第88回アポネットR研究会報告
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平成19年1月23日(火) 会場:足利市民会館
参加者:30名(薬剤師30名)
1.最近の話題
「もうすぐ来るぞ、実習生」講 師:鹿村 恵明 先生
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1.6年制の実務実習
実習というと、「学生には危ないからさせない」というのが今まででしたが、これからは「できない学生は卒業させない」というように教育方針が大きく変わりました。6年制で行われる実務実習というのは、4年制のもの異なり、より患者さんに近い部分、薬剤師に近い部分の仕事をやることになります。(下表)
実務実習 | 4年制 | 6年制 |
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実習期間 | 2〜4週間 | 病院薬局、それぞれ2.5ヶ月 |
指導者 | 実習生指導薬剤師 | 認定実務実習指導薬剤師 |
指導内容 | 薬局実務実習テキスト | モデルコアカリキュラム |
特徴 | 到達目標 | 一般目標、方略、到達目標、評価 |
実習形態 | 見学型 病院or薬局 |
参加型 病院and薬局 |
2.共用試験
そして、全ての学生がこの実務実習を行えるわけではありません。4年生から5年生の間に行われるCBT、CSCEという2つの共用試験に合格した人のみが、実務実習に臨むことができます。
CBT(Computer-based testing)とは、コンピュータを用いた知識評価のための多肢選択形式の試験で、あらかじめプールされた問題をコンピュータがアトランダムに出題して答えるというものです。
OSCE(Objective structured clinical examination:オスキー)とは、第三者によって行われる調剤技能や態度を評価するための客観的臨床能力試験です。錠剤や水剤の調剤はもちろんのこと、注射剤の混注や服薬指導などについてもクリアしなければなりません。
3.変わる薬学教育
実務実習の導入だけではなく、6年制では薬学教育全体も大きく変わっています。
各大学は、教育の7割は「薬学教育モデル・コアカリキュラム」に従い行い、残りの3割は大学独自のカリキュラムを取り入れるという仕組みに変わっています。
★詳しい情報は、下記リンクを参考にして下さい。
文責:小嶋慎二
関連リンク等を紹介します。
「薬学教育の改善・充実について」答申-中央教育審議会
(文部科学広報 2004年3月24日 −第47号− )
http://www.mext.go.jp/b_menu/kouhou/040324/002.htm
実務実習モデル・コアカリキュラム
(薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議 実務実習モデル・コアカリキュラムの作成に関する
小委員会 文部科学省2004年2月12日掲載)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/022/toushin/04052401.htm
薬学教育モデル・コアカリキュラム 薬学教育実務実習・卒業実習カリキュラム
(日本薬学会 ウェブサイト 2002年11月8日)
http://www.pharm.or.jp/rijikai/curriculum/index.html
本文:〔PDF:4.84MB〕
薬学教育モデル・コアカリキュラム(合本)
(日本薬学会 ウェブサイト 2005年11月7日)
http://www.pharm.or.jp/rijikai/cur2005/index.html
本文:〔PDF:1MB〕
薬学部6年制化を検証する(Kawaijuku Kei-Net)
https://kjp.oo.kawai-juku.ac.jp/www/keinet/doc/keinet/jyohoshi/gl/toku0407-1/index.html
有限責任中間法人 薬学教育協議会 ウェブサイト
2.学術講演
「覚えておきたい後発医薬品調剤のための基礎知識」講 師:浅井 睦 先生
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1.くすりの特許とは
患者さんに説明の際に、「特許」という言葉を使って説明することがあると思いますが、くすりに関する「特許」には物質の発明に係る特許である物質特許と、効能や効果に係る特許である用途特許、製剤の製法に係る特許である製剤特許などがあります。
このうち物質特許は、新薬開発にあたって、創薬スクリーニングをして2〜3年かけて得られた新薬候補の有効成分として出願したものをいい、特許期間として20〜25年あります。現在、特許出願をしてから承認・発売まで15年くらいかかるといわれているので、この20〜25年から15年を差し引いた期間、即ち新薬として発売が開始されて10年くらいたってから、ようやく後発医薬品が発売されます。ですからいわゆる後発医薬品として、いつ発売が承認されるかは、この物質特許を出願した時期がいつだったかがポイントになります。
一方、用途特許とは、新しい使い方を発見したことに対する特許で、PPIをピロリ菌除菌に用いることがこれにあたります。また、製剤特許は徐放化の新しい仕組みをつくったときなどがこれにあたります。
2.生物学的同等性試験とは
先発品は、有効性・安全性の証明を行うことから、臨床試験が必須になりますが、後発品はこの臨床試験が求められない代わりに、生物学的同等性試験と呼ばれる先発品と同等であることを証明する試験を実施する必要があります。
現在の生物学的同等性試験は、WHOのガイドライン(つまりグローバルスタンダードに沿ったもので、日本では世界でも一番厳しいともいわれている)を参考に見直された、1997年に出された新ガイドラインをもとに行われています。
具体的には、先発品と後発品を服用して薬物の血中濃度を測定、Cmax(最高血中濃度=吸収の速さ)、AUC(血中濃度-時間曲線下面積=吸収の量)を求めて、血中濃度のパターンが相似しているかどうか、統計学的に検定をかけて評価を行います。
実際の試験は、クロスオーバー試験という方法を用います。これは、健康な成人を20〜30人を集めて、まず2つの群に分けて、それぞれ先発品と後発品を飲んでもらって、あらかじめ決められた時間に採血(7〜10回程度)を行い血中濃度を測定します。次いで、1〜2週間の休薬期間をおいて、前回先発品を飲んだ人は後発品を、前回後発品を飲んだ人は先発品を飲んでもらって、同じように血中濃度を測定します。被験者はそれぞれ、先発品・後発品を飲んでいるわけですから、これらの結果を集めて、統計学的に検討をかけて評価が行われます。
最近の後発品の添付文書を見ていただければわかると思いますが、先発品と後発品2つのグラフを並べ、Cmax、AUCのデータの他、Tmax(最高血中濃度到達時間)、T1/2(消失半減期(血中濃度半減期・生物学的半減期))の値を記載して、両者の薬物動態が比較できるようになっています。
関連情報:生物学的同等性とは-ジェネリック医薬品について
(医薬工業協議会ウェブサイト)
http://www.epma.gr.jp/something_002.html
3.溶出試験
一方、経口剤については、生物学的同等試験に加えて溶出試験を行うことが求めれています。この溶出試験はPHが異なる試験液に入れてゆっくりと攪拌、溶け出してきた主薬成分を時間ごとにサンプリングをして、溶出挙動をみるものです。
試験液として用いられるPHは、PH1.2(胃のPH)、PH4(日本人に多い低酸症の胃に相当、PH3〜5の間の場合もある)、PH6.8(小腸のPH)など、ヒトの消化管内を想定したものになっています。
4.注射剤の生物学的同等性試験
では、内服剤以外の生物学的同等性試験はどのように行われているのでしょうか?
