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2007.09.21　リタリン、うつ病の適応症取り下げへ

目的外の使用で水面下の乱用が後を絶たないリタリン（塩酸メチルフェニデート）ですが、21日の各紙は、製造販売元のノバルティスファーマ社が「うつ病」についての効能効果を取り下げる方針を固め、近く薬事法に基づき厚生労働省に取り下げの申請を行うと伝えています。不適切使用を理由に製薬会社が薬の適応症の取り下げをするのは、極めて異例とのことです。

今週になって、毎日新聞がこの問題を深く取り上げていて、患者の求めに応じて、直接診察をしないまま宅配便で処方せんを自宅に届ける事例など、不適切な処方が少なくないことを報じた他、安易な処方のために依存症となってしまった事例などを紹介、また、国立精神・神経センター精神保健研究所の調査報告を引用して、リタリンの乱用が深刻になっていることを伝えていました。

全国精神科医療施設調査（2006年度）
　　http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchJHS2006.pdf
（2年に一度行われている調査で、国立精神・神経センター精神保健研究所ウェブサイト（http://www.ncnp.go.jp/nimh/）に掲載されています）　

ノバルティスファーマ社では、患者が複数の診療所をかけもち受診してリタリンを大量に服用している例や、患者がリタリンの処方せんをカラーコピーして調剤してくれる保険薬局を渡り歩いた例があるとして、リタリンを処方される前に、他院で本剤の処方を受けていないかを必ず確認する、処方せんに疑義がある場合は必ず処方医に確認するなどの注意喚起を行っていました。しかし、適応症のない患者が掛け持ち受診して大量に入手したり、違法に売買するケースが後を絶たず、依然として乱用に歯止めがかからないとして今回の方針に踏み切ったようです。

リタリン錠・リタリン散の適正使用のお願い（2007年6月）
　　http://www.novartis.co.jp/product/rit/te/te_rit0706.pdf

各紙は、この取り下げが認められれば、うつ病患者への処方は保険適用がなくなることから、安易な処方がされなくなるだろうとしていますが、保険外診療での処方は医師の裁量で可能であることは変わりませんし、またネット上の掲示板などでは、リタリンのみならず、抗うつ薬・睡眠導入薬・抗不安薬など、十分な診察もせずに処方する医療機関の情報が簡単に手に入る現状があります。ですから、モラルを欠いた医師が患者の求めに応じて処方を行う懸念は消えません。

さらに現状では、掛け持ち受診を偽って、必要以上の薬を入手することも可能（保険組合では、同時の重複受診はできないような仕組みは取り入れているようです）であり、適応症の限定だけでは乱用の防止にならないと考えます。メチルフェニデートなど依存性のあるものについては、患者IDカードで保険外も含めて処方を管理する（一定期間に一定の処方数しかできない）などの仕組みを導入し、違反した場合には厳しく処罰するなどの法整備も必要ではないかと思います。

一連の報道を受け、厚労省は21日、駆け込み需要を警戒し、「塩酸メチルフェニデート（リタリン）その他向精神薬の適正使用、処方せんに係る疑義照会の徹底等について」と題する通知を都道府県知事に対して行っています。通知では、 薬局における処方せん確認の徹底等を行うよう求めています。

• 向精神薬の処方せんに係る疑義照会(薬剤師法(昭和35年法律第146号) 第24条) については、特にその対応を徹底すること。
• 偽造処方せんによる向精神薬の調剤が行われることがないよう、処方せんの精査を徹底すること。
• 向精神薬の不適切な調剤を求めていることが疑われる事例を把握した場合には、近隣の薬局に連絡する等、乱用防止のための連携を図ること。

ADHD治療薬としても、塩酸メチルフェニデートは近く発売を控えています。是非さらなる検討をして頂きたいものです。

関連情報：TOPICS 2007.08.30　国内初のADHD治療薬、承認へ向けての動き
　　　　　　リタリン乱用（赤城高原ホスピラルウェブサイト）
　　　　　　　http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/DR_ritalin.htm

関連記事：中枢神経興奮剤「リタリン」‐乱用防止でうつ病の適用を削除へ
　　　　　　（薬事日報 HEADLINE NEWS 2007.9.21）
　　　　　　　　http://www.yakuji.co.jp/entry4444.html

参考：朝日新聞9月21日
　　　　　http://www.asahi.com/life/update/0920/TKY200709200362.html
　　　　読売新聞9月21日
　　　　　http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070921i304.htm
　　　　毎日新聞9月21日
　http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2007/09/20070921ddm001040005000c.html
　　　　毎日新聞9月19日
　http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/archive/news/2007/09/20070919ddm041040152000c.html

9月21日12:50掲載　21:10更新　21:50更新