患者向け医薬品情報
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1.はじめに
医療情報が氾濫する今日、わかりやすくかつ正確な医薬品情報を患者や一般国民に提供することは、医療関係者の責務である。現在、薬局などの現場では、こういった視点に立った通称「薬情」と呼ばれる「医薬品情報提供書」を通じて、処方されている医薬品の情報についての提供が行われているが、「画一的」「簡単すぎる」との指摘も少なくない。
特に近年、慢性疾患などにおいては、医療チームの一員であるとの自覚を持ったり、主体的にまた積極的に治療に参加するなど、患者の認識も大きく変わりつつある。こうした認識の変化を背景に患者(とその家族)は、自分が使っている医薬品について、もっと詳しい情報を知りたいとして、量的だけでなく質的にも整備された医薬品情報を求めるようになっている。
また薬剤師が副作用を説明し、患者に注意を促すことに対し、過去には医師から重篤な副作用の情報を薬剤師が安易に出し過ぎると、批判されることがあった。しかし、これについても近年は、発現する可能性がある副作用に関しては、はっきりと患者に伝えるべきとの流れに変わってきている。
こういった流れを考慮すると、重篤な副作用を回避することなどの注意喚起や、重要な相互作用について、薬局などの現場でもきちんと書面と対話で伝えることが求められている。当然、薬情にもそれらが反映されるべきだが、皆さんのところではどう対応しているだろうか?
厚労省や製薬メーカーでも、こういった医療をとりまく環境の変化を背景に、近年「患者向け医薬品情報」への取組みが活発化している。
2.患者向医薬品ガイド
患者や国民への医療用医薬品の情報の提供方法のあり方については、2001年9月27日にまとめられた「医薬品情報提供のあり方に関する懇談会」の最終報告で、「製薬企業や行政等は医薬品に関する情報を医療関係者に適切に提供するとともに、患者や国民に対し、内容の分かり易さなど情報の質に十分配慮した上で、直接、情報を提供することが望まれ、医薬品に対する正しい知識の国民への普及啓発等に努めながら、患者への医薬品情報の提供を推進する観点から、患者向けの説明文書の具体的な内容や方法について速やかに検討を行い、必要な措置を講じていくべきである」旨が提言されている。
厚労省では、この報告書以降に行われた調査研究をも踏まえ、「患者等が医療用医薬品を正しく理解し重篤な副作用の早期発見等に供される」ことを目的として、2005年6月に「患者向医薬品ガイド」の作成の方針を発表した。作成にあたっては、下記のような指針が示され、現在順次作成がすすめられている。
「患者向医薬品ガイド」作成品目のリストは→こちら
●作成が望まれる医薬品範囲
- 添付文書に警告欄が設けられているもの
- 添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」、「用法・用量に関連する使用上の注意」又は「重要な基本的注意」の項に、重篤な副作用回避等のために「患者に説明する」旨が記載されているもの
- 患者に対して、特別に適正使用に関する情報提供が行われているもの
- 診断用医薬品、処置の目的で病院や診療所内でのみ使用される医薬品等を除き、患者が自ら使用するもの
●作成の手順
- 日本製薬団体連合会が、厚労省の通知に基づき患者向医薬品ガイドの作成が必要な医薬品を特定する
- 厚労省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構機構(以下:機構)は、日本製薬団体連合会から提出されたリストの中から化学構造、薬理作用、効能・効果等の観点を踏まえ、患者向医薬品ガイドのモデルとする医薬品(モデル医薬品)を特定する
- モデル医薬品の先発製剤の製造販売業者は、患者向医薬品ガイドの原案を作成し、機構に提出する
- 機構は、有識者に助言を求め、適宜、患者向医薬品ガイドの原案を修正した上で、患者向医薬品ガイドのモデルとして製造販売業者へ連絡する
- ガイドのモデルを参考に、その他の対象医薬品として特定された先発製剤の製造販売業者は、患者向医薬品ガイド案を作成し、機構に提出する
- 機構は、必要に応じ有識者の助言を求め、患者向医薬品ガイド案を検討した上で、厚労省へ連絡する
- 厚労省は、ガイド案が局長通知で定めた「患者向医薬品ガイドの作成要領」に適合していることを確認し、機構へ連絡、機構はこれをウェブサイトに掲載する
●作成上の留意事項
- 添付文書の内容に準拠し、広告的な内容とならないよう配慮し作成する
- 高校生程度の者が理解できる用語を使用する
- 「患者向医薬品ガイド」が掲載されている医薬品と有効成分が同一である医薬品について作成する場合は、当該作成者間で記載内容等を相談すること
●「患者向医薬品ガイド」の提供方法
