した。
並びに、中規模の病院があるという立地もあり、処方せん枚数は1日350〜700枚応需している。業務は、薬剤師2〜4名(シフト制)、テクニシャン1〜2名、アシスタント(事務)0〜1名という体制で行われていた。取り扱い品目は約1000品目?
(1)受付・調剤
米国では、「リフィル処方せん」という制度があり、1度医師に診察を受けてから処方せんをもらうと、複数回(または半年間)調剤を受けることができる。ウォールグリーンでは、全米4500の店舗網を武器に、2回目以降の調剤が、全米どこの店舗にいっても可能という仕組みを作り上げている。調剤の依頼(予約)は事前に電話やインターネットを通じて行うこともできる。
処方は1〜3剤がほとんどで、瓶入りのメーカーの既製品から必要量を薬局のプラスチック製の瓶に、1種類につき1瓶づつ移しかえて、用法用量を記したシール(約20カ国語に対応)を貼り、薬剤名と用法用量を記した簡単な紙(日本のような薬の写真付きの薬情とは異なる)を渡して、完了となる。剤型は錠剤がほとんどで、水剤は少ない。また散剤はほとんど目にしなかった。
リフィル処方せんといっても、危険性のある薬については、毎回調剤してよいか確認しているという。投薬歴、アレルギー歴、同一処方内の相互作用については、コンピューター管理ができているが、OTC薬との相互作用については、患者から問い合わせがあるときのみに限られているという。
(2)患者様とのコミュニケーション
米国では、「患者に服薬後の症状の変化を聞いたり、副作用のチェックは医師の仕事」という認識があり、患者からの申し出がない限り、薬剤師からこういった情報について尋ねたり、記録を残したりすることはないという。
一方、OTCは非常に多種類あり、また強力な薬も多い。視察中も、ある婦人が2種類のOTCを示し、その違いについて薬剤師に質問している光景を目にした。米国では、日本と異なり、OTCについては、購入者から質問されたときは積極的に答えるなど、積極的に関わっているように思えた。
(3)視察で感じたこと
処方せん調剤に関する患者サービスという観点では、米国の薬剤師より日本の薬剤師の方が優れているように思う。特に米国では、責任分担主義が強すぎて、自分のテリトリーを非常に狭く捉えているように感じた。(自分思考)
ただ、こういった合理的システム(効率主義)は患者様にとって、メリットとなっている点も少なくない。反面教師にしつつも、日本も手本にすべきであろう。
3.世界の薬局・薬剤師の共通の課題
各国の薬局事情は様々だが、今薬局・薬剤師に求められていることは、下記のような点で共通していると考えている。
- 患者と関わる時間を十分にとること
- 医薬品の情報を十分に集め、知識を高めること
- 適切な医薬品の処方を防止すること
- 医薬品の乱用を防止すること
- OTCについても十分な知識をもつこと
最後に、PHARMACISTという言葉にもじって、薬剤師職能のあるべき姿を示したポスターセッションでの発表があったので、以下に紹介したい。
PHARMACISTとは、
POSITIVE ATTITUDE | 明確な態度で接する |
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PRODUCT KNOWLEDGE | 製品知識を持つ |
PATIENT KNOWLEGDE | 患者知識を持つ |
PHARMACEUTICALE CARE | 薬学的な注意を払う |
PATIENT LISTENING | 患者の声に耳を傾ける |
PATIENT COUNSELING | 辛抱強く助言・指導する |
PERSCRIPTION REVIEW | 処方の再検討をする |
もしこれらが実行できないのであれば、
あなたは薬剤師ではなく、HARMACIST
PHARMACISTとは
PATIENCE | 忍耐強さを持つ |
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HONESTY AND HARD WORK | 誠実と勤勉さがある |
ALERTNESS | 用心深さを持つ |
RESEARCH ORIENTATION | 研究心を常に持つ |
MOTIVATAR | 患者に動機づけができる |
ADMINISTRATOR | 責任者・管理者である |
CONCEPTUARIZES | 信念を持っている |
INITIATOR | 教導者・伝授者である |
STUDIOUS | 慎重さがある |
THINKER | 思慮深さがある |
文責:小嶋慎二
関連リンク等を紹介します。
FIPに興味ある方は、次のサイトもチェック!
FIP公式サイト:http://www.fip.org/
各国の医薬品販売制度に興味ある方は、次のサイトもチェック!
第2回厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会
資料2「諸外国における一般用医薬品販売規制等について」が掲載されています
資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0608-7.html
議事録:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/txt/s0514-3.txt
第9回厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会
資料4「諸外国における一般用医薬品販売規制等について」が掲載されています
資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/s0210-3d.html
議事録:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/txt/s0210-1.txt
ジェトロの対日アクセス実態調査
医薬品に関する調査報告書のポイント(米英独仏の医療制度についてまとめられています)
http://www.jetro.go.jp/ip/j/Access/iyakuhin.html
大衆薬に関する調査報告書のポイント
http://www.jetro.go.jp/ip/j/Access/taishuyaku.html
ドイツの医療制度・薬局事情については
日経DI2004年10月号:2004年制度改革で追い込まれたドイツの薬局
ドイツの医療と医療制度(制度改革前の状況)
http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/m405.htm
高齢者の医薬品購入ツアーが盛況
カナダへの米国人の購入ツアーについてのレポートです
http://www.orca.med.or.jp/info/jpn/jpn_2003-08-29_02.html
米国におけるOTCの利用状況を示したレポート(薬害オンブズパーソン会議:注目情報)
・米国での調査で店頭販売(OTC)鎮痛薬を半数が誤用している実態が判明
・米国ティーンエージャーの頭痛セルフメディケーションとOTC薬の誤用