木質バイオマス発電

マンゴーの木

バイオマス発電の熱利用でマンゴー栽培

 私は9月11日(木)、渡良瀬川流域森林・林業活性化センターとみかも森林組合が共催事業として企画した「那珂川バイオマス(株)視察調査」に参加した。足利市林業振興会会長と同県南組織の副会長の立場にある私は、かねてより木質バイオマス発電には興味を抱き研究していたので、積極的に臨んでみた。
 バイオマスとは、木くずなどの動植物から生まれた再生可能な有機性資源の事を言う。栃木県矢板市を本拠とする(株)ト―センは、国産の木材を扱い、北関東を中心に幅広く「木とともに地球環境を考える企業」として躍進しているが、新たなビジネスモデルとして同社がスタートさせたのが那珂川バイオマス発電所である。
 この発電所は中学校廃校の跡地・跡施設に形成され、全体では15億円規模の投資だったようだ。国などの補助金があるにせよ大胆なチャレンジであり、頼もしい。発電量は2,500kWだが近々、同社は日光・今市地域においても5,000kWの発電所の設置計画を確定しており、バイオマス社会の実現に向けて意欲的だ。なお県内には、ト―セン以外の会社もバイオマス発電所を設置するとの情報もあり、最近は“脱・原発”を志向した、いわゆる自然エネルギーの開発は、栃木県内に限らず全国各地で活発化しつつあるように思える。
 この林地残材や製材過程から出るバイオマスをエネルギー源として稼働する発電プラントは、発電過程で発生する熱を再び製材工場へ戻して木材の乾燥に利用する「エネルギーのサプライチェーン」となっている。また、発電プラントで出る灰は土地の土壌改良、発電時の蒸気は周辺のビニールハウスで農作物栽培に―と。すでにマンゴー栽培やウナギ養殖事業は現に進行していた。
 昔の森林は杉・桧、クヌギ・コナラ・サクラ・クリの木等々、国産の木材が人々の生活やビジネスの分野で多岐にわたって利用され日常、社会に広く流通していた。とりわけ雑木林を構成する木々は、燃料(薪)として飯・湯・風呂などにも欠かせないものだった。よって、好ましい森林環境が保持されていたのだが現在、全国の大半の森林の荒廃した状態を憂えているのは私だけではないだろう。
 同社は伐採された木々等を無駄なく使いきる事を目標としているが、特に現代版の燃料として、木質バイオマス発電のため国産の木材を適切かつ有効に活用する事が進展したら、かつての美しい里山が戻ってくるかもしれない、また、エネルギーの原発依存度をできるだけ下げていく事も時代の要請である、と私は思っている。