注射剤については、ガイドラインによって、生物学的同等性試験が必要なもの(皮下注射・筋肉内注射)と必要でないもの(静脈注射)があります。ですから、用法・用量で静注・点滴静注の適応しかない注射剤については、生物学的同等試験は行われていません。
静脈注射の同等性は、含量・性状・PH及び浸透圧(主薬が最も安定する値・注入したときの疼痛や組織への影響)など、物理学的に同等性であれば、体内での薬の消失過程は同じと考えられるので、同等と判断されます。
一方、皮下注射・筋肉注射については、個人差のある皮膚を通って吸収されることから、2.と同様の試験が求められます。
5.外用剤の生物学的同等性試験
外用剤についても、注射剤と同様、生物学的同等性試験が必要なものと必要でないものがあります。
坐薬や経皮吸収ニトログリセリン製剤などの全身的な作用を期待するものについては、内服剤と同様に血中濃度を測って同等性を検討する必要がありますが、消炎鎮痛剤の塗り薬などの局所的に用いる軟膏剤などについては、2003年に策定された局所皮膚適用製剤の生物学的同等性試験ガイドラインに従って、同等性の検討が行われます。
局所皮膚適用製剤の生物学的同等性試験GLでは、局所皮膚適用製剤の代表的な生物学的同等性の評価方法として、1. 皮膚薬物動態学的試験 2. 薬理学的試験 3.残存量試験 4. 薬物動態学的試験 5. 臨床試験 6. in vitro 効力試験、7. 動物試験が示されていて、薬物及び製剤の特性に応じて最適の試験法を採用すればよいことになっていますが、通常は皮膚薬物動態学的試験(テープストリッピング試験)が第一選択として行われています。
この皮膚薬物動態学的試験は、薬剤が適用部位の角層へ分布→角層を通過→生きた表皮細胞層へ到達するという性質を利用して、生物学的同等性を評価する方法で、具体的には薬剤の適用(塗布)後、粘着性のテープで薬剤適用部位の角層を剥がして、角層に存在する薬物を定量するという方法がとられます。
6.品質再評価
品質再評価とは、内用固形製剤の溶出性に係わる品質が適当であることを確認すると共に、適当な溶出試験を設定することにより内用固形製剤の品質を一定の水準に確保することを目的に1997年から開始されているもので、1995年4月より前に承認申請された(95年4月以降に承認申請された内用固形製剤は、溶出試験を含む新ガイドラインで承認申請されているため対象外)内用固形製剤を対象に行われています。
方法は、3.の溶出試験と同様、先発品に対してpHの異なる4種の試験液(pH1.2、4.0、6.8、水)で、溶出試験を適合させるというもので、これに適合すれば「品質再評価に合格」として、いわゆるオレンジブックに収載されます。
関連情報:品質再評価とは-ジェネリック医薬品について
(医薬工業協議会ウェブサイト)
http://www.epma.gr.jp/something_002-1.html
7.後発医薬品の原体
よく、「何かしら悪いものを使っているのではないか」漠然とした不安があるようですが、日局又は局外規の公定書に収載されたものについては、公定書の規格を満たしたものが必ず使われています。
また、日局又は局外規の公定書に収載されていない原体については、後発医薬品の審査の段階で先発原体と規格及び試験方法が同等又はそれ以上であるかどうかで、規格を満したものとしています。
文責:小嶋慎二
後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(2006/11/24改正)
本文:http://www.nihs.go.jp/drug/be-guide/GL061124_BE.pdf
Q&A:http://www.nihs.go.jp/drug/be-guide/QA061124_BE.pdf
局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン
(2006/11/24改正)
本文:http://www.nihs.go.jp/drug/be-guide/GL061124_hifu.pdf
Q&A:http://www.nihs.go.jp/drug/be-guide/QA061124_hifu.pdf
ジェネリック医薬品Q&A(医薬工業協議会)
ブランド薬とジェネリック薬(メルクマニュアル・家庭版)
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec02/ch017/ch017a.html
(米国での状況ですが、理解するのに役立ちます)