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(http://www.info.pmda.go.jp/)HPを通じて、掲載する。
患者向医薬品ガイド一覧(独立行政法人医薬品医療機器総合機構HP内)
3.患者向医薬品ガイドと添付文書
患者向医薬品ガイドは、簡単に言えば、添付文書を患者・一般向けにわかりやすい言葉に書き換えたものである。以下、添付文章との対応点を示したい。
医薬品ガイドでの項目 | 医薬品ガイドでの記載事項(記載方法) | 添付文書 |
---|---|---|
作成年月又は更新年月 | (西暦で記載) | 左上の部分 |
販売名 | (和名及び英名で記載) | 中央上の部分 |
患者向医薬品ガイドについて | (医薬品ガイドを参考する際に注意すべきことを記載) | − |
この薬の効果は | (効能・効果に示す内容に関する薬理作用あるいは作用機序を作用部位も踏まえて記載) | 効能・効果/薬効薬理/薬物動態 |
この薬を使う前に、確認すべきことは | (警告欄の内容をわかりやすい言葉で、冒頭に記載) | 警告 |
この薬を使用することはできません。 | 禁忌 | |
次の人は、原則として、この薬を使用することはできません。 | 原則禁忌 | |
次の人は、慎重に使う必要があります。使用する前にそのことを医師または薬剤師に告げてください。 | 慎重投与 | |
この薬には併用してはいけない薬や併用を注意すべき薬があります。 (併用禁忌は薬剤名等も具体的に記載) |
相互作用 | |
(効能・効果に関連する使用上の注意について、わかりやすい言葉で記載) | 効能・効果に関連する使用上の注意 | |
この薬の使い方は | 使用量および回数 (疾病または症状ごとに記載) |
用法・用量 |
どのように飲むか? | ||
飲み忘れた場合の対応 | − | |
多く使用した時(過量使用時)の対応 (起こりうる具体的な症状と対応方法を記載) |
過量投与 | |
この薬の使用中に気をつけなければならないことは | (定期検査の必要性、日常生活上での注意事項、服用方法についての厳守事項をを具体的に記載) | 重要な基本的注意 |
(副作用で頻度の高いものは、症状を具体的に記載) | その他の副作用(頻度が高いもの) | |
(アルコールの影響について記載) | ||
(妊婦の服用について記載) | 妊婦、産婦、授乳婦等への投与 | |
(授乳婦の服用について記載) | ||
直ちに医師に相談すべき症状 (重大な副作用名と発現部位ごとに具体的な症状でをわかりやすく記載) |
重大な副作用/その他の副作用 | |
可能な限り早く医療関係者に相談すべき症状 (副作用を「全身」「頭部」「眼」など、部位別におこりうる症状に並べ替えて記載。検査用語は表記しない) |
||
この薬の形は | 形状・重量・大きさ・色・識別コード | 性状 |
この薬に含まれているのは | 有効成分の含有量・添加物 | 組成 |
その他 | この薬の保管方法は? | 貯法 |
薬が残ってしまったら? | ||
(患者に対して適性使用の観点から注意すべき事項がある場合は記載) | ||
この薬についての問い合わせ先は | (使用(服用)している医薬品についての具体的な内容(症状、使用方法等)に関する質問は、医療関係者に尋ねる旨を記載) |
患者向医薬品ガイドで注意すべきことは、添付文書の情報がそのままである点である。であるから、例えば禁忌・原則禁忌例であっても、臨床上必要として処方される場合(例えば、高齢者の糖尿病患者へのビグアナイド系薬剤の使用)には、患者がこのガイドを手にすることにより、反って不安や混乱を招く可能性が出てくる。
4.くすりのしおり
患者向けの医薬品情報書としては、医療担当者が患者に服薬指導する際の補助手段として1993年に開発された、くすりの適正使用協議会(http://www.rad-ar.or.jp/)の「くすりのしおり」もある。
くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)
http://www.rad-ar.or.jp/siori/index.shtml
この「くすりのしおり」についても、時代の変化に呼応した情報内容にすべきとして、2005年9月に「くすりのしおり」あり方検討会が報告書をまとめ、現在では報告書に沿った新しい書式のものが同協議会サイトや各メーカ−サイトなどに掲載されている。下記に、新しい書式を示したい。
くすりのしおりフォーマット |
---|
くすりには効果(ベネフィット)だけでなく副作用(リスク)があります。副作用をなるべく抑え、効果を最大限に引き出すことが大事です。このために、この薬を使用される患者さんの理解と協力が必要です。 |
商品名、剤型写真 主成分の一般名(片仮名) (英名)、剤形、シート記載 |
