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2007.01.27 スタチンのＯＴＣ化で薬剤師に求められるもの
英国では、2004年7月に心臓病の予防になりうるとして、鳴り物入りでシンバスタチンがＯＴＣ（Zocor Heart-Pro：simvastatin 10mg）にスイッチ化されていますが、ＰＪ誌の最新号でこの販売の状況が伝えられています。
Sale of OTC statins: is it a lost opportunity?
（The Pharmaceutical Journal 2007.1.27）
http://www.pharmj.com/Editorial/20070127/retailpharmacy/p1otcstatins.html
英国王立薬剤師会（RPSGB）では販売の手引き書を作るなどして、適正な販売に努めていますが、近年の英国薬剤師をとりまく環境の変化も相まって、「公衆衛生における職能を発揮できる大きな機会を失った」「男性よりも、財布を握っている女性をターゲットとした広告を行うべきであった」など、販売はあまり順調にはいっていないようです。
Practice Guidance on the Sale of Over the Counter Simvastatin
（Royal Pharmaceutical Society of Great Britain 2004.7）
http://www.rpsgb.org/pdfs/otcsimvastatinguid.pdf
PRACTICE GUIDANCE: OTC SIMVASTATIN
（Royal Pharmaceutical Society of Great Britain 2004.7）
http://www.rpsgb.org/pdfs/otcsimvastatincardguid.pdf
シンバスタチンのOTC化に関しては、PubMedで検索すると多くの論文がヒットするなど、現在でもその是非についてはさまざまな意見があります。特に、長期に服用することを考えると、やはり次のような懸念についての払拭が求められます。
- 血液データを調べるわけにはいかないので、効果をどうやって判定するか
- OTCは処方せん医薬品に比べ低用量（といっても日本における常用量以上だが）であり、状態によっては効果を十分発揮しない可能性がある（予防が中途半端になる）
- 肝障害や横紋筋融解症発現の可能性がある（これらの副作用が見逃される可能性がある）
- 用法を守らない懸念がある（脂っこいものを食べたという理由で自己判断で余計に服用する。当然副作用のリスクも高まる）
- 服用していれば大丈夫という意識が働き、食事や運動、禁煙などのライフスタイルの変更を行わない可能性がある
- OTCでは広告が可能であり、医療用医薬品との名前が同じ場合には、形を変えた医療用医薬品の直接広告につながるのではないか（日本で言うところの"ガスター10"）
国の医療費抑制、製薬会社のマーケットを広げたいとする戦略を考えると、これから多くの国で処方せん医薬品のスイッチ化がすすむと考えられますが。薬局薬剤師は、よりわかりやすい副作用情報を積極的な提供することや、ライフスタイルへのアドバイス（介入）が求められます。
関連情報：TOPICS 2007.01.13 ファイザー社、バイアグラの欧米でのＯＴＣ化を検討
2005.07.05 英国のOTC事情
参考：Is it appropriate to make statins available over the counter?
(Circulation.2006;114:1310-1314.)
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/114/12/1310
Statins and Over-the-Counter Availability
（NEJM 2005;352:1403-1405）(上の論文からFULLTEXTリンク可)
Direct to consumer marketing
Switch to over the counter can become indirect advertising directly to consumers
（BMJ 2005;330:90）
http://www.bmj.com/cgi/content/full/330/7496/906-a
Switching prescription drugs to over the counter （BMJ 2005;330:39-41）
http://www.bmj.com/cgi/content/full/330/7481/39
1月27日18時30分掲載