4月下旬から5月上旬は例年、足利学校や鑁阿寺を訪れる人が多く、記念館周辺の石畳道は“人の山”となり、各飲食店とも時間帯によっては“お断り”となる。行政・商工会議所・商業会・まちづくりグループ等は各種イベントを組み、祭りとして盛り上がりを見せる。この賑わいの主な要因は①GWであり、②あしかがフラワーパークのフジの花、でもある。しかし、通年型で活気のある地域になるには、まだまだハードルは高い。
この時期は記念館の入館者も多い。「建築・生活文化上の公開です。電気料等、管理運営費の一部を入館料としてご負担いただいています」―と。東京・千葉・神奈川・埼玉・茨城、また、近隣の群馬・栃木は多いが、時々関西・九州・東北等、遠方からも迎える。「日本家屋が好きなんです。子どもの頃、こういう家に住んでいたので懐かしいんです」等々、古民家に関心のある方々との会話は弾む。旅人の共通点は、何よりも地元の人との対話を楽しみにしているはずだと、私は思っている。この際、足利のPRにも心掛けている。
「最近の新築住宅には、畳の部屋や床の間を設けない人が増えていて残念です」と、我が国の伝統工法に精通する建築関係者はこぼす。私は入館者の内、特に若い方には「将来住宅を新築する場合にはぜひ、一部屋でも畳の部屋を」―と、呼び掛けるように努めている。日本文化の一面が危うい昨今を心配して―。 国は最近、古民家等歴史的建築物の活用に向けて動き出した。建築基準法・消防法・旅館業法の適用除外など、日本経済再生本部は全国規模の規制改革に取り組み、具体的に乗り出した。京都の町屋の取り壊しのような遅きに逸した事例は多いが、私にすれば日本が進むべき当然の方向だと思っており、国レベルで行政が目覚めてきた事を高く評価している。課題は、久しく“新建材と使い捨て文化”に浸ってしまった国民が、等しくこの価値観を共有できるかどうかだ―が。
那須塩原市のUDホームは最近、古民家仲介事業のための全国的ネットワークを立ち上げた。40団体が連携するようだ。また、複数の大手企業も古民家再生ビジネスへの取り組みを強化している。ようやく“この分野”が面白くなってきた。17年ほど前、自費で古民家公開・活用に踏み切った頃の想いが、広く現実化してきた事を知って私は、実に嬉しい。
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