この薬の働きと効果について (簡単な作用機序、薬効薬理、効能・効果をわかり易く記載する) (制癌剤等で告知上の問題がある場合、効能の表現に留意する) (治療対象の病名を記載する場合、通常・・の治療に用いられ・・、あるいは代表的なものとして・・の治療に用いられ・・と表現する) |
次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に伝えてください ・以前に薬を使用して、発疹、かゆみ、アレルギー症状などが出たことがある。 (続いて禁忌、その他特に注意すべき事について記載する) (併用禁忌薬については記載しない) ・妊娠または授乳中 ・他に薬を使っている (お互いに作用を強めたり、弱めたりする可能性もありますので、大衆薬も含めてほかに使用中の医薬品に注意してください) |
用法・用量 ・あなたの服用方法は (医療担当者が記入する) ・通常、成人は1回x錠(主成分として mg)を、1日x回服用しますが、年令、症状により適宜増減されます。必ず指示された服用方法に従ってください。 (用法・用量が異なる適応症を複数有する医薬品の場合、1製品につき1つの「くすりのしおり」を用意することを原則とするが、誤解を引き起こさぬように記載方法に配慮すること。また、適応症ごとに複数の「くすりのしおり」を用意する方が、取り違え等の間違いを引き起こす可能性が明らかに少ないと判断される医薬品については、適応症ごとに複数の「くすりのしおり」を用意する) ・飲み忘れた場合:(次からの服用法を具体的に記載する)(絶対に)2回分を一度に飲んではいけません。 (当該医薬品の特性から、「絶対に」の表現が相応しくないと判断される場合は、「絶対に」を省略する。) ・誤って多く飲んだ場合は医師または薬剤師に相談してください。 ・医師の指示なしに、自分の判断で飲むのを止めないでください。 |
生活上の注意 (本剤を使用している間に注意すべきことを、簡単な理由を含めて記載する) (副作用から外れるもので、患者さんに不安を及ぼす変化、例えば医薬品そのものが尿の着色を引き起こす 場合等について告知しておく) (本剤に限らない普遍的な注意事項や、添付文書に記載のない一般的な生活上の注意は記載しない) (医療担当者の記入欄として1行の空欄を用意すること) |
目的の効果以外に、望ましくない作用(副作用)が出る場合もあります 主なものとして、・・・・・・・・・等が報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。 (発生頻度の高いものにつき症状または副作用名を記載する。添付文書上、副作用の項の文頭に主たるものとして発生頻度つきで記載されている副作用を参考とする) まれに下記のような症状が現れ、( )内に示した副作用の初期症状である可能性があります。 このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。 (死亡もしくはそれに準じる重篤な副作用で、患者が自覚できる初期症状を3ワード以内、続けて括弧付け で副作用名を付記する。ただし臨床検査値の異常値は除く) 以上の副作用はすべてを記載したものではありません。上記以外でも普段と異なる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。 |
保管その他 ・乳幼児、小児の手の届かないところで、直射日光、高温、湿気を避けて保管してください。 ・薬が残った場合、保管しないで廃棄してください。 (特に保管上の注意を要することがある場合、注意事項を記載する) |
その他特記事項 (緊急連絡先等、医療担当者記入欄) |
より詳細な情報を望まれる場合は、担当の医師または薬剤師に問い合わせてください。また、「患者向医薬品ガイド」、医療専門家向けの「添付文書情報」が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています。 |
厚労省の「患者向医薬品ガイド」では「重篤な副作用の早期発見」、「くすりのしおり」では「患者と医療担当者間のコミュニケーションの促進ツール」と目的は異なるため、一概には比較できないが、「くすりのしおり」ではA4版1枚におさまるようにつくるようにしていることもあり、どうしても情報が限定される。以下相違点を示したい。
- 「くすりのしおり」では、「禁忌」「相互作用」など使用上の注意は、ほとんど「次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に伝えて下さい。」の項目に含まれているために、患者自身がしおりに読むことによって、禁忌や相互作用に気付くことができない
- 「くすりのしおり」では、併用禁忌の具体的な薬剤名の記載がない
- 「くすりのしおり」では、添加物に関する記載がない
- 「くすりのしおり」では、過量服用時に起こる具体的な症状や対応法の記載がない
- 「くすりのしおり」では、吸入薬などの具体的な使用方法の記載がない
