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第78回アポネットR研究会報告

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平成17年4月13日(水)  会場:足利市民プラザ 総合会館センター

参加者:25名(うち薬剤師24名)

1.業務支援情報

「ENIF DS掲示板システム」について
                      東邦薬品株式会社

2.学術講演

「生涯学習の必要性」
〜将来の薬剤師免許更新制に備えて〜

講 師:朝倉 正彦 先生
(特定非営利活動法人 医療教育研究所 常務理事)

特定非営利活動法人 医療教育研究所HP
http://www.ime.or.jp/

1.はじめに

私たちの団体は2002年の1月に内閣府の認証を得て設立されたNPO法人(非特定営利活動法人)です。行っている活動は、インターネットを介した薬剤師の生涯学習事業の他、一般の市民の方々に対する、健康や福祉、介護保険の情報の発信も行っています。

そして、私たちの理念として、「薬剤師の先生方がこの日本の医療の中で活躍するようになれば、日本の医療はもっとよくなるんだ。そして結果として、国民の健康に貢献できるんだ。」ということを持っていまして、本日はこういった理念の実践の一つとして、薬剤師の皆さんにエールを送りたいという考えで、お話させていただきます。

2.米国の薬剤師が信頼されている理由

薬剤師が、医療の場でその専門職能を発揮していれば、一般国民や他の医療職からの評価は上がります。実際米国では、薬剤師が最も尊敬され、信頼されるプロフェッショナル(Gallup世論調査 1998年まで9年連続1位、その後も2位を継続)として認められているのは有名な話です。

しかし、一方で米国では、連邦政府により、「自分自身が医療チームのメンバーとしてアクティブな一員となることによって、医療過誤の防止につながる」という指導も患者教育の一環として、積極的に行われています。このため患者は、薬に関しても、「どのようなメカニズムで働くのか」「なぜその薬なのか」などを知る権利を主張します。

米国の薬剤師たちはこういった背景から、「患者以上に、薬に関する知識を高めていなければいけない」という緊張感(強迫観念)に常にさらされています。実際、薬剤師の知識が乏しかったりすると、患者は平気で見下したりしますし、誤った情報を与えられた場合などは、訴えられて、免停になることもあります。

米国で薬剤師が、これに負けない自信と責任、誇りをもつように生涯研修を含めた徹底した教育がなされるのは、こういった事情があり、このことがまた国民からの信頼を得ているのです。

参考:米国の患者教育の例:医療過誤を防ぐ20のコツ20 Tips to Help Prevent Medical Errors
       〜日本でいう“get the answer運動”のようなもの

米国では、多くの州がインターネットで、薬剤師の仕事に関しての問題や苦情について、受け付けている
     例:カリフォルニア州薬事委員会“Board of Pharmacy”(http://www.pharmacy.ca.gov/)の、
        苦情申し立てのページ“ Filing a Complaint”
         (http://www.pharmacy.ca.gov/consumers/complaint_info.htm

3.薬剤師の需給問題

日本の私立薬科大学は、1982年に新設された福山大学を最後に、この約20年間は29校体制(定員7320名。ちなみに、国公立大の定員は17校1460名)が続いてきました。しかし、政府の規制緩和方針の影響で、2003年の就実大学(岡山市)を皮切りに、今後多くの大学の新設が予定されています。そして、2007年までに21校3475名の定員増が見込まれ、さらに9校に新設のうわさがあります。

しかし、急速な供給がすすむ一方で、需要については頭打ちの傾向が見えています。厚労省の薬剤師問題検討会が2002年9月にまとめた「薬剤師需給の予測について」の結論でも、平成19年以降に順次20%程度減少させないと、薬剤師免許を取得したにもかかわらず、その専門性を活用できないという状況を招くと推測されています。

薬剤師の需給のバランスが大幅に崩れることは必至であり、選ばれる薬剤師となるための自助努力が必要と私は考えています。

参考:2003年度以降新設予定の薬科大学、薬学部(清光編入学院)
      http://www.seiko-lab.com/whats/topics/topics42.html
     薬剤師需給の予測について(薬剤師問題検討会)(日本薬剤師研修センターHP内)
      http://www.jpec.or.jp/contents/c13/jyukyuyosoku.pdf
     迫り来る“薬剤師過剰時代”(NIKKEI Drug Information 2003年10月10日号)
      http://bpstore.nikkeibp.co.jp/mag/images/Iryo/pdf/ndi.pdf

