久しぶりに当記念館でムービー撮影が行われた。「昔の彼女を忘れられない男。死んだ彼を忘れられない女。見ず知らずの2人が国を超え、LINEを通じ出会う純愛ラブストーリー。韓国と日本をまたいで撮影する日韓合作ドラマ」だった。当記念館はこの主な撮影所の1つになった。ロケハンの際、この脚本にマッチした建物、庭園、正門、風情として、韓国2名の監督が当記念館を気に入ってくれたらしい。
6月下旬に機材や小道具が大量に搬入されて会場設営し、7月上旬の数日間にわたり、毎日50~60名のスタッフが出入りしての大掛かりなものになった。撮影終了時刻が毎朝3時頃で、私ども夫婦も1日の睡眠時間は大体2、3時間だった。まだまだ生きられそう―(笑)。私は5~10余名のスチルやミュージックビデオの撮影には慣れてきているが、ムービー撮影は相変わらず大変で全体的に緊張感が漂い裏舞台の迫力も比ではない。数台の大型撮影機(カメラ)・照明・音響・セリフ・道具・化粧・通訳・輸送・会場設営・ゴミ処理係等々、大人数のスタッフが監督や両国中心メンバーの采配を受けて機敏に対応する。私にはこれもまさに“ドキュメンタリードラマ”と映る。この集大成が「作品」と言えるだろう。
撮影開始後次第に、周辺にいわゆる“追っかけ”なる人々の姿が増加しつつ目に入った。世代間ギャップなのか、韓国ビッグバンのTOPと上野樹里、福田沙紀の人気は、私の想定をはるかに超えるものだった。ネットに「TOPは今日の午前中、東京の渋谷で撮影していたのにもう足利」「松村記念館の灯籠が出たが間もなく消えた」「TOPの睡眠時間が4日間で10時間とか可哀想」等々、日本ファンの叫びを私も知った。「TOPが足利にいるなんて信じられない」と、メイク室になった敷地内のゲストハウス松香庵を盛んに覗き、なかなか離れようとはしなかった。このほかにも彼女等の興奮・感激の声を直接耳にしたが、このドラマは世界でヒットするかもしれない、と私は思った。
ムービードラマの製作会社にはいろいろあるが、事前協議、情報交換の密度はまずまずで、今回も両国の制作会社に恵まれたと思っている。タフな裏方スタッフと一体的に会場設営等に携わった事は、私ども夫婦にとって良き思い出になるだろう。床の間の掛け軸はすべて当記念館の時季物を使用した。
私のデジカメでは主に庭園パーティーの撮影準備中の場景しか写さなかった。当記念館敷地・建物内随所で撮影は行われたが、邪魔をしてはいけないと思い自粛した。
撮影終了後、韓国のスタッフ幹部から通訳を通じ「予想以上に良い撮影ができました」との言葉を受け、私の心中には、何よりもまず安堵感が走った。ムービー撮影もたまにはいいものである。
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