- 飲み忘れ時の対応方法についての記載は、「くすりのしおり」の方がより具体的な場合がある
- 「くすりのしおり」では、中学3年生でも理解できるよう平易かつ簡潔な文章で記されている。
- 「くすりのしおり」では、英語版も用意されている
- 「くすりのしおり」(Web版)では、視覚障がい者が容易に利用できるよう画面の文字の拡大、画面の背景色を変えられること、文字の音声化が可能なこと等、ユニバーサルデザインの発想が取り入れられている。
5.重篤副作用疾患別対応マニュアル
一方、厚労省では患者向医薬品ガイドとは別に、医薬品の使用により発生する副作用疾患に着目した情報提供を開始している。
厚労省では2005年度から、副作用発生機序解明研究等を推進することにより、「予測・予防型」の安全対策への転換を図ることを目的として、「重篤副作用総合対策事業」を4年計画で実施しているが、その第一段階(早期発見・早期対応の整備)として現在作成がすすめられている事業に、重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成がある。
このマニュアルは、重篤度等から判断して必要性の高いと考えられる副作用について、患者及び臨床現場の医師、薬剤師等が活用する治療法、判別法等を包括的にまとめていて、現場の薬剤師をはじめとする医療専門職向けの学習ツールとしてとても有用な資料だが、このマニュアルをよくみると、冒頭の部分に「患者の皆様へ」という項目がある。
この「患者の皆様へ」という項目では、患者やその家族に知ってもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応ポイントなどが、分かりやすい言葉やイラストを用いて解説されていて、この部分を患者さんに示すことで、重要な副作用について患者さんに理解が深まると思われる。これも是非今後は注目し、活用したい。
「重篤副作用疾患別対応マニュアル」の作成が予定されている疾患名リストは→こちら
なお、このマニュアルは2006年11月21日より、厚労省HP及び、独立行政法人医薬品医療機器総合機構HP(http://www.info.pmda.go.jp/)での掲載がはじまっている。
重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/tp1122-1.html
重篤副作用疾患別対応マニュアル(医薬品医療機器総合機構)
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/juutoku_index.html
6.「患者向け医薬品情報書」に患者の声を取り入れる取組み
海外でも、患者向け医薬品情報書(PIL:patient information leaflets)や、患者向け医薬品情報(CMI:consumer medicines information)は、いろいろと模索されている。
米国では、CMIをFDAが示す一定の方式に従って民間情報関連企業(information vendors)が作成、薬局を通じて提供される他、国立衛生研究所の国立医学図書館が、医療関係者や学者等の専門家向けMEDLINEに加えて、誰もがアクセスできるMEDLINEplus(http://www.medlineplus.gov/)を作成し、一般国民向けに信頼できる医薬品情報を提供している。
また、FDAでは一部の薬剤について、FDAのウェブサイトで”Patient Information Sheet”や”Medication Guides”といった患者向け情報書を提供している。このうち、Medication Guidesは、「患者用ラベリングが重篤な副作用の防止に役立つ医薬品」「ベネフィットに比較して重篤なリスクがあり、リスクに関する情報が患者の使用または継続の判断に影響する医薬品」「治療のため重要で、かつ患者の医薬品の使用の遵守が有効性に関わる医薬品」のいずれか1つの条件を有すると判断した場合に、FDAが作成を要請するもので、日本の患者向医薬品ガイドに類似点がある。
Index to Drug-Specific Information
(Patient Information Sheetが掲載されているリスト一覧あり)
http://www.fda.gov/cder/drug/DrugSafety/DrugIndex.htm
Medication Guides(作成リスト一覧あり)
http://www.fda.gov/cder/Offices/ODS/medication_guides.htm
一方EU各国においては、法律で2005年10月よりPILの作成にあたっては、「ユーザーテスト」を義務付けているという。この「ユーザーテスト」は90年代前半にオーストリアで提唱され、以後EUのいくつかの国で自主的に採用してきた。製薬会社からは膨大な費用がかかるとしているが、患者や一般国民の視点で作成できることを考えると、有効な手段かもしれない。