4.米国の薬剤師免許制度について

米国では全ての州で免許更新制を導入していて、多くは2年毎の更新制をとっています。そして、免許更新の条件として、Board of Pharmacyが認定した講習を一定時間(多くの州で、年間15ch。1ch(contact hour)は、50〜60分の授業)受けることが義務付けられています。日本でも、日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師制度(3年で30単位)というのがありますが、実はこの米国の薬剤師免許更新制度に代わるものとして考えられたのです。

一方講習の中身については、多くの州で、ACPE(Accreditation Council for Pharmacy Education 薬剤師教育認証協議会)やCME(Continuing Medical Education) の認定プログラムを採用しています。ACPEでは、Provider(生涯学習実施機関、全米で416団体が登録)に対し、各講義ごとの学習目標を明らかにするなどの、さまざまなガイドラインを示し、統一性をはかっています。

このACPEによる生涯学習機関の認証方法は、わが国でも2004年5月に設立された、薬剤師認定制度認証機構が今後採用する模様です。

5.日本における生涯研修(卒後研修)の現状

厚生労働省では、平成17年度の重点事項として「薬剤師の資質向上」を掲げていて、平成17年度の厚生労働省の予算案でも、「4年制卒薬剤師に対する知識・経験のさらなる向上のために研修の充実強化を図る」ための予算が計上されています。どうやら今後は、4年制卒で、比較的経験の浅い(5年未満)薬剤師に対して、「実務実習を中心とした卒後研修」が義務化される可能性があります。

一方生涯研修の場として、日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師制度、日本病院薬剤師会の認定薬剤師制度の他、日本医療薬学会の認定薬剤師制度、日本病院薬剤師会の専門薬剤師認定制度、臨床薬理学会によるCRC(治験コーディネータ認定制度)などが、現在利用されています。おそらく今後は、履修単位を認定する生涯研修の実施機関が、さらに50〜60くらいできるのではないかと私は考えています

しかし現在の日本における生涯研修は、米国のように制度に統一性がなく、また研修を受けなくても不利益がないという問題があります。また、最近増えつつある“専門薬剤師”についても、どういう役割を果たすべきかの検討より制度の実施ばかりが急がれている印象があり、それぞれの実施機関による互換性をもった研修が行われることが望まれます。

先に述べたように、日本でも生涯研修が義務化の方向にあることから、おそらく今後は、薬剤師認定制度認証機構を中心に、研修認定薬剤師制度の整備・再構築が進められ、最終的には生涯学習と絡めた形での薬剤師免許の更新制が決定するように思われます。

参考:既存の薬剤師認定制度およびその実施母体の紹介(薬剤師認定制度認証機構HP内)
       http://www.cpc-j.org/contents/c06/200410syokai.html

文責:小嶋慎二

関連リンク等を紹介します。

薬剤師認定制度認証機構 Council on Pharmacists Credentials(CPC)

http://www.cpc-j.org/

期待にこたえられることを保証する「薬剤師認定制度認証機構」
  (日本薬剤師研修センターニュース「巻頭言」、2004.10月号)

http://www.jpec.or.jp/contents/c13/200410topics.html

どのような薬剤師になるか、自らで決めてください。
  〜薬剤師認定制度認証機構のスタートに向けて〜
  有限責任中間法人 薬剤師認定制度認証機構
     理事長 内山 充(hosha2005.1、エーザイ)

http://www2.eisai.co.jp/phar/hospha/2005_1/spot.pdf

薬剤師への証書−クレデンシャル−の整備
  (日本薬剤師研修センターニュース「巻頭言」、2001.3,5,6,7,8月号)

http://www.jpec.or.jp/contents/c15/index.html

薬剤師問題検討会「中間報告書」(厚労省2003年10月29日)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/10/h1029-3.html

Kawaijuku Kei-Net 薬学部6年制化を検証する
  (河合塾:guideline2004年7・8月号)

http://www.keinet.ne.jp/keinet/doc/keinet/jyohoshi/gl/toku0407-1/index.html

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