第87回アポネットR研究会報告
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平成18年12月13日(水) 会場:足利プリオパレス
参加者:23名(薬剤師22名・看護師1名)
1.製品情報
田辺製薬株式会社取り扱い『ワクチン類』について
田辺製薬株式会社
2.学術講演
「ワクチンについて」
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1.免疫、ワクチンとは
「免疫」とは「疫(やまい)」から「免(まぬが)れる」ことで、疾病に対して抵抗性を獲得した状態を意味する。また、「ワクチン」は、特定の病原体に対し、人為的にこの免疫をを作らせ、自然感染を予防しようというもの。
2.ワクチンの種類
1.生ワクチン
生きた病原性微生物の病原性を弱毒化したもので、ウイルス自体は生きているので、接種後1〜3週間に自然に罹患したのと同じような軽い症状が出ることがある。感染したと同じ状況が作られるので、強固な免疫が産生され、理論上終生免疫が期待できる。
ただ最近は、自然ウイルスが少なくなるなどのために、終生免疫が得られないケースがでてきている。昨年茨城県で麻しん(はしか)が流行したのはこのことが原因ではないかといわれていて、今年から麻しんが2回接種になったのは、このためである。
代表的なワクチンとしては、ポリオ、MR(麻しん風しん混合)、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずほうそう)、BCG(結核)などがある。
2.不活化ワクチン
病原微生物を大量培養し、感染予防に働く抗原を取り出して不活化し、精製したもの。生ワクチンに比べて免疫力が弱いので、免疫持続のためには複数接種が必要。
代表的なワクチンとしては、DPT三種混合(D:ジフテリア・P:百日せき・T:破傷風)、DT二種混合(D:ジフテリア・T:破傷風)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌などがある。
3.トキソイド
毒素(トキソイド)を処理し、免疫原生(免疫を作る能力)を残して無毒化したもの。不活化ワクチンとして分類されることもあある。
代表的なワクチンとしては、ジフテリア、破傷風などがある
2.ワクチンの接種間隔
異なる種類のワクチンを接種するには、次のワクチンを接種するまで、下記のように間隔をあけることが必要。
生ワクチンを接種した日から次の接種を行う日までの間隔は、27日間以上置く
不活化ワクチンを接種した日から次の接種を行う日までの間隔は、6日間以上置く
3.ワクチンの副反応
医薬品における副作用に相当。
関係する成分 | 副反応 | 発症までの期間 | |
---|---|---|---|
生ワクチン | 弱毒ウイルス | 病毒病原体の感染症状 | 接種後7〜21日 |
弱毒細菌 | もとの病気の症状や合併症に似る | 麻しん 3〜12日 | |
培養液 安定剤 抗生物質 |
局所反応 アレルギー反応 アナフィラキシー反応 |
接種直後ないし、 48時間以内 |
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不活性化ワクチン ・トキソイド |
病原微生物由来 | 細菌成分、トキソイド毒性または、アレルギー反応 | 接種直後から24時間以内、 遅くとも48時間以内 |
培養液 安定剤 抗生物質 |
局所反応 アレルギー反応 アナフィラキシー反応 |
※ワクチン別の副反応は、下記サイトを参考にするとよい
副反応ってな〜に(細菌製剤協会ウェブサイト)
http://www.wakutin.or.jp/page97.htm
4.ウイルスの培養方法
生ワクチンでは細胞培養、不活性化ワクチンでは動物が用いられている。
生ワクチン-麻しん:鶏胚細胞、風疹:うずら胚細胞、水痘:ヒト二倍体細胞
不活性化ワクチン-インフルエンザ:発育鶏卵(漿尿液)、日本脳炎:マウス(脳乳剤)
5.ワクチンの管理
1.有効期限
国家検定から合格した日から起算する。
2.キャップの色による過誤の防止
ワクチン製剤のテーマカラーは、世界的に統一(WHOが推奨)されているので、製剤はキャップの色でも確認することができる。
麻しん:オレンジ色、風疹:ピンク、BCG:青色、DPT(3種混合):黄色、DT(2種混合):若草色、破傷風:緑色、日本脳炎:藤色、インフルエンザ:水色など。
なお、予診票の紙色についてもキャップの色と同様な色に規定されている。
6.ワクチン取り扱い上の注意
使用前
- 国家検定の証紙が貼ってあるかを確認する
- 使用しようとするワクチン名が、表示されたワクチン名と合致しているかを確認する
- 有効期限内であることを確認する
- 異物の混入、その他の異常がないかを確認する
- 生ワクチンにおいては、光に弱いため、溶解の前後にかかわらず光に当たらないように注意する
- 不活性化ワクチンにおいては、誤って凍結させたものは、使用してはならない
接種前
- 生ワクチンは、接種直前に溶解し、一度溶解したものは直ちに使用する
- 不活性化ワクチンは、冷蔵庫から取り出し、室温になってから、必ず振り混ぜ均等にして使用する
- 一度針をさしたものは、当日中に使用する(保存剤使用不活性化ワクチン)
7.ワクチン接種前後の注意点
接種前
- 通知やパンフレットをよく読み、ワクチン接種の必要性や副反応を理解する
- 接種前日に入浴して、身体を清潔にする
- 清潔な着衣をつける
- 予診表は正確に記入する
- 被接種者が子どもの場合、母子手帳を持参する
接種後
- 接種後30分は、病院内で様子を観察する
- 接種後24時間、遅くとも48時間は副反応の出現に注意するので注意する
- 接種部位を清潔に保ち、激しい運動はさける
- 接種当日の入浴は可、ただ接種部位は強くこすったり、洗ったりはしない
- 高熱やけいれんなどの異常な症状が出た場合には、すみやかに医師の診察を受ける
8.インフルエンザワクチン
1.インフルエンザウイルスの特徴
インフルエンザウイルスの大きさは100nm (1万分の1o)といわれ、8本のRNAのまわりに脂質できたヘンベロープというもので覆われている。また表面には、HA(ヘマグルチニン)とNA(ノイミニダーゼ)の2種類の突起物がある。