User testing of PILs now mandatory
(pj online news feature 2005.7.2)
http://www.pharmj.com/Editorial/20050702/news/news_pils.html
また英国では、「PIL作成の全ての段階で患者の意見を考慮すべきである」とした「Always Read The Leaflet」というレポートが2005年7月にまとめられている。このレポートでは、PILについての詳細な記載方法が記されており、例えば、「重大な副作用の頻度はまれなので、不必要な恐怖を避ける為に、具体的な頻度の記載が必要」、「子どもや若者・介護者、視覚障がい者などの社会的な弱者への配慮も必要」などの報告が行われている。
英国では、このレポートを踏まえて、Medicine’s Expert Advisory Group on Patient Information (PIEAG) という、PIL検討のための専門委員会を設置し、PILの見直しが始まっている。この委員会には、行政や製薬メーカー、医療関係だけではなく、患者団体、障がい者の支援団体の委員も参加していて、患者参加型のPILづくりが行われているという
7月には、新しいPILの見本案(アムロジピン・セロクエル・イミグラン)が示され、副作用の頻度を具体的に何万に1人というように具体的に示すなど、患者や一般国民にとってわかりやすく、最も必要とされる情報のあり方が検討されている。
英国では、2005年の7月以降発売する新薬については、関係する患者団体からの意見を踏まえたPILが義務付けられ、2008年末までにはすでに発売されているものについても同様の処置がとられるという。
また、PIEAGでは薬のリスクとベネフィット、患者自身が副作用報告できるイエローカード計画(Yellow Card Scheme)についても伝えるべきとしている。
Patients play important role in improving patient information leaflets for medicines
(MHRA Press release 2006.7.27)
このように世界の状況をみると、「患者向け医薬品情報書」は、行政・製薬会社・医療関係者主導のものから、患者や一般国民の声がより反映されたものになりつつある。くすりのしおりの新書式や患者向医薬品ガイドが出揃ったところで、おそらく患者の声をどう取り入れるかの議論が日本でも行われるだろう。
7.薬情に積極的に利用を
最近はかなり改善されたとはいえ、各レセコンメーカーが提供する薬情の薬効・注意事項・指導事項は、まだまだ簡略化されている場合も少なくない。患者向医薬品ガイドやくすりのしおりの記載事項が一般的なものとなれば、当然薬情も、これらを参考にして各薬局等での再検討が必要だろう。
ただ、当然といえばそうだが、適応外の使用法については患者向医薬品ガイドやくすりのしおりには一切表現されていない。よって、薬情を作成・提供する場合には、患者から当該薬剤をどのような目的で使っているかということをまず確認することが重要である。そして、文書による情報提供だけでなく、対面での言葉による情報提供も重要であることはいうまでもない。
関連情報:TOPICS 2005.11.08 患者による副作用直接報告(英・イエローカード計画)
参考、引用:
1.「くすりのしおり」あり方検討会−報告書−(くすりの適正使用協議会 2005.9)
http://www.rad-ar.or.jp/siori/arikata/book105.html(電子ブック版)
http://www.rad-ar.or.jp/siori/arikata/book105/book105.pdf
2.医薬品情報提供のあり方に関する懇談会最終報告(2001.9.27)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/0109/s0927-2.html
3.独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト
http://www.info.pmda.go.jp/
4.海外規制機関 医薬品安全性情報(国立医薬品食品衛生研究所)Vol.4 No.23
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly4/23061116.pdf
5.医薬品・医療用具等安全性情報230号
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/11/h1121-2.html#chapter1
最終更新日 2006年11月22日
(文責:小嶋慎二)