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型(罹患しても風邪のような症状で、集団発生はないと言われている)の3種類がありますが、このうちのA型はHA、NAの型がそれぞれ15種類、9種類あるために、144種類に達している。現在騒がれている鳥インフルエンザは、このうちのHAが5型NAが1型のH5N1型のA型インフルエンザをさしている。
A型インフルエンザは鳥類や人以外にも感染することがわかっていて、競争馬などでは、実際にインフルエンザワクチンが使用されている。
※さらに詳しく
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2.インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを失活させて抗原性のある成分のHA(ヘマグルチニン)だけを取り出して精製したものである。
現在のインフルエンザワクチンは、Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)、B型に対応するものを組みあわせてつくられているが、毎年同じタイプのウイルスが流行するとは限らないので、何を製造するかは厚労省ではWHOの勧告に従って総合的に検討される。
不活化ワクチンなので、接種後に感染症様症状が発現することはない。
※さらに詳しく
インフルエンザワクチン推奨株(ふたばクリニックHP)
http://www.futaba-cl.com/main10-09.htm
3.インフルエンザの効果
インフルエンザワクチンにより、インフルエンザの発病を阻止する効果は、34〜55%にすぎないが、インフルエンザ契機とした高齢者の死亡阻止効果は82%に達するというデータがあり、重症化を含め個人防衛に有効なワクチンといえる
9.新型インフルエンザワクチン
1.鳥インフルエンザ
鴨などの野生水鳥が宿主(腸管内でウイルスが増殖する)となり、七面鳥→にわとりなどに罹患するH5N1のA型インフルエンザのことを、鳥インフルエンザという。また、鳥インフルエンザのなかでも、ニワトリ、カモなどが死亡してしまう重篤な症状をきたすものを高病原性鳥インフルエンザという。
2.新型インフルエンザ
インフルエンザウイルスの変異により、これまでに、ヒトに感染しなかったインフルエンザウイルスが、ヒトへ感染するようになり、そしてさらにはヒトからヒトへ感染するようになる。この変異したインフルエンザウイルスのことを新型インフルエンザウイルスといい、そのウイルスによって起こるインフルエンザを新型インフルエンザという。海外では、「パンデミックインフルエンザ」と呼ばれるのが一般的。
新型インフルエンザウイルスが発生する仕組みは、鳥インフルエンザウイルスがヒトや鳥類の体内で変異するケースと、、ヒトやブタに、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが同時に感染し、それぞれが混ざり合い、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザウイルス変異するケースが考えられてる。
3.新型インフルエンザワクチン
新型インフルエンザワクチンは、H5N1に対するワクチンである。現在、ベトナムの患者から分離されたものをワクチン株として製造が試みられている。通常のインフルンザワクチンと同様、卵で培養が行われる。
ただ、あまりに病原性が強いために、卵が死んでしまって、うまくいかなかった。そこで、RNAをDNAに置き換えるという遺伝子操作を行い、低病原性のH5N1をつくり、それをワクチン株にして、現在製造が行われている。現在フェーズ1が終了し、フェーズ2が進行中である。
参考:細菌製剤ウェブサイト、きょうの健康テキスト2006年11月号、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』、調剤と情報2005年7月号、新型インフルエンザに関するQ&A
文責:小嶋慎二
関連リンク等を紹介します(アクセス日2006.12.17)
細菌製剤協会ウェブサイト
予防接種ガイドライン2006年3月改訂版((財)予防接種リーサーチセンター発行)
(国立感染症研究所・感染症情報センター内)
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/2006vagl/index.html
予防接種と子どもの健康2006年3月改訂版((財)予防接種リーサーチセンター発行)
(国立感染症研究所・感染症情報センター内)
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/2006chealth/index.html
予防接種に関するQ&A集(細菌製剤協会)
http://www.wakutin.or.jp/qanda/mokuji.html
予防接種に関する検討会
予防接種(国立感染症研究所・感染症情報センター)
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/vaccine-j.html
予防接種対策に関する情報(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp1107-1.html
インフルエンザ(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html
新型インフルエンザ対策関連情報(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
インフルエンザ(国立感染症研究所・感染症情報センター)
高病原性鳥インフルエンザ(国立感染症研究所・感染症情報センター)
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html
高病原性鳥インフルエンザ関連情報(動物衛生研究所)
http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poultry/tori_influenza.html